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女性の指数を使った社会のデータのクラスタリング
「女性の指数を使った社会のデータのクラスタリング」
1. 使用データ
経済センサス2016、賃金統計2017、就業構造基本調査2017、住民基本台帳移動報告2021
全国学力テスト2017(2020かもしれない)、国勢調査2017、人口動態統計2017、建設工事受注動態統計2017、シングルマザーの職業分布(中囿2021)、地域における女性の活躍に関する意識調査(平成27年6月)
1-1指数その1 女性の働きにくい業界÷働きやすい業界(従業員比率)
女性の正社員比率が高く、女性が働きやすい業界は繊維工業、金融業、不動産取引業、専門サービス業、学校教育、医療業界、協同組合、政治経済文化団体である。それらの従業員数合計をAとする。
上記以外の男性が優位もしくは女性が多いが低賃金の業界の従業員数をBとする。従業員比率=B÷A、としその相関分析を行う。非正規雇用も含んでいるのが特徴である。
1-2 指数その2 男女不平等指数(男女の歪みの合計)
女性の正社員男女比が高くて女性の正社員比率がやや高い業界の男女の正社員比率の散布図のデータ点の1:1ラインからの垂線の長さを各業界ごとに長さを計算して合計したもの。正の値であれば男性有利、負であれば女性優位である。ただし、この指数が女性寄りであればあるほど正社員比率が高いわけではない。あくまで男女の正社員比率が1:1に近いほど良いというコンセプトで設計されたものである。
Fig.1のように、中央値に基づいて、日本を4つの集団に分ける。C1は男女不平等で、産業構造も女性に不利な集団で日本のマジョリティである。C2は産業構造は女性に不利だが、女性が多い業界では男女平等に近い。C3は男女不平等だが、産業構造は女性が働きやすい業界が比較的多い地域。C4は男女平等にやや近く、産業構造も女性が働きやすい業界がやや多い地域となっている。
クラスタリング手法
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Fig.1 縦軸:女性が働きにくい業界÷働きやすい業界(従業員比率)、横軸は男女不平等指数。
3. 結果一覧
3-1転入者と転出者の男女比
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Fig.2 25歳から29歳の転入者の男女比(左図)と転出者の男女比(右図)
住民基本台帳移動報告2021より
Fig.2を見ると、C3とC4の男女比が中央値に着目すると高いことが分かる。女性優位な地域は女性の移動が多く起こっていることが分かった。しかし、日本の都市部であるC1を見ると四分位点の幅が広く、女性にとって条件が悪い都市にも女性が流入していることが分かる。ただ、全体的に女性より男性の移動が多いことが大きな特徴である。
3-2 男性と女性の賃金
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Fig.3 女性の平均年収(左図)と男性の平均年収(右図)、賃金統計2017、就業構造基本調査2017、経済センサス2016より作成。
C1の女性の賃金が最も低い。都市部であり、非正規化が進んでいるとみられる。産業構造自体も女性優位なものではないことが原因だと考えられる。C4が女性の賃金が最も高い。男性の賃金はC1からC4に向かって徐々に低下している。
3-3 企業の分布
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Fig.4 中小企業÷大企業(従業員比率)(左図)と零細企業の割合(従業員数ベース)(右図)
女性が優位な要素があるC3とC4は中小零細企業が多く、C1とC2は大企業が多い都市部であることが分かる。
3-4 有業者の男女比と保育園当たりの女性有業者と無業者数
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Fig.5 有業者の男女比(左図)と保育園当たりの女性有業者と無業者数(右図)
C1とC2は有業者男女比が0.8以下が大半で、C3とC4は中央値が0.825付近と高い。C1からC4に向かうにつれ、女性に対して保育園が確保されていることが分かる。
3-5 離婚数÷婚姻数と出生数÷婚姻数
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Fig.6 離婚数÷婚姻数(左図)、出生数÷婚姻数(右図)
C1とC2はおそらく、女性の非正規化が進んでおり、生存戦略のため婚姻数が伸びており、かつ、経済的束縛により離婚しにくい状況が生まれているためだと考えられる。そして出生数÷婚姻数はC3とC4で大きく、これは可処分所得がそれなりにある可能性があり、親と同居したりして、子育てを手助けする環境が整っている可能性がある。
3-6 全国学力テスト(小学校の国語と算数)
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Fig.7 小学校の国語(左図)、小学校の算数(右図)
小学校の国語はC2とC4が高い。これらのグループは男女不平等指数が中央値以下のグループであり、何らかの関係がある可能性がある。これは算数でも同様である。産業構造は小学生の全国学力テストにあまり影響を与えないと思われる。
3-7 全国学力テスト 中学校の数学と英語
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Fig.8 中学校の数学(左図)、英語(右図)
数学はC1からC4の間で対して変わらない。C3がやや点数が落ちているのが少し気になる。英語はC1とC2が高く所得が英語の点数に影響を与えていることが分かる。
3-8 女性の非正規雇用率とシングルマザー非正規雇用職業分布相関係数
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Fig.9 女性の非正規雇用率(左図)とシングルマザー非正規雇用職業分布相関係数
