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「金欠ボーイズ 笑いごとじゃない」11話

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【11話 新コンビ、結成5分で解散?】


   平山、怒った足取りで下手から出て行く。

林田 (軽くポーズを入れて)どーもー、電球泥棒です。みたいな。白熱灯でしょ?

我孫子 (平山に気を取られていて)え?

林田 LEDじゃなくて。

我孫子 そんなのどっちでも……。

林田 どーもー、電球泥棒です。ほら一緒に。おれが電球で、我孫子さんが泥棒。

我孫子 なんでおれが泥棒……(と言う間もなく)。

林田 (二人で)どーもー、電球泥棒です。まぁまぁまぁ。まぁ、いいんじゃない。いいんじゃないすか? ちょっと思ったんだけど、もう一人入れてコントやんないスか?

我孫子 は?

林田 若い子には絶対コントのがウケるし。三人いれば色々分担もできるから。

我孫子 は?

林田 最初は、知り合いとか使って笑い誘った方がいいスよね。雰囲気づくり? 認知度っていうか、やっぱ最初のハードルはさくさくっと行っちゃいたいし。ある程度波に乗れば自然とうまくいくようになるかなって。

我孫子 お前、何言ってんだ?

林田 何って、電球泥棒のブレイク七週間計画。

我孫子 突然計画するなよ! ていうか、七週間で売れる気か!

林田 だって、売れなきゃ意味ないし。

我孫子 売れなきゃって……、おれは漫才一筋なんだよ。

林田 ニーズ、ニーズ。コントのが受け入れられやすいって。

我孫子 おれたちは漫才をやるんだ。もう一人入れたりなんて絶対しないぞ。それから決定権はおれにある。それを忘れるな。

林田 それじゃ売れないと思うんだよなぁ。

我孫子 サクラ使って笑い取るとか、お前、笑いをナメてるのか?

林田 だって売れたいでしょ?

我孫子 売れれば何でもいいってわけじゃないんだよ。

林田 売れてから考えればいいじゃん、そんなの。

我孫子 そんなの? ……色々考えてみたんだが、おれたちはうまくいきそうにない。

林田 なんスか、急に。

我孫子 世代とか価値観とか、笑いに対する考え方とか、違いすぎる。

林田 (軽々と)そんくらい合わせるって。

我孫子 無理して合わせてもらいたくない。

林田 じゃ、それを踏まえてのー、意見のすり合わせ、しますか。

我孫子 いや、すり合わせられないから。

林田 そお?

我孫子 絶対ムリ。というわけだから、行ってくれ。

林田 行くってどこへ?

我孫子 どこへでも。

林田 もう少し詳しく。

我孫子 行きたいところならどこへでも。ここではないどこかへ。

林田 ……ポエム?

我孫子 ポエムじゃねぇよ!

林田 もしかして、解散ってこと?

我孫子 そう取ってくれて結構。

林田 マジ? 結成五分で?

我孫子 記録を作ったな。

林田 ……オーケー、分かった。(去り際に捨て台詞)見とけよ、天下取ってやるからな!

   林田、下手から出て行く。

我孫子 よく言えるな、あんな恥ずかしいセリフ。

   そこへ宇田川とナナがいがみ合いながら戻ってくる。



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いただいたサポートは子供の療育費に充てさせていただきます。あとチェス盤も欲しいので、余裕ができたらそれも買いたいです。