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森保ジャパンCK戦術クロアチア戦

クロアチアに敗れ、またしてもベスト8の夢は叶いませんでした。残念です。
そのショックと、次の試合が来ない締切感の無さから、本記事の執筆も遅くなってしまいました。

ちなみに、

とのことです。本ツイートの後、スイスはポルトガルに負けて敗退回数がさらに増えましたし、メキシコは本大会まで7回連続でベスト16止まりでしたし、高い壁がありますね。ベスト8以上は基本的に強豪国しかいない世界なので、当然ではありますが。

その中で、人口400万人以下という小国であるクロアチアの強さは、尋常ではないですね。セットプレーも非常に戦術的でした。

それでは普段通り、コーナーキック戦術を中心に振り返ります。

日本の守備

クロアチア戦でも、今大会ではお馴染みとなった、鎌田・吉田の2ストーン+マンマークでした。また、全員がペナルティーエリア近くで守備に付いていました(アジア最終予選では必ず前線に1人残していました)。この2点は、ワールドカップ本番に向けて用意してきた形と総括できるでしょう。

クロアチアの攻撃は多彩でした。

まず前半45+2分の1本目。コバチッチがショートコーナーを受けるような位置から、ゴール前に入っていく。一通りマンマークに付き終わっていた日本は、慌てて堂安がマークに付く。その直後、コバチッチはまたボール近くに寄っていき、実際にショートコーナーを受ける。こうして少しずつ混乱と綻びを生じさせることが狙いです。そしてワンツーとオーバーラップで完全にサイドを崩されました。ペナルティーエリア内では、長友がスクリーンプレーで邪魔され、一瞬マークを離していました。クロス精度が低く、事なきを得ましたが、前半最後、とても危険な場面でした。

後半17分、クロアチアの2本目。またもやコバチッチとモドリッチがショートコーナーを始め、ファーにストレート系のボールを入れてきました。タイミングが合いませんでしたが、どフリーで1人の選手が走り込んでいました。何故ここまでフリーにしてしまったのか。前述の通り、日本は2ストーン+マンマークのため、クロアチアからするとストーン分の2人、フリーになり、そのうちの1人が遠くから走り込んできたからです。日本はほとんど対応できておらず、タイミングが合っていたら失点ものでした。守備のリスクマネジメントをしっかり行いつつも、フリーの選手を活かす素晴らしい戦術であり、クロアチアが日本を分析し準備してきたことを感じさせます。

後半27分もショートコーナーでした。ボール近くでニアを切るように伊東が立っていましたが、寄ってきたペリシッチにグラウンダーのパスを通されました。ペリシッチがワンタッチでマイナスに落としたボールは、あっさりと浅野の足元に入りましたが、これまたデザインされた形だったと思います。

その後は、後半37分、延長後半6分にもコーナーキックがありました。さすがにネタ切れなのか、失点したくない時間帯だったのか、シンプルにクロスを入れてきました。

まとめると、クロアチアは3本のデザインされたショートコーナーを使ってきました。パスやタイミングが合いませんでしたが、非常に戦術的でした。

さらには、試合開始と同時のゴールキックも大変興味深かったです。日本の右サイドに一気に3人が攻め上がり、いきなりクロスを入れるまで持ってきました。なお、クロアチアはベルギー戦でも、試合開始と同時にデザインされたゴールキックを披露し、ペリシッチが入っていてもおかしくないような際どいシュートを放っています。

クロアチアは本当に素晴らしいセットプレー戦術を持っていました。日本も参考にすべき相手と言えるでしょう。

日本の攻撃

クロアチアの守備は、全員がペナルティーエリア内に入るようなゾーン戦術であり、ゴール前には6人の選手を並べていました。

その守備に対して日本は、ショートコーナーから前田が得点しました。とうとうセットプレーからの得点、素晴らしかったです!

