『信長公記』の割とどうでもいい記述を紹介していく④~京都四条の殺人事件
前回はこちら。
天下人・織田信長の事績を記した良質史料『信長公記』の、本筋に関係ない記述を紹介する本シリーズ。
今回は天正7年(1579年)のできごとです。おそらく、京都の町中で話題になった出来事を書き留めたものでしょう。
京都四条小結町の殺人事件
京都で前代未聞のことが起こった。京都四条の小結町に、70になる後家の老婆と娘が暮らしていた。4月24日の夜、娘は上等の酒を買い求め、母に飲ませた。娘は、寝てしまった母を刺し殺し、革張りの丈夫な籠にいれてしっかりと縛った。
娘は、誓願寺という寺の住職に頼んで、人に分からぬよう遺骸の入った籠を寺に納めてしまった。そして、下女に美しい小袖をやって、人には決して言わぬよう言いつけた。
しかし、恐ろしくなった下女は村井貞勝(※)のもとに駆け込んでそのことを訴えた。貞勝はすぐに娘を捕らえ、事件を明らかにした。娘は市中引き回しの上、処刑された。
※村井貞勝…織田信長の家臣。有能な行政官で、京都の行政をつかさどる京都所司代の役職にあった。本能寺の変の際に戦死。
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歴史にまったく影響を与えていない出来事ですが、太田牛一が「前代未聞のこと」と書き始めているのが面白いです。このような事件の話題は、当時の人々にとって一種の娯楽だったのでしょう。その意味では、現代人の感覚と変わらないのかもしれません。
(続く)
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