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夫とアイツは共演NG

正月貧乏なので実家からもらった白菜と大根で生きている我が家。
暇すぎてkindleを開くとなんと素敵なことにオレンジページが白菜と大根の特集であった。新年早々ツイている。さっそくそのレシピで晩御飯を作ることにした。
しかし、正月三連休で尻は鉛のように重い。重いと言えば立ちたくない→立ちたくないと言えば夫、なので引き戸一枚挟んだ夫の部屋に声をかける。
「ねえ、大根切って」
「なに?」
「だーーーいこんきってえええ!!!!」
「大根?なに?どんな風に?」
「四角」
「し、四角…!?」
「真四角。正方形」
「っせ、正方形?」続けて夫が言う
「え…大根を正方形?え…どうやって?」
この質問の意味が最初はわからなかったが、よく聞いてみると
〇→□□□…→端っこどうなる?端っこどうやって四角にする?というのが夫はわからなかったらしい。わたしが鬼嫁であるが故、ひとつでも四角じゃないものがあれば「これがおめえには四角に見えるのか?」とゴン責めされるとでも思ったのだろう。
仕方ないので大根は私が切り、夫には助手をしてもらうことにした。夫にレシピを渡し、台所へ向かう。
大根を切る。全然正方形じゃないがここ(台所)の主導権は私が握っているので問題はない。夫に次どうするのか聞く。「大根をレンジでチンするらしい。その間に俺は水溶き片栗粉を作るね!」なんだか張り切っているのでレシピは夫に委ねることにした。水溶き片栗粉を小さいスプーンで念入りに混ぜている。それ以上混ぜてもなんにもならないよと言いたかったがグッとこらえた。彼のやる気を奪ってはならない。わたしはフライパンに火をつける。レンジがチンっといって夫があちあち言いながら大根を取り出す。わたしはひき肉を炒めたり調味料を入れたりしていた。あつあつの大根から湯気がもくもく上がっている。
「これを、こうか」夫が熱々の大根にさっき念入りに混ぜていた水溶き片栗粉をぶっかけた。
「え?」
目に入ったのはでろんでろんのわらび餅のような物体に包まれた角切りの大根だった。それを真剣に混ぜる夫。混ぜても混ぜてもわらび餅がまとわりついた大根だ。
「え!?うそやん!そんな風にしろって書いてあった?!」と夫に聞く。
「うん。そう書いてあった」と言い張る夫にもう一回レシピを見てと言うと
「あ、大根が冷めたら水溶き片栗粉を入れます、だった」という事実が発覚した。あまりに真剣な夫の横顔にオレンジページが今までの常識を覆すレシピを考案してきたのかと思った自分が恥ずかしい。
夫は片栗粉が熱で固まるということを知らなかったらしい。
「あーーあーわらび餅みたいになってしもたやん」とわたしがあきれながらいうと夫は「なるほど。わらび餅ってこうやって作るんだ」と間違った知識を身につけようとしていた。普段からわたしの言うことを絶対に受け入れる癖がついているので、夫の素直さは危険を隣り合わせだ。
とりあえずわらび餅はこうやって作らない、とだけ説明する。ここからはわたしの腕の見せ所である。オレンジページには申し訳ないが、わらび餅が入ってしまったことにより、オリジナルの料理にするほかならないのである。
夫はというと「水溶き片栗粉が足りない」とまた水溶き片栗粉を作り出した。初回より念入りに混ぜていて使わないと忍びないので一応使う。ちゃんとトロミも付き、どうにかこうにか出来上がり、気づけばわらび餅もどうにかこうにか味に溶け込んでいた。
そんな昨日のわらび餅パニックを思い出しながら、一人で晩御飯の中華丼を作る。夫は仕事なのでいない。安心だ。さて仕上げに水溶き片栗粉でトロミをつけよう、と片栗粉を出したら全然足りずシャバシャバの中華丼が完成した。
夫にLINEする。「片栗粉買って来て」そう送ったあと「わたしバイト行くから、自分で片栗粉でトロミつけてね」と送りそうになったがやめた。
夫と片栗粉は共演NGなのである。

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