詩 246〜250

※ ストックがなくなりました
　次からは新作１篇ずつの発表です

　　航海記

おさない心にひそむもの
上から見たらまんまるだ
おじぎをしたら　針の山
べっこう飴でも投げあたえ

また　やせた首　自販機に
うっかり　背中をあずけたら
分解されて　床に糸
深遠なるもの　ドラム缶

ポストの森で迷っては
母の名前もあやふやで
何度も練習　かさねて　受精

ひまわり　かたどり　切りとった
見知らぬ世界に決まり　なく
行く　帰る　飛ぶ　ころがる　さわる

　　鉄塔

沖に目を向け　夜は星
昼は太陽　約束の
笑顔　たやさず　塩少々
似顔絵　貼るのにいそがしく

きっかけ　ささいで気づけない
コスモス金貨　晴れていた
予言か　予防か　あたえられ
もったいないけど露光させ

到着しだい　抱きしめて
空飛ぶドーナツ　撃ち落とす
芽が出て　ふくらむ　エピタフ　となりに

軽蔑し忘れ　わたし　無為
横断歩道で輪をえがき
レンズ　つらぬく　心をみがけ

　　ムセイオン

大切なもの　なんでしょう
白雪うさぎ　虹灯篭
暗い秘密は腕のなか
怪獣　生きのび　穴をあけ

青ざめ　ふるえ　手を洗い
千鳥コオロギ　まだら草
数えきれない足を踏み
あつめた　めまい　ムセイオン

刻一刻と　くさりかけ
音色は　どんどん　すんでいく
内臓　満開　永久機関

ときめく　心　不公平
抱擁されて　愛されて
みにくい　曲線　今日も　いじめて

　　無機栽培

染めた髪さえ裁かれる
うしろめたくて　拒絶して
電信柱のうしろから
姿かたちが消えていく

ちいさな胸にもコルセット
ボタン　落ちたら火あぶりで
無人の広場でよろこんで
やすらぎ　もたらす　この　構図

長い時間がかかるから
烙印管理　受容して
膝上　そっと　あとをたたない

悪い心のもう一輪
どうせやさしくかがやいて
泣いても　現象　つかまえられる

　　ドロップ

しずかなリズム　グロテスク
上手になまけたパズルなら
めまい　垂直　あざやかに
プール　いっぱい　花束を

少しの別れ　あなたほど
溺愛できない絶縁体
まばたき　にせもの　白い家
指一本で　迷わずに

完璧にする　夢　皆無
最初で最後の迫害者
運動不足で　不器用　音痴

ちがう時間を　あゆみ　寝て
あまりにそれがかなしくて
かがやき　失う　ぬり絵の人類