「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その2 「コミュニティ・スクール」という手段

前回から「高校魅力化プロジェクト」を「社会に開かれた教育課程」という新学習指導要領の観点から考察しています。(読者は高校魅力化PJをなんとなくでも知っていることを前提としています。高校魅力化PJについては後日詳述予定。)

前回note:「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その1 「総合的な学習の時間」から「総合的な探究の時間」へ- 

今回は、制度として存在するコミュニティ・スクールについて3回に分けて整理します。

◆コミュニティ・スクールについて
①コミュニティ・スクールとは
②コミュニティ・スクールの成り立ち
③コミュニティ・スクールの課題と展望

この、3点について順次説明していきます。

尚、本稿では文科省の学校運営協議会設置の手引[注1]を引用・参考にしています。

①コミュニティ・スクールとは
コミュニティ・スクールとは、「学校運営協議会を設置した学校」のことであり、『「地域とともにある学校づくり」に有効なツール』との記載があります。

中央教育審議会答申(平成27年12月)では「すべての公立学校において学校運営協議会の設置を目指すべき」とされており、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正(平成29年3月)では、「協議会の設置については、教育委員会に対して『努力義務』を課す。」とされています。

まずは、「学校運営協議会」とはなにか、なにができるのか、について整理します。

学校運営協議会の主な3の機能は、次の通りです。
1、校長が作成する学校運営の基本方針を承認する。
2、学校運営について、教育委員会又は校長に意見を述べることができる。
3、教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることがある。

つまり、【決定はしない】けれども、地域住民側が学校運営について【承認】及び、学校運営と教職員任用について【意見を述べる】ことはできるようです。尚、教職員任用については、導入校の約16%の割合で意見が出されているとの報告があります。

次に、コミュニティスクールのメリット、魅力は何でしょうか?
主に以下3つのメリットが挙げられています。

◆コミュニティ・スクールのメリット(関係者全体にとって)
①組織的・継続的な体制の構築【持続可能性】
 ▶校長や教職員の異動があっても体制が継続できる
②当事者意識・役割分担【社会総掛かり】
 ▶承認を通して、当事者意識の醸成ができる
③目標・ビジョンを共有【協働活動】
 ▶関係者間で学校運営協議会や熟議を通じて、目標やビジョンを共有できる

さらに、関わる人ごとに区分して考えると、以下のように整理されています。

◆コミュニティ・スクールのメリット(各関係者にとって)
(1)子どもにとっての魅力
・子どもたちの学びや体験活動の充実
・自己肯定感や他人を思いやる心の育成
・地域の担い手としての自覚の高まり
・防犯・防災等の対策による安心・安全な生活

(2)教職員にとっての魅力
・地域の人々の理解と協力を得た学校運営や「社会に開かれた教育課程」の実現
・地域人材を活用した教育活動の充実
・地域の協力による子どもと向き合う時間の確保

(3)保護者にとっての魅力
・学校や地域に対する理解が深まり、家庭教育との相乗効果
・地域の中で子どもたちが育てられているという安心感
・保護者同士や地域の人々との人間関係構築

(4)地域の人々にとっての魅力
・経験を生かすことで生きがいや自己有用感に
・学校が社会的に繋がって、地域のよりどころに
・学校を核とした地域ネットワークが形成され、地域の課題解決に接続
・地域の防犯・防災体制等の構築

以上のように、コミュニティ・スクールはメリットがとても多いようです。では、なぜ、努力義務化しなければならなかったのでしょうか。これについては次回以降考察します。

広島県について叙述すると、令和元年度にすべての県立学校でコミュニティ・スクールを導入しました。県立高校で導入100%は、県単位では、山口県、和歌山県に続いて、当時3県目でした。尚、広島県は、コミュニティ・スクール導入理由を次のように説明しています。

「広島県教育に関する大綱」においても,本県の育成すべき人材として「『幼児期から大学・社会人まで』を見据え,学校・家庭・地域,さらには経済界や産業界も含めた『オール広島県』で,『生涯にわたって主体的に学び続け,多様な人々と協働して新たな価値を創造することのできる人材』を育成していく。」と掲げております。
 これらのことを踏まえ,学校の抱える諸問題の解決や生徒等の望ましい成長をより一層支援するためには,学校と地域が学校運営の目標・ビジョンを共有し,共に力を合わせて学校運営に取り組む必要があるため,令和元年度(平成31年度)から全ての県立学校にコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を導入しました。[注2]広島県教育委員会ホームページより

つまり、「広島県が育成を目指す生徒像を達成するために、コミュニティ・スクール制度は適していた」といえます。

「広島県教育に関する大綱」[注3]を確認すると、策定の趣旨(p.1)があり、要約すると、次の内容が叙述されています。

令和2年に策定した新たな総合計画である「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」 において,全ての施策を貫く視点として,「生涯にわたる人材育成」を掲げており, 県民一人一人がそれぞれ抱く夢や希望をあきらめることなく,将来に向けて,更なる一歩を踏み出していくために,「教育」の果たす役割は,これまで以上に重要となるとしたうえで、これまでの取組の現状や,今後予想される社会情勢の変化などを踏まえ,令和3年度以降の教育の基本的な方針を示す新たな「広島県 教育に関する大綱」を策定し,本県の教育を更に 「一歩前へ」進める挑戦を推し進めていく。(筆者要約)

そして、確かに、既出の本県の育成すべき人材としては、「本県教育の基本理念・目指す姿」(p.4,5)に記載が見られます。尚、基本理念と目指す姿は次の通りです。

<基本理念>
広島で学んで良かったと思える 広島で学んでみたいと思われる
日本一の教育県の実現
<目指す姿>
一人一人が、生涯にわたって主体的に学び続け、多様な人々と協働して新たな価値を創造する人づくりの実現

このように、広島県では県として目指すべき方向性を明文化しており、それを実現するための手段として「コミュニティ・スクール」を全県立学校で導入しています

以上です!本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました!次回は、「コミュニティ・スクールの成り立ち」です!

注1:学校運営協議会設置の手引(令和2年10月 文部科学省 総合教育政策局)
コミュニティ・スクールのつくり方(学校運営協議会設置の手引き)(令和元年度改正版) 
注2:広島県教育委員会 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)についてhttps://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/kyouiku/community-school.html
注3:広島県教育に関する大綱https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/423641.pdf




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?