SNSでは、
「ついにデザインプレーを見せてきた!」
「決勝トーナメントまで隠していた森保監督は勝負師!」
といった声が多かった印象です。

しかし筆者としては、そこまでの劇的な変化があったとは思いませんでした。その理由も含めて、考察してみます。

まず前半2分。ショートコーナーから谷口がヘディングシュートを放つチャンスを作りました。前田がゴール前からボールに寄っていくことで、クロアチアのニア担当やショートコーナー対応要員の注意を引き、またゴール前に戻る。その直後、今度は堂安がボールに寄っていき再度注意を引く。そうすることで完全にフリーになった遠藤へ、キッカーの伊東からショートパス。ゴール目の前で2対2の数的同数になっていた谷口と前田へ、遠藤はダイレクトでクロスを上げました。戦術的にデザインされた良い形でした。

次は前半42分、堂安がインスイングでニアにクロスを上げました。谷口が合わせようとしたところ、クリアされましたが、遠藤・吉田・冨安がタイミング良く中に入ってきていなかったため、ニアで逸らしていたところで、あまり可能性を感じませんでした。

そして、直後の前半43分、待望の先制点の場面です。堂安、鎌田、伊東、堂安とショートパスを繋ぎクロス、吉田が何とか折り返したボールを前田が蹴り込みました。最初にショートパスを細かく繋いだことで、相手のマークを外してフリーでクロスを上げられました。ここがポイントでした。ゴール前でのクロアチアのラインの上げる速さ、高さ、揃い方は悪くなかったと思いますし、そのため吉田は上がるラインと入れ替わる形で裏に抜けられませんでした。でも何とか足を伸ばし、折り返してくれたことで、どの試合でも素晴らしい守備能力(スプリントによるプレスやカバーシャドウによるパスコース限定)を見せてくれていた前田に、ストライカーとして嬉しいゴールが生まれました。日本代表全体にとっても、いつ以来か思い出せないほど久々のセットプレーからのゴールでした(コーナーキック分析をしている筆者も嬉しかったです!)。

ではその後はどうだったかと言うと、後半に2本、延長前半に3本、コーナーキックがありましたが、どれもシンプルな形で、チャンスは作れませんでした。

つまり、最初の1本目と、ゴールになった場面。どちらもショートコーナーの非常に良い形でしたが、これら以外では、明確な意図は見えなかったということです。

ドイツ戦で板倉が合わせたショートコーナー、コスタリカ戦で上田がニアに飛び込んだ1本目、これらもデザインされた形でした(スペイン戦ではコーナーキックがありませんでした)。ですので、デザインプレーは1試合当たり1-2本見せており、クロアチア戦で特別多かったわけではありません。

ただし、クロアチア戦では前半だけで2本見せ、どちらもショートコーナーというわかりやすい形だった上、ゴールが入ったので、これまでと大きく違う印象を受けた人が多かったのかもしれません。

もちろん、「ベスト8以上を目指す本当の戦いは決勝トーナメントから。それまでは隠しておこう」と考えた可能性は否定できません。それはそれで立派な戦略ですし、内部情報はわかりません。是非チームに聞いてみたいものです!

試合全体

最後に、試合全体についてです。

日本は善戦しましたが、クロアチアはボール保持も非保持も、ポゼッションもロングボールも、と様々な戦い方ができる強敵でした。いつも相手を延長戦に引きずり込んで勝つ蟻地獄のようなスタイル、本当に不思議です。

PK戦については、日本では挙手制の是非まで議論になっているようですが、個人的には良いことだと思います。PKは決して運ではない、技術・メンタル・チームマネジメント等の要素があり、少しでも勝率を上げるためにどうするか、という視点で考えることは重要です。

今回の日本に関しては、そこまで準備する時間がなかったのではないかと想像します。フォーメーションが、アジア最終予選中に4-2-3-1から4-3-3になり、9月シリーズで4-2-3-1に戻り、本大会では最終的に3-4-2-1あるいは5-2-3がメインになり、基本的な擦り合わせに必死で、セットプレーやPKの優先順位は下げざるを得なかったのではないかと。あくまでただの私見ですが、コーナーキックについて分析し続けてきた身としては、そのように感じました。

分析は以上です。

今回の敗退によって、「ワールドカップに向けて森保ジャパンのコーナーキック戦術を分析する」という目的で執筆していた筆者にとっても、一つの区切りとなりました。その意味では、本大会で最後までコーナーキックから無失点だったこと、最後のクロアチア戦でついに1点取ってくれたことは、個人的にも嬉しかったです。今後また新たな目標を見つけて、進んでいきます!

では、また。







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