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百合のような、幻想美の、あの子の灰色(日記16)

泉鏡花は幻想美の世界を築いたそうだけど、あなたにとっての幻想美とはなんですか?

って

自分に聞いてみたとき、多分真っ先に思い浮かべるのは彼女のこと。誕生日に手紙とプレゼントを発送し合う彼女のこと。
この先にいるのは誰なんだろうとふと思いながら、それでも手紙を書き続けている時間は中学を卒業して別々の高校へ入学したあの時からもう始まっていて、最近東京に帰省したときに会ってそのことを伝えた。

自分が書いている相手は中学時代の彼女でもなく、中学時代一緒に過ごした彼女をさらに、もっと、しばらく会わないうちに自分の中で偶像化した姿の彼女なのかもしれなくて、だから書きながらこの先にいるのは誰なんだろうって、いつも分からなくなりながら書いているって。

おそるおそるそう伝えたら、彼女はすぐに
「でも手紙が届いたとき嬉しかったよ」
と穏やかに言った。

彼女は穏やかな波なのだと思う。
わたしの心は泡立って、「ならよかった」と返した。

変わらないままだ。変わらないまま苦しい。
私にも彼女にも大好きな彼氏がいるけれど、矛盾しているけれど彼女が彼女だからこそなくならない気持ちがある。

でも逆にどんどん忘れていく。
中学生のあの頃、
彼女と始発の電車の音が聴こえてきて笑ってしまったほど、夜通し話したことの内容はさっぱり覚えていない。覚えていないけど、大切なことを話していたんだと思う。
その大切なことは忘れてしまったけど、何かすごく大切なことを話していた気がする。

こうやって幻想美が生み出されていく。

中学時代、あの少ない語彙力で綴られた手紙が好きだった。
きっと今はお互いに色んなことを知りすぎていると思う。
でも手紙を送り合う。彼女とどこかで繋がっていたいと思う。

こうやって、幻想美が生み出されていく。