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『信長公記』の割とどうでもいい記述を紹介していく⑤~つつもたせ事件

前回はこちら。

『信長公記』の本筋に関係ない記述を紹介していくシリーズは、今回が一応最終回です。

つつもたせ事件(巻十四の二十二)

 天正9年(1581年)12月のできごとである。

 近江国の野尻の郷という場所に、延念という徳のある僧侶がいた。ところが、蜂屋の郷の「八」という男がつつもたせを企て、若い女を用意した。

 雨の降る夕刻、女は延念の寺に駆け込んでしばらく宿を借りたいと願った。僧侶は「迷惑である」と言ったが、女は庭の隅で火を焚いて居座った。そこに男が押し入って、「若い女を寺に止めるのは不謹慎だ」と言いがかりをつけて銭を要求したのである。

 しかし、悪党の思い通りにはならなかった。代官の野々村三十郎と長谷川竹の二人は悪事を糾明して、男女二人とも斬り捨てた。みずからの企てで自滅したのであるが、あわれな有様であった。

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 全5回にわたり、『信長公記』の割とどうでもいい記述を紹介してきましたが、いかがでしたか? 史料を読むというと固い印象を持つかもしれませんが、歴史を作ってきたのも同じ人間ですので、ワイドショーのような俗っぽい側面も見つけることができるのです。

(了)

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