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部分の立場で顧客の経営・事業戦略に影響を与える

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「デジタルB2Bマーケティング第10回」

■変化は部分から始まる

部分と全体は相互に影響を与え合いながら生成変化するものである。このことは第8回「部分だが全体との相互関係を持たせる」https://note.com/torutaka0505/n/n79a9c36ceb54でも述べた。

私たちの身の回りを見ても、全体が一気に変化することはほとんど無い。あったとしても部分の変化が潜在的に進行していたが表に出なかっただけだ。B2Bのマーケティングでも同じことが言える。部分が周りと相互に影響を与え合いながら全体が生成変化し、最終的には全体を変えることがあり得るのだ。昔の話になるが、携帯電話で写真を撮り送るようになったのは日本の京セラが始めた写メールが最初であった。その後スマートフォン時代になってSNSが登場し、世界中の人がフェースブックや、インスタグラムなどで写真や動画を送る様になった。それによりスキャンダルが暴露されたり、取材、発信の源であったマスコミが一般市民の投稿を活用するようになった。こういったこともすべては部分から始まっている。

このような考え方からもB2Bマーケティングにおいて、素材、部材などの部分が全体を大きく変容させる可能性が十分ありえるし、むしろそれが現実なのだ。

■部分の立場で顧客の経営・事業戦略に影響を与える

B2Bのマーケティングで最も大事なことは、顧客のエコシステムやビジネスを先回りして想定することだ。ただし起点は、自社の製品・サービスだ。自社の製品・サービスが、最終受益者にこれまで以上の価値(ベネフィットにたいするコスト)をもたらすものにつながっていること、そのためには、自社の製品・サービスを採用することが重要であること、また他のパートナーとの連携、共創が重要であることを訴求する。上から目線の戦略の提案ではなく、顧客と顧客のパートナーにうまく影響を与え、また彼らの要求を自社の製品・サービスに吸収し、エコシステム・ビジネスを創発してくことだ。

■B2Bマーケティングとは部分がエコシステム・ビジネスを変革する異業種連携プロセス

B2Bのマーケッターに必要なのは、顧客の現在のエコシステム・ビジネスモデルを理解し、自社の製品・サービスを起点にしてそのエコシステム・ビジネスモデルを変革することである。

最も重要なことは、顧客のエコシステム・ビジネスモデルをデザインする力であろう。部分でありながら全体をデザインし、変容させていく想像力と行動力だ。

そのためには、最終受益者の魅力的な価値をイメージし、その実現のためのエコシステム・ビジネスを企画することになる。自社の製品・サービスはそのための重要なプレイヤーとして位置付いていなければならないし、パートナーとの連携、共創もシナリオの中に入れる必要がある。

B2Bのマーケッターには、自社以外の業界、会社をこえた異業種連携力が求められる。

■障害になるのは、自社と製品・サービスが変化しないこと

デジタルがベースの社会で生き残る条件は、常に変化し続けることだ。B2Bマーケティングを実行する上で、自社の製品・サービスが、そして会社自体が、周りの変化を吸収い進化できるかが生き残りの条件になってくる。特に製造業は、自社で製造することにこだわるあまり、リスクを顧みず莫大な設備投資を行うことがままある。その設備投資の回収をするために、低価格で受注し、開発部門に無理をさせ、製造には無理なコストダウンを行わせ、エコシステム・ビジネスモデルの変化にあらがう。製造業であっても発想を変えれば、ソフトウエア会社の様に変化できる。開発設計に特化したファブレス業態や、さらには設計+シミュレーションサービスなどいくらでも方法はある。市場や顧客への変化対応が前提であって、自社の設備や組織を守ることが前提ではないのだ。

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