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小説 ひだまりの丘

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こちらは小説になります。 連載方式でアップしていこうと思います。 婚活や妊活について、セキララに触れる表現もありますのでご注意ください。 スキ♡いただけると更新の励みになります…
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#肺炎

ひだまりの丘 8

ひだまりの丘 8

広澤さんの一人娘の和子さんは夫に支えられ、思いのほか早く来院した。

冷たくなった広澤さんの隣で突っ伏して、わぁわぁ泣いていた。
夫は「なぜ、急にこんなことになったんですか?つい最近まで元気だったのに」
拳がわなわなと震えていた。
二人は、広澤さんの看護に熱心な家族だった。面会もここ数年毎週見舞いに来ており、食べるのが困難な広澤さんへ好物のせんべいを持ってきては、何とか食べさせようとしていた。当然

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ひだまりの丘 7

ひだまりの丘 7

病棟の経管栄養の患者さんに栄養を投与して、数十名の昼食を配膳し終わると、今度は自力では食べられない人の食事の介助に入る。

石井さんも田無さんも気持ちを切り替え、バタバタと動いているように見えた。
普段は担当のチームの患者さんへ担当看護師が、食形態や患者さんの特徴を把握した上で配膳をしていたのだが、今日は人数不足のせいで、ABチーム関係なく配膳をせざるを得なかった。
ゴホゴホと食事にむせる高齢患者

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ひだまりの丘 6

ひだまりの丘 6

私が主任をしていた時は、上司の要求にイエスマンにも革命派にもなれず、ただ一人でなんとか業務を回そうと空回りしていたと思う。

そんな中起きた、あの事件は私をやるせなくさせる。
大学病院の内科病棟の主任看護師をしていた私は、橘師長の元で働いていた。
橘師長は他人には厳しいのだが、自身の役職の責任からは逃れるが上手い人という印象が拭えない。
大学病院の急性期の内科病棟とは名ばかりの、要は他の病棟の慢性

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