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回路図と文章が書ける基板設計者です。都内在住都内勤務です。 noteで基板設計物語を書…

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回路図と文章が書ける基板設計者です。都内在住都内勤務です。 noteで基板設計物語を書いています→ 上巻完結後に清書中です。古い投稿は整理していきます。 1男2女の親です。 宇宙・博物館・小説・科学・音楽・つまりだいたい何でも好きです。

記事一覧

回路図流用の注意点(のひとつ)

「ただコピペをするんじゃない、自分が設計したものとして理解しろ!」 これは新人の回路設計者が、一番最初に言われることだと思います。既存製品の回路図――つまり先輩…

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1か月前
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EMI-輻射ノイズの考え方

EMI測定時、電波暗室内の測定環境はしっかりしたもので、DUTのどこから輻射ノイズが発生しているかはっきり示してくれます。 そして測定結果が悪かった場合(VCCIなどの規…

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2か月前
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HDMIコネクターのGND端子を考える

基板設計の配線にまつわる話です。 HDMIコネクターのGND端子ってすこし不思議じゃありませんか? フットプリントを見ると普通のコネクターですが、 ピンアサインで見ると…

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3か月前
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E=IR

E=IR。電気回路の公式で一番目に覚える原理、オームの法則は大変に奥深いです。たとえば製品開発では消費電力を下げたい。となるとRは物性値で固定なのでEを下げるかIを下…

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5か月前
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USB TYPE-Cがちょっと好きな話

USB TYPE-Cは両面挿しができて便利ですね。 基板設計の視点でこれのちょっと好きなところを解説します。 題材はこれ、日本航空電子工業さんのTYPE-Cコネクター。 A列は面実…

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7か月前
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45度での部品配置

以前X(ツイッター)で投稿した内容ですがnoteでサルベージします。 基板設計にて45度で部品配置をするのは意味があります。 QFPやQFNを45度で配置するのは、一見幅を取る…

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8か月前
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表面実装部品のスタブについて

ちょっとマニアックに、表面実装部品のスタブについて紹介します。 題材はQSFP28コネクターでこんな断面、 見るべきポイントは端子の基板接触部です。 推奨パッドサイズ…

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10か月前
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基板設計CADについて

基板設計CADに常々必要だなと思っていることをまとめます。 思いのままに操作できること道具として、箸を使うようにCADを使わないといけません。 それには操作方法の習得…

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11か月前
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SI視点でのDDR1&DDR4比較

SI(Signal Integrity)視点でDDR1とDDR4のIBISモデルを比較します。 DDR1の登場が2000年、DDR4の登場が2014年です。その14年でDDRメモリーがどう進化し、SIが向上したかを…

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byte lane(バイトレーン)

複数の信号を同期させるパラレル伝送において、デジタル信号の1bit(ビット)をある情報の単位に束ねたものが1byte(バイト)である。 たとえばDDRメモリーでは、1bit x 8 …

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基板設計物語(上巻)

<プロローグ> 「センスが無ければ辞めた方がいいよ」 新山明(にいやまあきら)が配属後に主任から掛けられた言葉は厳しいものだった。思えば就職活動からすでに大変だ…

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部品配置のポイント

「部品配置の手順」の続編です。 部品配置は基板の品質をおもいっきり左右します。 適当に配置→無理な配線→実装後にデバッグの嵐、は避けたいところ。 このページでは一…

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部品配置の手順

基板設計の順序として部品配置→配線はよく知られることですが、部品配置自体の手順はあまり知られていないように思います。 その基本を紹介します。 (1)回路ブロックを…

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toroaまとめ(2022年4月~6月)

https://twitter.com/me_toroa テクな話かな?と思った投稿・RTをゆるくまとめます。 ●6月 6/29 異次元の野球中継 https://twitter.com/me_toroa/status/1542036552963

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toroaまとめ(2022年7月~9月)

https://twitter.com/me_toroa テクな話かな?と思った投稿・RTをゆるくまとめます。 ●9月 9/27 不要輻射の理由 https://twitter.com/me_toroa/status/157458130645300

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toroaまとめ(2022年10月~12月)

https://twitter.com/me_toroa テクな話かな?と思った投稿・RTをゆるくまとめます。 ●12月 12/29 電子ピアノの基板 https://twitter.com/me_toroa/status/16083264873

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回路図流用の注意点(のひとつ)

回路図流用の注意点(のひとつ)

「ただコピペをするんじゃない、自分が設計したものとして理解しろ!」

これは新人の回路設計者が、一番最初に言われることだと思います。既存製品の回路図――つまり先輩の回路図を流用するには、データシートを読んで個々の部品を理解し、これから自分が作成する回路図に流用しても問題ないか、ディレーティング検証や結合チェックをおこないます。

ここでひとつ注意ですが、データシートは更新されるもの、です。
先輩が

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EMI-輻射ノイズの考え方

EMI-輻射ノイズの考え方

EMI測定時、電波暗室内の測定環境はしっかりしたもので、DUTのどこから輻射ノイズが発生しているかはっきり示してくれます。
そして測定結果が悪かった場合(VCCIなどの規格に通らなかった場合)、何らかの対策をおこないます。
定番としてはフェライトコアなどのノイズフィルタ、ガスケットや銅箔テープでのGND強化でしょうか。ここで苦労するのは「モグラたたき」と言われるような、輻射ノイズの周波数が変わって

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HDMIコネクターのGND端子を考える

HDMIコネクターのGND端子を考える

基板設計の配線にまつわる話です。
HDMIコネクターのGND端子ってすこし不思議じゃありませんか?