C1とC3が非正規雇用率が高い。産業構造が女性よりかというよりは、男女不平等指数の影響が強く出ている。男女不平等指数が中央値以下のC2とC4の非正規雇用率が低い。シングルマザー職業分布相関係数は産業構造の影響を強く受け、C1とC2が相関係数が高く北海道の札母連の非正規雇用のシングルマザーの職業分布と似通っている。C4が最もシングルマザーの職業分布と似ていない。
3-9 公共工事比率と土木建築比率
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Fig.10 公共工事比率(左図)と土木建築比率(右図)。建設工事受注動態統計2017(修正前)より
C1とC2、C3とC4がペアになっており、C1とC2の公共工事比率が40%程度と低く、民間工事が多いことが分かる。またC1とC2は建築工事が多いことが分かる。女性が多い地域は土木工事の比率が高い地方である。
3-10 親と両親が同居の家庭と女親と子どもの家庭(シングルマザー)
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Fig.11 親と両親が同居の家庭(左図)と女親と子どもの家庭(シングルマザー)(右図)
親と同居している夫婦はC2とC4で多い。男女不平等指数が中央値以下の地域だと同居が多い。C1もやや高いが、これは可処分所得が低いため、親と同居せざるをえないなどの理由がある可能性もある。これは要調査である。そして女親と子どもはC3とC4に多い。産業構造の影響を受けている。女性にやや有利な優位の産業構造だとシングルマザーが増える。これは以前から指摘されている通りである。
3-11 女性は外で働くべきだ 男性賛成意見と女性賛成意見
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Fig.12 地域における女性の活躍に関する意識調査(平成27年6月)、女性賛成意見(左図)、女性賛成意見(右図)
C2とC4が賛成意見が多い。男女不平等指数の影響が出ている。産業構造の影響は受けないようだ。男女で賛成意見の比率に10%近い差がある。
3-12 生産年齢人口に対する20代と30代の割合
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Fig.13 生産年齢人口に対する20代と30代の割合。女性(左図)、男性(右図)
若い人の割合は男女で違いがあり男女比が都市部で低いことがうかがえる。C3とC4が若い人が少なく、産業構造の影響が年齢分布に影響を与えていることが分かる。
3-13 大学進学率と有業者÷学生数
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Fig.14 生産年齢人口に対する20代と30代の割合。女性(左図)、男性(右図)
C1が進学率が高く有業者に対して学生数がそれなりにそろっていることが分かる。C1以外の地域は学生数が少ないことが分かる。C1は日本の都市部であるが最も問題のある地域だと言える。
3-14 地方財政の交付金依存度と0歳から19歳人口一人当たり教育費歳出
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Fig.15 (歳入-交付金-国庫支出金-地方債-歳出)/地方税×100(%)(左図)、0歳から19歳人口一人当たり教育費歳出
C1とC2は交付金依存度が100%から150%であることが分かる。要するに住民規模と事業規模と同程度に抑えている。一方でC3とC4のやや女性に有利な要素がある地域では250%前後であり、住民規模と企業規模以上の歳出を行っており、交付金依存度が高く、一人当たりの公的サービスが手厚いことが分かる。一人当たりの教育費を見てもわかるようにC1とC2と一人当たり中央値で10万円近い差があることが分かる。地方優位の格差が生まれていることが分かる。これは交付金の計算方法に問題があるということと、プライマリーバランスを重視すれば女性蔑視的な地域になることがみて分かる。
4. 結論
女性にとっては中小零細企業が多く、産業構造的に女性にやや有利な場所が存在することが分かった。女性が有利な地域では男性の平均年収は低く、女性はやや高い。女性が経済的自立に近づいている地域であり、そのこともあり離婚数が増えているように見えるが、どちらかと言えば、都市部における女性の非正規化の進行に伴う可処分所得の低下とそれに伴う経済的な束縛によって離婚数が低減し、生存戦略により、婚姻数が増加する現象が見て取れる。しかしながら女性に有利な地域は若い人たちが少なく、女性に不利な地域で若い女性が依然と多い状況となっている。さらに女性に有利な地方で転入の男女比がやや高いのが救いだが、転出の男女比も高い。しかも都市部の転出入は男性が多く、女性の動きが都市部では相対的に鈍くなっている。つまり女性が都市部に固定化されている可能性もうかがえる。そして都市部は非正規雇用のシングルマザーの職業分布と女性の職業分布が似通っており、就業構造の転換が推奨される。
建設業の面からは都市部で建築工事が多く、かつ、民間工事が多い。これが地方と都市部で格差を生み出している。民間工事のコントロールと公共工事比率のリバランスが必要である。
学校の面では英語の点数が所得の影響を受けており、グローバル経済の中では高所得者層に有利な社会となっていることが浮き彫りになった。また大学進学率も都市部で高く、これも格差を助長する原因となっている。さらに、C1のデータで最も有業者に対して学生の供給が多くなっており、C1への学生の分布の偏りが課題となっていることが見て取れる。このことからも、大学の全国的な立地を考え直す必要性が考えられる。
そして地方財政の面から見ると女性に有意な地域は交付金依存度が高く、地域規模以上の歳出を行い手厚い公的サービスを行っており、都市部と地方で地方優位の格差が存在することを示している。そしてプライマリーバランスに疑問を投げかけ、交付金の計算方法に疑問が呈される結果となった。
「参考文献」
シングルマザーの貧困はなぜ解消されないのか 中囿桐絵 2021
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