赤い部屋
江戸川乱歩『赤い部屋』
小学三年のある時期、私は江戸川乱歩の少年探偵シリーズにはまりました。
小学校の図書室にずらりと並んだ本を、初めは二日に一冊、まもなく一日一冊のペースで借り出し、がつがつと端から読みこみました。
私が本に夢中になった最初でした。
その後、中学一年の一時(いっとき)も、角川文庫で乱歩を読むのに夢中になりました。
少年探偵シリーズと違い、こちらは子ども向けに手を入れていないものでした。
表紙は高橋葉介でした。
いずれも、やることがなく暇をもて余していた時期の出来事でした。
私自身の読書体験はそれでよかったのですけれど、母親となった時、自分の趣味を息子に押し付けてしまうようなことがあったら嫌だなぁと思いました。
子ども向けでも乱歩は乱歩ですし。
そこで、児童文学の名作といわれるものを読んでみようと思い付きました。
青い鳥、秘密の花園、小公女、点子ちゃんとアントン、トムは真夜中の庭で、モモ、etc.
なるほど、こういったものを読んでいたら、私は今とは違った大人であり人間であったのかもしれないと、そうなり得た私に淡い憧れを抱きました。
恋をした自分に酔うように、私は母親になった自分に酔っていました。
その夢中を母性と呼ぶことを私は自重いたしました。
しかし恋と呼ぶことには躊躇いたしませんでした。
夢中の最中(さなか)でいつかは覚めることと自覚し、 だからこそ貪り尽くそうとしました。
私の恋ではいつものことです。
数年のち息子への恋は覚めました。
後悔はありませんでした。
これもいつものことでした。
私はまた暇になりました。
その頃なんとなく『赤い部屋』を手に取り読みました。
そして今一度、私は乱歩で良かったのだと思い至ったのです。
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「フリーメゾン」という赤い部屋で
findomに出会いました。
(ヘッダーはフリーメゾン店内です。)