「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その3 「コミュニティ・スクール」という手段
前々回から「高校魅力化プロジェクト」を「社会に開かれた教育課程」という新学習指導要領の観点から考察しています。(読者は高校魅力化PJをなんとなくでも知っていることを前提としています。高校魅力化PJについては後日詳述予定。)
前回note:「高校魅力化プロジェクト」と新学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の連関 -その2 「コミュニティ・スクール」という手段
今回は、3回に分けて制度として存在するコミュニティ・スクールについて整理をする第2回目です。
◆コミュニティ・スクールについて
①コミュニティ・スクールとは
②コミュニティ・スクールの成り立ち
③コミュニティ・スクールの課題と展望
この、3点について順次説明していきます。
尚、本稿では『コミュニティ・スクールの成果と展望-スクール・ガバナンスとソーシャルキャピタルとしての役割-』[注1]を引用・参考にしています。
そもそも、「コミュニティ・スクール」と一言で言っても、多義性を有するコミュニティ・スクールは国や時代によって異なるため、6つのタイプに分けられます。[注2]
(1)児童生徒と成人の施設共用型学校
1920年代にイギリスのヘンリー・モリスが提唱した新たなタイプの学校がモデルとされる。この学校は、カリキュラム以外の時間に地域社会が施設を使用できるように設計された。施設開放だけではなく、職員が配置されて、成人対象に教育プログラムを提供するところも現れた。一連の流れは、保護者や地域住民にも利益をもたらすとされ、地域活性化や子どもたちの社会的関心を高めるなどのメリットもあるとされた。これらを総称してコミュニティ・スクールと呼ばれていた。
(2)オルセンのコミュニティ・スクール論と地域社会学校
1930年代に米国で取り組まれた社会改造を目指す運動が源流とされ、日本でも展開された。この潮流は、カリキュラム改造をしながら、学校と地域社会を繋ぐことで、学校の地域社会化及び地域社会の学校化を目指した。その中に成人教育の発想も包含されていた。いわゆる本郷プランを推進した大田堯(修論で取り上げた)もオルセンのコミュニティ・スクールに触れている。このような戦後の「地域教育計画」の一部としてコミュニティ・スクールの概念は、日本においてコミュニティ・スクールの源流として広く認知されている。
(3)1974年制定のアメリカのコミュニティ・スクール法に基づく学校
1974年に制定された法律で規定されたコミュニティ・スクール法を指す。この理念は、児童生徒はもちろん、そのほかに彼らと家庭、地域のために、心身の健康サービスや両親教育プログラム、犯罪防止と社会復帰のためのプログラムなど、福祉的機能を重視している。
(4)イギリス(イングランドとウェールズ)における公立初等中等学校
イギリスの1988年学校基準・体制法に基づく公費運営学校である。学校運営費は地方当局(地方教育当局)によって負担され、学校理事会の設置が義務付けられている。学校理事会は、校長含めた教職員の任命や解雇が可能であり、学校理事会には、地域代表もの理事も存在する。校長と学校理事会に上下関係はなく、お互いパートナーとして責任を分担するという仕組みである。
(5)地域社会の資源を活用する学校運営の在り方
1980年代から地域社会との関係性を重視して、地域社会の資源を活用するタイプである。戦後でいえば、「地域社会学校」に似ている。現行のコミュニティ・スクールが制度化されるまえから、「コミュニティ・スクール」という名称で日本国内では実践する例がいくつか見られる。
(6)現在の我が国のコミュニティ・スクール(地域運営学校)
2004年の地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づいて学校運営協議会を設置する学校を意味する。機能としては、スクール・ガバナンスの意味合いが強かったが、地方創生の潮流も強くなり、ソーシャル・キャピタル、つまり、地域資源の活用の面も近年では担っている。いずれにせよ、このコミュニティ・スクール制度は、イギリスの1998年以降のコミュニティ・スクールをモデルとして誕生している。但し、アメリカのコミュニティ・スクールの流れも汲んでおり、オルセンの言う「学校の地域社会化「地域社会の学校化」という発想も生かされているといえる。
以上、6つに分類されるようですが、日本における現行のコミュニティ・スクールは(6)の通りです。この(6)に至るまでの歴史的な経緯は割愛しますが、1947年を起点として6つの時期に区分して叙述されています。(p.63-81)そして、「教育論」としてカリキュラム論、学校・地域連携、ソーシャルキャピタルの面と、「政策論」として、学校の自主自律性、スクール・ガバナンスの面の2つの潮流の合流が現行のコミュニティ・スクールの制度であると筆者は考察しています。
内容が徐々にタイトルから離れつつある気がしていますが、次回はコミュニティ・スクールの課題・展望を整理します。
注1:『コミュニティ・スクールの成果と展望-スクール・ガバナンスとソーシャルキャピタルとしての役割-』佐藤晴雄(2017)ミネルヴァ書房(p.63-86)
注2:『コミュニティ・スクールの成果と展望-スクール・ガバナンスとソーシャルキャピタルとしての役割-』佐藤晴雄(2017)ミネルヴァ書房(p.49-86)
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