けやき広場

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最近の記事

いくつかの偶然により

いくつかの偶然と、おそらく自他のいくつかの勘ちがいや思いこみが重なって、まことに奇妙なことに、このブログは続いている。 未来に必要となったときに、必要とするひとが目にして少しでもヒントになれば、という想いではじめたものです。 メッセージボトルを海に放つような気持ちでしたが、現代が検索の時代であることも考慮はしていました。大声は出さないけれども広場にそっと置いておくことはできる。 [今回綴ることは、共通する語彙がふくまれていたとしても、これまでのライブ評やそのアーティストと

    • 国立競技場でのAdoのライブ「心臓」の音響について

      2024年4月27日、28日に東京の国立競技場で行われたAdo SPECIAL LIVE 2024「心臓」。 諸事情により、すり鉢状の会場の天井近くとボトム付近という両極端な座席にて2日間を通して参加した。 ここでは初日の音の聞こえ方を中心に、回想する。 初日の聞こえ方、高所にて 本編開演まで まずTeddyLoidによりDJタイムが演じられるのだが、DJブースは南サイドスタンドの最高所にあった。 初日、高さではブースと似たような高所の座席で聴いていた。メインスタンド側

      • "心臓"点描

        驚愕のスペクタクル Ado SPECIAL LIVE 2024「心臓」に2日間参戦した。 どうだったかって? もちろん最高だ。 語彙力がふっとぶ。 初の海外ツアーを完走し、そのままの勢いで最良のパフォーマンスを見せてくれた。 7月からの全国アリーナツアーまで発表された。 感想はマイペースでまとめるつもりだったけれど、このままではすぐに[すでに]周回遅れになってしまう。 初日となる4月27日公演の詳しいライブ評はすぐに「音楽ナタリー」(音楽ナタリー編集部 5月1日)に出た

        • Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish” 机上レポ・アメリカ合衆国編

          Ado初の海外ツアー「Wish」は、千秋楽の会場となったアメリカのテキサス州オースティンにて現地時間の4月1日夜、大盛況のうちに幕を閉じた。 日本では4月5日早朝、「めざましテレビ」などで千秋楽公演のごく一部と、初の海外ツアーを完走した本人の感想が紹介された。各国で盛大な歓声を受けて、また新たなパフォーマンスを見せられたという。  Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish”  America and Europe powered by Crunchyr

        いくつかの偶然により

          Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish” 机上レポ・ヨーロッパ編

          千秋楽の会場があるアメリカのテキサス州オースティンにて現地時間の4月1日夜、Adoが初の海外ツアー「Wish」を大盛況のうちに完走した。 前回、2月のアジア地域での6公演について、各地のメディアの報道をまとめてみた。どの公演も好評で、曲はあまり知らなかったが熱中したという率直な感想から、一ファンとしても詳細にレポートする記者、おそらく最近の資料を見ずに印象だけで書いているタブロイド紙的なものまで、さまざまであった。 はじめてのライブで、セットリストにある"あの曲"や"あん

          Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish” 机上レポ・ヨーロッパ編

          Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish” 机上レポ・アジア編

          Adoのファースト・ワールドツアー「Wish」が早くも始まっている。 2月のアジア地域での6公演は、たいそう盛り上がっていた模様だ。 直前の音楽ニュースでも「Ado、初の世界ツアー『Wish』が全公演完売 全14公演で7万人以上動員」(2024.2.2 SPICE、他)と報じられる、ファーストにしてはかなり大掛かりなツアーとなっている。シカゴでは当初予定の2倍の人数を収容する会場にアップグレードされたほどだ。  Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish

          Ado THE FIRST WORLD TOUR “Wish” 机上レポ・アジア編

          レプリカの時代にコールドプレイを目撃した(2)

          (承前) 4 ブートレグとレプリカの時代公演日(2日目)に発売された雑誌の最新の邦訳インタビュー(世界ツアーが開始された2022年のもの)で、クリスは意外なことを語っている。 なんと生真面目で正直な方だろう。サブスクどころかネットで無料の音楽を聴くことすらできないひとが、世界中にいる。悲観していても仕方がないし、ひとりひとりが無理をせず今日できることをしていくだけだ。バンドの活動はシンプルで力強い。 新アルバムを締めくくる「コロラチューラ」は演奏されなかった。重厚なオー

          レプリカの時代にコールドプレイを目撃した(2)

          レプリカの時代にコールドプレイを目撃した(1)

          1 さいごのディスクさいごに買ったCDのうちの一枚は、コールドプレイの6枚目のアルバム『ゴースト・ストーリーズ』だった。以後音楽を聴いていないのではなく、生活環境が遅ればせながらデジタルへ移行した。 同アルバムは、ボーカルのクリス・マーティンがグウィネス・パルトロウとパートナー解消をし、家族とも離ればなれになったデプレッションの期間がまともに反映した作品だと本人のインタビュー記事で語られている。じっさい、モノトーンで重苦しい調子が、さいごから2曲目までは霧中の夜道のように

