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2019年2月の記事一覧

詩 260

詩 260

  春昼

あかるく しずかな 道をゆき
みつあみ ねじれた 人とゆき
全存在を道草に
投げ捨て 川で休む午後

あくびするにもじゃまなもの
チーズを噛んだまっくろな
わたし わたしが大きすぎ
もっと うつろになれたなら

つばを吐いても 爪 のびて
もう日が落ちる さようなら
血が頬 つたう まだ まだ 重い

枝にとまって 雲を食べ
雨をふらせて 海の底
やっと やすらかな ふたりの時間

詩 259

詩 259

  灯台へ

またたくうちに根をはって
かげろう つむじにただよわせ
マストは立った ゆっくりと
痛ましいほどつつましく

散歩するのも許可制で
ソファに沈めば 足が出て
また怒られる ひとりきり
誰も知らない 鈴の音

くちびる 寒く 波に塔
あたたかくして 息をとめ
本をならべる ほほえみ 浮かべ

葉脈 なぞって 日が暮れて
かわいいだけではゆるされず
なにを売ろうか あきらめようか

詩 258

詩 258

  戦慄

遠い いなずま 耳 すまし
つめたい手をした破壊者が
花粉にさらされ もう 悪夢
こうのとり 飛ぶ 空 見たか

かろやか 廊下で踊ったか
つかみどころのない めまい
助けてほしい 思い よせ
あらゆる あこがれ ひとしずく

氷河期ならば 物質で
もうじき 虚像 おしのけて
ときに醜悪 でも ここにある

ほのかな 気配 つなぎとめ
正午 二都 とかげ ふるわせて
袖のレースをふるわ

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詩 257

詩 257

  雨やどり

前髪 ばらばら のびすぎた
いつものように切りそろえ
ぼんやり地上で雨やどり
形成される 凪 こがね

聖なる 野ばら のぞみなき
明滅 きれぎれ めくるめく
縦 横 ななめ 万華鏡
心 しめつけ 目の前の

数字 点線 ただ おそれ
背ものびるのに 未完成
待ちこがれたもの ざわめき 慟哭

閉じこめられた みどり色
あせり いらだち あきらめて
川を渡れば 立ちあがれ 骨

詩 256

詩 256

  火炎樹

気をつけしたら しばられて
飛べない鳥のように 行く
ゆっくり広がる 祝福に
あなたはつかまる 時間 とめ

ふたたび生存することを
ゆるされ 茎に 傷 つけて
誰かのための あかり 手に
「ここに」「ここで」と待っている

大きな心に身をゆだね
咆哮するなら崖の上
しあわせすぎて すべて うしなう

小石のようなあの人が
きちんと 夕日に 顔を向け
背負って 影を 光と影を

詩 255

詩 255

  北風

白に 灰色 同じ血の
かなしみ 顔を寄せ よそ見
愛撫の餌食 糸をたれ
今年最初の影を踏み

取り残されても 悪口に
幼虫 少しも痛がらず
小柄で 地味な そのかたち
まるで 新品 その寡黙

泡もはじけて 人々の
寝しずまるころ ささやいた
とぎれとぎれの 黄色いひびき

あなたは かかし トルコ石
みにくい まるい 存在に
くつ下 はかせ これで安心

詩 254

詩 254

  砂山住むもの

あなたを解毒し 救うには
まっすぐ 家路 しめすには
こんな光で十分で
この日 一日 屋根の上

心 ひそかにあこがれた
臆病者のまなざしに
裏庭 どんなに はなやいで
色とりどりに ころび 起き

白日 傘 さすことでしょう
もしも 夜 坂 振り返り
採集されたら 枯れはて おしまい

繰り返される正当化
あなたがのぞんだ真実を
シーツで隠して こわがらせるには

詩 253

詩 253

  遊びたい

大気 ふるわせ かたわらで
かたちづくられ すすり泣く
呼ばれた気がしたから ここに
存在したのに 本当の

意味をみとめてもらうには
長い時間がかかるから
ゆうべ 水玉 今朝 アーミン
理由はひとつ 遊びたい

とがった耳で バナナ つみ
なんて不思議な遠近法
ナイチンゲール 香水 ブーツ

かたくにぎった手のなかで
目をぎらつかせ がんばって
停電 照らす あなたの本能

詩 252

詩 252

  待合室

眉は木の上 いけにえの
無力 噛みしめ 三角錐
ゆがみ 共存 ハイビスカス
つらら さしのべ 人見知り

近づく みみずく やどる 火に
めぐみはインク きよらかな
水滴 みだれ 白熱し
こんな光景 見たくない

あわれみなんて 表面に
つづる 神聖文字 器官
なんて孤独な シーソー 悲鳴

誤解の言い訳 明白で
追いつめるから 恐怖症
かたちにすぎない あなたはあなた

詩 251

詩 251

 すれちがい

うす目をあけた 貧血に
水銀 洪水 流しこみ
おりしも 雨季で 泣き虫で
うるおう 双心 手遅れだ

鈴のひびきは残酷で
どこへ行っても見つかって
急いで合図を追いかけて
木陰に忘れた赤えんぴつ

朝食までに出会えない
星占いの練習に
おびえた 子供のころの空 抱き

めぐる あなたは から から と
よどんで にごって さよならだ
おいで おいで と うららか 光

詩 246〜250

詩 246〜250

※ ストックがなくなりました
 次からは新作1篇ずつの発表です

  航海記

おさない心にひそむもの
上から見たらまんまるだ
おじぎをしたら 針の山
べっこう飴でも投げあたえ

また やせた首 自販機に
うっかり 背中をあずけたら
分解されて 床に糸
深遠なるもの ドラム缶

ポストの森で迷っては
母の名前もあやふやで
何度も練習 かさねて 受精

ひまわり かたどり 切りとった
見知らぬ世界に

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詩 241〜245

詩 241〜245

  光合成

わたしの体は欠けていて
明暗 あざやか ここに谷
ひとり 立たされ 英雄の
あかしにもらった風ぐるま

わたしの正面 熱気球
夕日 讃える人々の
聖なる結合 緋のころも
あざやかすぎてうそみたい

膨張させても貯水池で
脳みそに血がまわらない
こんなに わたし 自分を殺し

おみやげだけでもわたせたら
もっと会いたくなるでしょう
感覚 カラス 宙吊り 木馬

  初夏の候

生まれて

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詩 236〜240

詩 236〜240

  監禁

明日 ください 忘れずに
本を片づけ 正座して
あなたを待っていますから
窓からのぞいてみてください

ともしび ささやか 好き嫌い
悪化していく 露をなめ
遠ざけ 近づけ 抱きよせて
縫合するなら 冒瀆で

再会ならば 敬虔で
季節にさらされ おもかげを
書き換えられない わたし 元気で

だまってください もう二度と
返事を期待しないから
あなたはあなたの復讐 はたして

  最悪

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詩 231〜235

詩 231〜235

  球根

やわらかい芽をたたえても
アンテナ 豊穣 問いかける
その声 ほろぼすこと できず
マリーゴールド 揮発性

あなたとちがう顔をして
生まれたわたしが帰る家
欠けては落ちる 手をこばみ
皮膚はだんだんかたくなる

嫉妬深いと怒られて
刃物を植えつけ まぶしくて
かたち 変えれば 悪意も美徳

抵抗する気もない 祈り
磁場は膨張 もう 折れる
深い眠りの最初の呼吸

  ピンク

ブラン

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