高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その4 魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察


国や県の資料をもとに、コンソーシアムとコミュニティ・スクールについて考察しています。今回は、4回連続シリーズのその4、最終回です。

これまで、コミュニティ・スクールについて検討しました。

「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その1 「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」へ-

「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その2 「コミュニティ・スクール」という手段

「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その3 「コミュニティ・スクール」という手段

「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その4 「コミュニティ・スクール」の課題と展望

その後、国の進めるコンソーシアム事業と島根県の進めるコンソーシアム事業に着目して、要点を抑えました。

高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その1 文科省の進めるコンソーシアムとは

高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その2 「高校と地域をつなぐ人材のあり方に関する研究会」の検討

高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その3 島根県の進めるコンソーシアムとは

高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その4 魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察(本稿)


本稿は、それらを踏まえたうえで、共通点や相違点を整理すると共に、コミュニティ・スクールとコンソーシアム の今後の棲み分けについての示唆を得るものです。[注1][注2]

本稿の結論は次の通りです。

 国が努力義務化したコミュニティ・スクールを能動的に活用しながら、学校運営協議会に企画推進委員会や部会を活用することで、コンソーシアムのねらいでもある「マッチングの機能」を充実し、従来の学校評価委員会等の仕組みも踏まえたうえで、一体的・包括的に地域や学校の実態に最適な形を模索し続けることが求められる。
 学校運営協議会は、学校側に着目した制度であり主従関係になりがちであるため、部会等で地域側の視点を補完しながら、地域学校協働本部の設置も含めて、学校と地域が水平的関係をつくることで、win-winの関係性を維持できる体制を構築することが重要である。

コミュニティ・スクールとコンソーシアムの共通点と相違点は、次の3点に集約されます。

◆コミュニティ・スクールとコンソーシアム の共通点
①どちらも手段であり「なにを実現したいか」「なにを解決したいか」など目的の方が大切である。
②目的、目標を起点として、メンバー選定が重要である。
③「学校」と「地域」の連携・協働・共創が生まれる場である。(支援から協働・共創へ、参加から参画へ)

①どちらも手段であり「なにを実現したいか」「なにを解決したいか」など目的の方が大切である。
 コミュニティ・スクールもコンソーシアムも、一つの手段であることは、再三明記されている通りであり、結局は「なにを実現したいか」「なにを解決したいか」について、関係者が熟議を通じて、共通認識を持つことが肝要です。

②目的、目標を起点として、メンバー選定が重要である。
 目的、目標を関係者で熟議しながら進めていると、次に、だれがメンバーであればそれが実現可能だろうかを。地域のパワーバランスもあるため、一概には言えないため、PTA会長や同窓会長と管理職、コーディネーターなど少人数が所属する企画運営員会等において、事前協議で決めることも一つの方法です。

③「学校」と「地域」の連携・協働・共創が生まれる場である。(支援から協働・共創へ、参加から参画へ)
 学校と地域の関わり代には濃淡があって然るべしですが、最も濃い関わり代がコミュニティ・スクールであり、コンソーシアムであるでしょう。但し、コミュニティ・スクールもコンソーシアムも、委員になることで、委員になった人と委員にならなかった人の線引きをしてしまうため、委員にならなかった人とは接点が生まれにくいことがあります。それも含めて、どの人にどの程度関わって欲しいかを考えて委員の選定や部会の設置、既存組織との棲み分けを考えることが求められます。

コミュニティ・スクールとコンソーシアム の相違点
①CSは法律であり、コンソーシアムは事業である。
②CSは学校運営協議会のみだと垂直的関係(主従関係)になりがちであり、コンソーシアムは水平的関係(win-win)に近い。
③CSは「地域とともにある学校づくり」を推進し、コンソーシアムは、「学校と地域のマッチング機能」促進をメインミッションとしている。

①CSは法律であり、コンソーシアムは事業である。
 CSは、法律に明記されています。平成27年12月の中教審答申を踏まえて、平成29年3月に「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」いわゆる地教行法に「協議会の設置の努力義務を課すこととする。」と明記されました。一方、コンソーシアムは、文科省事業「地域との協働による高等学校教育改革の推進事業」に明記されています。

②CSは学校運営協議会のみだと垂直的関係(主従関係)になりがちであり、コンソーシアムは水平的関係(win-win)に近い
 学校運営協議会は、3つの機能を有していますが、あくまで、「学校経営について、地域が【承認】や【意見を述べる】となっています。」(もちろん、承認はLet'sであり、学校と地域が連携協働して社会総がかりで取り組むということも解説されています)地域側にさらなる主体性を求めるのであれば、部会をつくって、地域側にとっても明らかにメリットがあり、続けたくなるような関係性がなければ、持続しません。連携や協働・共創は、言葉で言うよりもはるかに難しく、win-win関係がなければ瞬時に形骸化します。学校が地域住民に「生徒のためにお願いできませんか?」と言っているとすれば、それはwin-winでない可能性があります。