          レプリカの時代にコールドプレイを目撃した(1)

          Ado全国ツアー2023「マーズ」 観戦記(2)

          (承前)  8 道化師、ファイヤーワークス、サンフラワー 火星の夜も更け、「夜のピエロ」がやって来る。 歌い出しから、前曲のがなりがウソだったかのようにクリアーな高音を響かせる。バンドセットで聴くのは初となるか。 心地よいうねりにのって噴水のようにあふれ続ける蛍光色の夜の街。だけど歌われるのは孤独、演技、不安…ピエロ(的な日常)の悲哀をひとつずつ、花弁をむしるように連ねて、「夜に沈む」ーブレイクは街の深呼吸。 ひとつずつ捨てた闇に、浮かび上がる己れの姿。始まりもなく終

          Ado全国ツアー2023「マーズ」 観戦記(2)

          Ado全国ツアー2023「マーズ」 観戦記(1)

          1 最も暑い夏 西暦2023年の夏は、「地球沸騰化」の語も聞かれる記録的猛暑となった。 梅雨真っ只中の6月29日、埼玉から始まったAdoのセカンド・ツアーは、北海道から福岡まで地方のホール会場を順次めぐり、8月29日の日本武道館2days公演からキャパシティが1万人を超えるホール・アリーナ公演へと突入した。9月1日、気象庁は「過去126年で最も暑い夏」と発表。その後も連日熱帯夜が続く。 以下は、都合上大阪城ホール公演2日目(9/10)に参加しての感想文が主軸となる。AR

          Ado全国ツアー2023「マーズ」 観戦記(1)

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          LOW 蠟燭がゆらめいて描く行燈の影絵は、次のような話になっております。いつの世か知れない。夜な夜な有象無象の影が港の倉庫に蝟集する。煉瓦塀に近づくと、気もそぞろになる不可思議な音が漏れ聞こえてくる。興味本位で聞きに出かけたが帰らぬ者が多数。ひとびとには百鬼夜行とも、ゾンビの行列とも言われて恐れられた。噂をまとめると、こんな具合ーなんでも生きているように動かせる、稀代の影絵師がいる。どんな音声でも音響でも奏でられる、不遇の音楽家がいる。伝説のサーカス団長がいる。三者は酒場

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          米津玄師 2023 TOUR / 空想 @SSA に触れて 感想・空想

          1 前置き 米津玄師の2023年最新ツアー「空想」、後半の要となるさいたまスーパーアリーナ(SSA)での公演に馳せ参じた。およそ2年半ぶりとなる前回のツアー「変身」最終日の、ツアー終了後に公開された「KICK BACK」を見て「うおっ」となって以来、いよいよ実地に聴く機会を得た。「LOSER」あたりからの一リスナーで、ライブで聴くのは初、全編を通してボーカルを引き立たせる音のバランスが心地よく、こんなに歌が上手かったんだ、というのが率直な感想です。 主要メディアには詳し

          米津玄師 2023 TOUR / 空想 @SSA に触れて 感想・空想

          Ado LIVE TOUR 2022-2023「蜃気楼」 最"遅"レポート

          1 Adoってすごいバンドがいるんだ ーAdoってすごいバンドがいるんだ。ライブハウスが角砂糖みたいにちっぽけになって、しかも聴いている連中はみんな宇宙に放り出される。 この情報過多の時代にはおよそあり得そうもない勘違いだ。だけど一昔前であればそんな勘違いが口コミで広がったかもしれない、と空想したくなるほど、Ado初の全国ライブツアー「蜃気楼」の会場では一体感のある音楽が届けられていた。スタンディングのフロアはツアー時点でのガイドラインとルール遵守で押し合ったり混乱する

          Ado LIVE TOUR 2022-2023「蜃気楼」 最"遅"レポート

          蜃気楼へ投射された未来からの情景

          【2023.10.24 改題 内容変更なし】 心音 心音、 シンオン…… しんとした防音室。 気弱になったときは胸に手を当てて耳を澄ます。もう何年も観客と距離を置いて録音のためのスペースにこもっている未来のアーティストは、久しぶりに胸に手を当てて耳を澄ます。すると、遠いアリーナで早鐘を打っていたのと同じ小さな心臓が、一所懸命に働いているのが感じとれる。あの日あの場所で、たくさんの鼓動を吸収したかのように滝となって奔流しだした時間が力強くよみがえってくるのだ。見えないが確かに

          蜃気楼へ投射された未来からの情景