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Vol.1 人間関係の変化が組織を変え、業績を好転させた。伴走型のコンサルと共に、2年で受け身体質から脱却

 株式会社U-NEXUS(ユーネクサス)代表取締役社長の上野敏良と、長野市の老舗の看板制作会社「株式会社アドイシグロ」代表取締役社長・石黒ちとせに聞くインタビューシリーズの第1回。経営者との対談記事を3回に分けてお届けし、4回目に営業部へのインタビュー記事を紹介していきます。

 長野市を拠点にITベンチャーの経営者であると同時に、「デザイン思考」のファシリテーターとしての顔を持つ株式会社U-NEXUS(ユーネクサス)代表取締役社長 兼 NextStage 代表の上野敏良。これまで多くの後継者たちの悩みを組織変革コンサルティングで支援してきた。

 そんな上野との出会いで社内の意識が変わり、営業部発の新商品でコロナ禍を乗り越えたという長野市の老舗看板制作会社、株式会社アドイシグロの代表取締役社長・石黒ちとせ。コンサルティングを通じた、同社の組織変革とその成果とは? そしてさらに目指す未来を聞いた。

■「後継者」「好奇心」という共通言語が引き寄せたSDGs勉強会とデザイン思考の研修会での出会い

石黒:
 アドイシグロは、1928年に祖父が創業し、父と父の右腕だった前社長を経て、2006年に私が代表を引き継ぎ4代目になります。

 私自身、もともと継ぐ予定はありませんでした。長野、東京で塾講師や日本語教師をしたり、中国に滞在したりしていました。1998年に長野に戻り、アドイシグロに入社したのが2003年のことでした。

 弊社は長年、大型の看板からネームプレートのような小さなものまで製作しています。近年、社員のアイデアでコロナ飛沫防止パーテーション「マウンテンマウンテン」を開発。北信五岳(長野県の北信地方の山々)をモチーフにしたアクリル製のオリジナル商品が人気となり、コロナ禍を乗り切ってきました。

株式会社アドイシグロ・代表取締役 石黒ちとせ

上野:
 U-NEXUSを創業して今年で12年目になります。アプリケーションの受託開発から始めましたが、あるとき、「魚を与えるより釣り方を教えよ」という老子の言葉に出合い、開発のノウハウを提供することできないかと考えて、アプリ開発のトレーニング事業を始めました。

 コンサルティング事業では、企業研修、デザイン思考の研修会でファシリテーターや、新規事業や新しい商品・サービスを開発するための思考のプロセスをトレーニングしたり、組織変革のコンサルティングをしたりしています。

 若い頃は、東京でジャズのドラマーに弟子入りしてミュージシャンを目指していて、まったく今のビジネスとは関係のない世界にいました。1996年に長野に戻って来てから父の会社を後継しましたが、いろいろあって自分で起業し、今に至ります。

 僕自身も中小企業の後継者、という石黒さんと同じバックグラウンドを持っているので、後継者の方々の役に立ちたいと考えています。

―2人の出会いのきっかけは?

石黒:
長野市主催の「UFO長野ものづくり共創塾」(現UFO長野共創塾)の卒業生が自主的に立ち上げた組織があり、私も参画しています。初めて挨拶したのは、その異業種連携組織「B-cip(ビーシップ)Nagano」と、NPOが組織する「ながの協働ねっと」が共催してSDGsの勉強会をした時。SDGsがまだあまり知られてない当時で、アンテナの高い方がたくさん集まりました。

 その後、2019年夏頃に上野さんの会社が主催するデザイン思考のワークショップが松本市で開かれるのを知って参加しました。「デザイン思考」という言葉にどうして魅かれたのかはよく覚えていません。新しいものが好きなので、面白そうなものにはとりあえず行こうという感覚でした(笑)。

 その研修はワークショップ形式で、スピード感があって、じっくり考えたり参加者同士が仲良くなる暇もなく全員が巻き込まれて、いっときの一体感を体験できて面白かったです。

株式会社U-NEXUS・代表取締役 上野敏良

■受け身の営業スタイルを変えるべく始めたコンサルタント探し

―経営を引き継いで、どんな課題に直面していましたか?

石黒:
 父は私のやり方にノータッチで、特に何の引き継ぎもありませんでした。看板のことは社員たちがやってくれますが、経営のことは誰も教えてくれないので、いろいろな方と情報交換し勉強してきました。

 上野さんと出会う前に悩んでいたのは営業です。私は営業経験が一切ありませんでした。営業部はありましたが、看板の注文が来たら作って売る、ということを長年やっていました。でも待っていれば仕事が来る時代はだいぶ前に終わっていたことはわかっていました。

 営業部にベテラン社員がいた時は何とかなっていましたが、退職した途端売上が下がって、営業のコンサルタントを頼もうといろいろ探したのですが、全く上手くいきませんでした。

 結局、コンサルタントの指導が、その方の得意とする雄弁なセールストークを真似してください、と言われても上手くできなかったり、社長の私が気に入っても営業部のメンバーとの相性が合わなかったりと、本格的にコンサルを開始するにまで至らない状況でした。

―何人かのコンサルタントにアプローチした中で、上野さんにお願いすることになった経緯を教えてください。

石黒:
 デザイン思考の研修会の後、無料相談があると聞いて、まず私の課題感を聞いてもらおうとお願いしました。なんとなく上野さんの真面目そうな人柄を勝手に想像していて、しかも前から知っていたので安心感もありました。

上野:
 松本でのワークショップのすぐ後に長野市内でもデザイン思考のワークショップを開催して、そのときにアドイシグロの社員が2人来てくれて。それも社長からの紹介ではなく、自分たちで調べて参加したそうです。

石黒:
 そうなんです。2人とも、「ワークショップがとても良かった」と言って帰ってきたので、上野さんのことをみんなも気に入るのではないか、という好感触がありました。うちは看板屋で納期が非常に大切なので時間をとても気にしますが、上野さんは、その「時間を守る」というところをきちんとしている人なので、そこも良かったのだと思います。

取材日/2023年8月25日
場所/株式会社アドイシグロ 
写真/清水隆史(ナノグラフィカ)
執筆/松井明子
編集/寺澤順子(ソーシャルデザインセンター) 

>>Vol.2へ続く





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