③CSは「地域とともにある学校」への転換を推進し、コンソーシアムは、「学校と地域のマッチング機能」促進をメインミッションとしている。
 CSは、これまでの「開かれた学校」から一歩踏み出し、学校が地域と一体となって子どもたちを育む「地域とともにある学校」へ転換することを掲げています。一方、コンソーシアムは、生徒の教育活動充実のために地域課題等とのマッチング機能をコンソーシアムという組織及びコーディネーターを配置して、組織からと人からの両面における学校と地域の関わり代を形成しています。

次に、コミュニティ・スクールにおいて、学校運営協議会の設置におけるポイントを整理しました。

◆学校運営協議会の設置におけるポイント
①学校評価委員会、PTA等、既存組織等との役割分担を熟議して決定する。
②コーディネーター機能を担保する。
③毎年のアップデートを怠らない。

①学校評価委員会、PTA等、既存組織等との役割分担を熟議して決定する。
 文科省資料に、既存組織とは「一体的に推進」と明記されています。学校運営協議会を運営することで、学校評価委員会を実施したとするところもあるようですが、あくまで役割分担なので、学校と地域に最適な組織のあり方を対話をしながら進めていくことが必要です。その時に、学校だけを見るのではなく、他の教育機関との連携や住民組織との連携など、主語を高校だけにとどめないことが求められます。
②コーディネーター機能を担保する。
 経験者ならご存知の通り、二者間以上の連携・協働は、言葉ほど簡単ではありません。そこで重要となってくるのが、コーディネーター機能です。”機能”とあるように、組織にコーディネート機能を持たせることもできますし、個人にコーディネート機能を持たせることもできます。立場が違えば、価値観が異なります。優先順位も異なります。協働・共創を推進するモチベーションも異なります。それらをうまくコーディネートしていくことが、二者間以上の連携・協働を滑らかに進めるポイントです。(コーディネーター機能については、後日詳述)

③毎年のアップデートを怠らない。
 協議会等の組織は形骸化しやすいのが現状ではないでしょうか。委員の妥当性、部会の妥当性など、刻々と変化する地域の実状や生徒の実態に柔軟に対応するために、たとえ同じ部会や委員であっても、毎年批判的に検討することが必要です。その時に、アップデートによって気分を害する人も少なからず存在するので、アップデートのやり方も重要です。但し、痛みの伴わない改革は存在しないので、多少の痛みは覚悟する必要もあります。

以下、結論です。

 国が努力義務化したコミュニティ・スクールを能動的に活用しながら、学校運営協議会に企画推進委員会や部会を活用することで、コンソーシアムのねらいでもある「マッチングの機能」を充実し、従来の学校評価委員会等の仕組みも踏まえたうえで、一体的・包括的に地域や学校の実態に最適な形を模索し続けることが求められる。
 学校運営協議会は、学校側に着目した制度であり主従関係になりがちであるため、部会等で地域側の視点を補完しながら、地域学校協働本部の設置も含めて、学校と地域が水平的関係をつくることで、win-winの関係性を維持できる体制を構築することが重要である。


以上です。

まだまだ不勉強のため、現時点ということでご理解ください。尚、本稿の考察は文科省の公式見解ではなく、あくまで個人の意見となります。その点、ご留意ください。

注1:島根県は、コミュニティ・スクールとコンソーシアムの違いについて次のように整理しています。
Q13、コンソーシアムと学校運営協議会( コミ ュニティ・ スクール) や地域学校協働本部の違いは何ですか。
A13、「 学校運営協議会」 は地域住民等の委員が、学校運営に関して協議する機関で、 この協議会を導入している学校をコミュニティ・ スクールといい、学校側に着目した制度です。一方「 地域学校協働本部」は学校と連携協働しながら、地域全体で子どもの育ちを支える地域側に着目した取組です。
コンソーシアムはこの両方の性格を併せ持ち、 各地域や学校の実情に応じ地域や学校の魅力を活かした体制の構築ができるようにしたものです。(「 高校魅力化コンソーシアム」 の手引き【 0214版】https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/koukoumiryoku/consortium.data/conso-qa.pdf?site=sp)
注2:学校と地域のあり方を考えるにあたり、文科省は次のような考え方を持っています。
学校や地域が抱える複雑化・多様化した現代的課題に社会総掛かりで対応するには,いわゆる「教育は学校の役割」といった固定化された観念から離れ,子供たちの成長に対する責任を社会的に分担し,学校における「社会に開かれた教育課 程」の実現に向けて,地域住民等がそのパートナーとして子供たちの成長を支える活動に,より主体的に参画するとともに,教育課程の内外の活動の中で地域住民等が持続可能な地域社会の創生につなげていくため,地域における学校との関係を新たな関係(連携・協働)に発展させていくことが必要である。(p.49)
新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の協働の在り方と今後の推進方策について(平成27年12月21日)中央教育審議会






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