フットプリントを見ると普通のコネクターですが、

ピンアサインで見るとこんな感じになっています。

差動信号のP/NのあいだにGND端子がいます。
差動信号のパターン配線は並走させるものですよね。
P/Nを差動インピーダンス100Ω(←HDMI)で電磁界結合させ、互いがリターン経路になり、同相ノイ

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E=IR

E=IR

E=IR。電気回路の公式で一番目に覚える原理、オームの法則は大変に奥深いです。たとえば製品開発では消費電力を下げたい。となるとRは物性値で固定なのでEを下げるかIを下げるかとなりますね。
Eを固定とするならIを下げるしかない。あるいはスイッチングレギュレーターを使ってEを降下できるのなら、Iを増やすことができる。
FPGAのコア電圧はこのような感じで、0.9Vや0.85Vにすることで10Aの電流を

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USB TYPE-Cがちょっと好きな話

USB TYPE-Cがちょっと好きな話

USB TYPE-Cは両面挿しができて便利ですね。
基板設計の視点でこれのちょっと好きなところを解説します。
題材はこれ、日本航空電子工業さんのTYPE-Cコネクター。
A列は面実装の端子、B列は挿入実装の端子となっています。部品実装は大変ですが、両列が面実装のタイプよりもこじりに強い。

さて、両面挿し可能というのは。
DP1=DP2、DN1=DN2にしておけば、どちら向きでケーブルが挿さっても

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45度での部品配置

45度での部品配置

以前X(ツイッター)で投稿した内容ですがnoteでサルベージします。
基板設計にて45度で部品配置をするのは意味があります。

QFPやQFNを45度で配置するのは、一見幅を取るように見えて、実は同方向の配線を省スペースでおこなえるからです。

Raspberry Pi 5でもこの工夫がされていました。

Ethernet PHY(BCM54213PE)を45度で配置しているのは、PHY配線のし易

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表面実装部品のスタブについて

表面実装部品のスタブについて

ちょっとマニアックに、表面実装部品のスタブについて紹介します。
題材はQSFP28コネクターでこんな断面、

見るべきポイントは端子の基板接触部です。

推奨パッドサイズを見ると、1.8mmとちょっと長めですね。

このとき、配線の引き出し方向次第で端子がスタブになります。

バックフィレット側から配線を引き出すと良くないということですね。QSFP28でそんな配線はしないよ、と思われるかもしれませ

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基板設計CADについて

基板設計CADについて

基板設計CADに常々必要だなと思っていることをまとめます。

思いのままに操作できること道具として、箸を使うようにCADを使わないといけません。
それには操作方法の習得やCADシステムの理解、業務内容の把握、専門知識の習得などが基礎として求められます。

また、道具に意思はありません。
使う人が何事かしたいときに具現化してくれるものであって、「CADが最新だから誰でも上手い設計ができる」はあり得な

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SI視点でのDDR1&DDR4比較

SI視点でのDDR1&DDR4比較

SI(Signal Integrity)視点でDDR1とDDR4のIBISモデルを比較します。
DDR1の登場が2000年、DDR4の登場が2014年です。その14年でDDRメモリーがどう進化し、SIが向上したかを読み解きます。

IBISの記述から信号波形を推測した過去の投稿「DDR4をSI解析する前に」を合わせてご覧ください。

この記事で扱うIBISモデルは下記のとおりです。
(マイクロンさ

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byte lane(バイトレーン)

byte lane(バイトレーン)

複数の信号を同期させるパラレル伝送において、デジタル信号の1bit(ビット)をある情報の単位に束ねたものが1byte(バイト)である。
たとえばDDRメモリーでは、1bit x 8 = 1byteとなる。

基板設計において、高速パラレル伝送では特に等遅延で配線することが重要になる。1bitの論理値である0/1は、信号電圧のlow/highになる。また、配線1mmあたりの伝搬遅延は約6psである。

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基板設計物語(上巻)

基板設計物語(上巻)


<プロローグ>
「センスが無ければ辞めた方がいいよ」

新山明(にいやまあきら)が配属後に主任から掛けられた言葉は厳しいものだった。思えば就職活動からすでに大変だった。
工業大学に在学しているのだから、進路希望はメーカーに決まっている。
なのに明が在学する地方の大学に回ってくる求人票は、辛うじて親会社のメーカー名が分かる程度の子会社ばかりだった。

「応募理由は?」「どんなことを実現したいですか

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部品配置のポイント

部品配置のポイント

「部品配置の手順」の続編です。

部品配置は基板の品質をおもいっきり左右します。
適当に配置→無理な配線→実装後にデバッグの嵐、は避けたいところ。
このページでは一発完全動作を目標にポイントを紹介します。

(1)その基板の使われ方を知る

基板は単体では機能しません。
何かしらの入出力があって、基板内で信号を処理することが目的です。
考慮するべき点として以下が挙げられます。
・環境(振動、熱、E

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部品配置の手順

部品配置の手順

基板設計の順序として部品配置→配線はよく知られることですが、部品配置自体の手順はあまり知られていないように思います。
その基本を紹介します。

(1)回路ブロックをまとめる

CAD上、基板領域の外で回路ブロックをまとめます。具体的にはリファレンス回路、または推奨レイアウトをデータシートで確認します。
たとえば下図の推奨レイアウトではチップ部品を近接配置する必要があるとわかります。その意味を考えな

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