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「メルペイ」のビジネス的な特徴をまとめておく 【マーケティング戦略の観察】

ここ数年で次々「スマホ決済サービス」が登場しているが、2019年2月、いつ始まるかと注目だった「メルペイ」がついにサービス開始した。
このメルペイ、他のスマホ決済と比べてビジネスのモデルが個性的なところがあるので、そのポイントをまとめておく。

◆「メルペイ」の背景と強み

【ここまでのメルペイの時系列】
・2017年12月「メルペイ」設立
・2018年2月 メルカリからメルペイへ売上金とポイントを移管
・2018年3月 資金移動業者の登録
・2019年2月13日 「メルペイ」決済サービス開始(電子マネー「iD」との連携開始)
・2019年2月19日 説明会「MERPAY CONFERENCE 2019」開催
・2019年3月中旬 QRコード決済サービス開始予定

【メルペイの基本的な特徴と強み】
・親会社メルカリがCtoCの中古品売買を本業にしているため、すでに既存サービスに“お金のやりとりをする文化”が形成されている。
・ユーザー=アプリダウンロード済み
既存のメルカリアプリ内にメルペイの決済機能を実装。別のアプリはいらないのでシームレス。
・もともとのメルカリ売買において約4000億円のポイントが留保。

「メルペイ」とは、メルカリをベースにした決済サービス。
メルカリ内で蓄積・流通されてきた4000億円ものポイントを、メルカリの外の世界に出して、どう実店舗消費行動などと紐づけるかが注目点。

ユーザー側はメルカリで貯めたお金をいろんな場所で使えると便利になるし、メルペイ事業者側はその際に決済手数料で収益モデルを描く。

◆ポイント発行量の多さ

メルペイの基盤にもなっている「メルカリ」のポイント発行量は、他社を上回る規模を誇る。
まずこれがメルペイが注目される大きな理由のひとつだ。

メルカリと他事業者では、ポイントを貯める概念が異なる。

他のポイント事業者は、
“本業の商品”を買ってもらった金額のうち数%を、“特典サービス”としてポイント付与するものだから、仮に年間1兆円のEC流通額とした場合、出回るポイント発行量は付与率1%だと年間100億円。

メルカリの場合は、
CtoC中古品売買サービスのため“ユーザー自身がこの市場では売り主”なので、年間EC流通総額がすなわち“ユーザー自身の売上金”にあたる
メルカリではこの売上金を“ポイントに等価交換して保持”してもらうため、ざっくりいうと『年間EC流通総額=ポイント発行量』となる。

メルカリにとってのポイントは貨幣のようなものなので、他よりもポイント発行量が増えやすいビジネスモデルといえる。

流通小売側も、この大きな年間4000億円ものポイントの使い道が、メルペイを導入するかしないかで店に落ちてくるかが変わってくるとなると、他社が導入したならうちもやらないとという心理状態になりそうだ。
ポイント発行量とはそういう強さがある。

◆パートナリングのうまさ

メルペイには“2つの決済機能”があるのでこれは分けて考えた方がわかりやすい。
1つ目はローンチ済みの「非接触型決済」で、2つ目が3月開始予定の「QRコード決済」だ。

まず「非接触決済」について。

普通、新たな決済方法を店舗導入しようとすると、レジに専用の読み取り機能をセッティングしたり、レジの横に独立した読み取り機を準備したり、相当の導入コストがかかる

導入のためには、それを小売企業に1社1社くどいていかないとならない。
このため「営業力」も、決済導入企業の差別化のひとつであった。プラットフォーマーは、本業で全国に根を張ってる営業網を駆使して、いかに自社の決済方法を広く普及させるかが勝負所。

しかし「メルペイ」はこれを真正面からはやらず、既存サービスの「i D」に乗っかる方法を採用した。
記事から引用する。

サービス基盤に全国約90万店で使えるNTTドコモの非接触決済iDを採用。アップルペイにメルペイ登録するとiDと連動しスマホをかざすだけで買い物ができる。既存サービス活用したため当初から幅広い店舗で使えるのが特徴

次に、「QRコード決済」について。

こちらもパートナリング戦略で、JCBとKDDIとの提携を発表した

QRコード決済については、JCBとKDDIと提携発表。
JCBは同日バーコード決済「Smart Code」を発表。
メルペイはこれに参画し JCBが既に持つクレカの契約網を活用し開拓するSmartCode加盟店でメルペイ利用を可能とする。
また、KDDIとは営業面での提携を発表。
KDDIは「au PAY」として4月に独自のコード決済をリリースする旨を明らかにしているが、KDDIとメルペイが今後中小規模加盟店に営業をかける際はauPAYとメルペイの両サービスを提案していく。
メルペイとして加盟店拡大のネックはやはり物理的な営業力だ。

メルカリ本体自身がまだ1000人規模の会社だ。
万人規模のプラットフォーマーたちと真正面からぶつからないのは当然の方針だ。

◆稼ぐべき収益規模について。

「決済手数料は永年1.5%」も発表された。

これは、決済手数料について「数年間無料」とうたっている企業に比べて“安心感”を打ち出す方策だ。もしかしたら3年後に5%かもしれない不安を打ち消している。

ただ、前述したパートナリング戦略にしても、きっと自社での自走に比べると、提携する「i D」や「JCBの新たなQRコード決済」が無料で貸してくれるわけはないので、コストはかさむのだろうと推察できる。取り分が少なくなる、というべきか。

それに、この「決済手数料1.5%」も、従来の標準的手数料からすると低い設定だ。

これらの戦略の選択はひとえに、「メルカリ」「メルペイ」が、失うものを持たないチャレンジャーだからとれる戦略だなと感じとれる。

プラットフォーマーたちのように既存の事業が大きすぎると、あまり新規で小さなビジネスをつくってもやる意義がでてこないので、目標感がどうしても身の丈以上に高くなりがちに思える。

それに比べると「メルカリ」「メルペイ」はまだむやみに稼ぐことはないし、まずは“ユーザーの利便性を第一”に、プラットフォーマーのあいだをかいくぐり“一定の市場の獲得”をしていけるだけでも大健闘なのである。

プラットフォーマーたちからすると、戦いにくい相手が参入したことになる。

コツコツ書き続けるので、サポートいただけたらがんばれます。