【美術館やアートの楽しみ方】 #02 絵の技術よりも歴史を楽しもう (2018フェルメール展より)
今回は、美術館で美術作品を鑑賞するときの楽しみ方として、絵の技術よりも「その絵に描かれている歴史や文化を学べることに楽しもう」についてまとめてみました。
題材にしたのは2018年に東京で催された『フェルメール展』(上野の森美術館 2018年10月5日~2019年2月3日)です。
1、まずフェルメール展(2019)の紹介
フェルメールという17世紀を代表するオランダ画家がいる。
「光の魔術師」と称され、ミステリアスで緊張感ある空間構成と光の粒子までも描くような独特の質感を特徴とし、日本人にも大変人気がある。
2018年の東京上野のフェルメール展には現存するたった全35作品のうち、日本では過去最大となる9作品もが同時期来日。
今回はその9点の中から『手紙を書く婦人と召使』という作品に着目する。こういう作品です。
引用元:美術展オフィシャルサイト
https://www.vermeer.jp/pictures/
この作品は1672年頃に描かれた作品。
フェルメールは1675年に若くして43歳で亡くなるため、つまりその3年前、フェルメールにとっては晩年の作にあたる。
フェルメールの代表作の多くは主に30代に描かれており、たとえば最も有名な『青いターバンの少女』(1665年)が33歳頃の作品。(ヘッダー画像の作品)
2、「手紙を書く」はいつから始まった?
この『手紙を書く婦人と召使』も、フェルメールの他作品同様、宗教画のような品位と清潔感を帯び、澄んだ空気を感じとれる美しい作品だ。
絵の主人公である婦人は、手紙を書いている。
フェルメールは、“市民たちのごくありふれた生活の断面を描いた画家”とよく評される。
彼の作品群には、この他にもいくつかの“手紙を書くシーン”を切りとった作品が散見される。
つまりそれは、“手紙を書く”という行為が、17世紀オランダ市民のあいだでは「日常的に習慣化しはじめた」という歴史の変化点がこの作品に描かれているということができる。
「手紙」は、いつから書かれるようになっただろう。
貴族や将軍たちの間ではもっとずっと昔から活用されてきたのだろうが、それが“一般市民でも”書かれるようになったのは、この17世紀オランダが歴史的にも早いようだ。
郵便制度のインフラ整備が必要で、金も人もかかるが、この頃のアムステルダムは世界有数の海運都市でオランダ(ネーデルラント)は急速な発展をしていた。
3、絵画作品から歴史を体感する楽しみ
美術展というのは、「絵の美しさを楽しむための場所」のように思われがちだが、その絵が描かれた「時代の文化や風俗を体感できる楽しみ」も大きい。
正直、「美しさの要因」を技術的に理解するには専門性やセンスも必要でなかなか難しいことのため、普段通っていない人がめずらしく美術展にいくと「うーん、よくわからないなぁ」となってしまうのだが、それよりも「歴史を体感する楽しみ」のほうを意識したほうが美術展は楽しめるはずである。
その絵は西暦何年に誰によってどの場所で描かれたのか。その時代のその国はどういう状況だったか。そのとき画家はなぜそこにいて、それを描いたか。
「絵の中で彼女は手紙を書いているが、はたして人類はいつから手紙を書くようになったのだろう」
そう想いを馳せるのも、美術展の楽しみのひとつなのである。
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