高校魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察 -その1 文科省の進めるコンソーシアムとは

国や県の資料をもとに、コンソーシアムとコミュニティ・スクールについて考察します。4連続シリーズの今回はその1です。

その1 文科省の進めるコンソーシアムとは
その2 「高校と地域をつなぐ人材のあり方に関する研究会」の検討
その3 島根県の進めるコンソーシアムとは
その4 魅力化コンソーシアムとコミュニティ・スクールの一考察

新学習指導要領に「社会に開かれた教育課程」が明記されて、学校が地域社会と連携・協働して育てたい生徒像を共有し、社会総掛かりで取り組むことが求められています。

以前のnote:「高校」と「地方創生」の親和性についての一考察

その手段の一つがコミュニティ・スクールであり、コンソーシアムです。コミュニティ・スクールは、前回までのnoteにて全4回でまとめているのでそちらをご覧ください。

今回はコンソーシアムに注目します。コンソーシアムを構築することが明記されたのは、2019年度から文科省が着手した「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」[注1]ではないでしょうか。この事業が目指しているのは、「高校生と地域課題のマッチングを効果的に行うためのコンソーシアムを構築すること」です。
これについては、以前こちらのnoteでも整理した、これまでの教育業界の潮流だけではなく地方創生の潮流から、高等学校を地域振興の核とした機能強化を図ることなどを明記した「経済財政運営と改革の基本方針2018」や「まち・ひと・しごと創世基本方針2018」が合流したことが後押しになったと考えられます。事業の趣旨は次のようにまとめられています。

新高等学校学習指導要領を踏まえ、Societiy5.0を地域側から分厚く支える人材の育成に向けた教育改革を推進するため、高等学校が自治体、高等教育機関、産業界等と協働してコンソーシアムを構築し、地域課題の解決等の探究的な学びを実現する取り組みを推進することで、地域振興の核としての高等学校の機能強化を図る。

資料には、「標準スキームを踏まえつつ、地域の実情や人材ニーズに応じた取り組みを展開」の文言も見られます。「プロフェッショナル型」「地域魅力化型」「グローカル型」の類型があるのは、全国一律ではなく高校や地域の実状に応じて最適な形態を検討しているからでしょう。

そもそも、なぜ「地域振興の核としての高等学校の機能強化」なのでしょうか。資料によると、地方への人材還流に関する効果と新学習指導要領の目指している方向性の重なりが強調されています。詳細は、文科省資料を参照して頂ければと思います。[注2]

高校時代までに地元企業を認知しているほど、出身市町村への愛着が強いとともに、出身市町村へのUターンを希望している実態が把握される(出身県外に移住している者。)
○地元企業を知ったきっかけとして、「地方の大都市の出身者では、「マスメディア(新聞・TV等)」で知る機会が、中小都市クラス以下の規模の地域と比べると多いことに特徴がある一方で、「地方の中小都市」・「都市部から離れた地域」の出身者では、「学校の行事(企業見学等)」「職場体験」の割合が高いことが把握される(出身県外に居住している者)

となります。つまり、地方への人材還流は、コンソーシアム構築によって、高校生と地域課題のマッチングを効果的に行うことで促進される。」と、整理されています。

要するに、文科省の進めるコンソーシアムは、「高校生と地域課題のマッチングを効果的に行うため」であり、「効果的なマッチングにより、地域への愛着が高まる」ことは調査で明らかである。さらに、この取組は新学習指導要領が掲げる地域課題の解決等による探究的な学びと重なるといえます。

今回は、以上となります。

注1:
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/__icsFiles/afieldfile/2019/04/03/1415089_02.pdf

注2:https://www.soumu.go.jp/main_content/000638149.pdf



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