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としまとしお
2023年2月25日 07:45
作家で評論家の丸谷才一(1925-2012)に、「恋と日本文学と本居宣長」という本があります。宣長の「もののあはれ論」について書かれたものの中では、短くまとめられていて読みやすい好著です。そこで丸谷さんは、宣長の著作「石上私淑言」(紫文要領と同時期の成立)を引用してから、次のように言う。これは、恋愛をほとんど描かなかった中国古典文学と、恋愛ばかり描いた日本古典文学を、比較する中で出てきた言葉で
2023年2月19日 09:00
今夜、私たちが読もうとする紫文要領の文章は、第3部「恋愛と物の哀れ」の第2章、「物の哀れは生と死に関わる」(岩波文庫版、123~126頁)に当たります。作品の核心と呼ぶべき箇所です。たった3頁の分量ですから、ほとんど全文を注釈する形で進めたいと思います。これまで以上にていねいに読み解くことを、あらかじめ御了承ください。これが冒頭の言葉です。前章「なぜ恋が物語の中心なのか」の議論を踏まえた問