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スピッツ「ハチミツ」 素敵な恋人ハチミツ溶かしてゆく

1995年9月発売のアルバム「ハチミツ」の表題曲で、アルバム1曲目の「ハチミツ」。

95年かあ。入社1年目だな。世界が変わった。人生のすべてが仕事になって、全部をささげていて音楽を聴く余裕は失われていた。この時期はスピッツのニューアルバムなんて、目に入らなかった。余裕がなかった。楽しかったような、しんどかったような・・・。

このアルバムを真剣に聴いたのは、ずいぶん後のこと。2010年代に入ってから。もちろん、知ってはいたし、ちらっと聴いていたけど、入ってこなかった。仕事にかまけて、スピッツから離れていた時期。

「ハチミツ」という曲は、ほかのどんな曲にも似ていないイメージで、「こんな曲、初めて」という感覚を抱いたことを覚えている。ロックっぽくなくて、音程は上に行ったり、下に行ったりして忙しいんだけど、聴いているだけで楽しくなる。歌うととっても難しい。

大切な恋人を得られた喜びのようなものを、こんな風に表現しているのかしら?
「ハチミツ溶かしていく」あたりは心がやわらかくなっていくイメージでもあり、性的なイメージも包含していて、きれいの中にエロを差し込んでくる草野さんの真骨頂のような表現だね。

「蝶々結びをほどくように」も、とっても好きだけど迷っている瞬間から、ある一方に一気に傾く瞬間をイメージしているような表現かしら。「蝶々結び」って、しっかりと結ばれていると、最初は少しだけ力がいるけど、ある程度、力を入れちゃうと、あとは力なくスルリと、ほどけていくよね。あの感じ。人の感情もスルリと変わっていく瞬間がある。

あとね。
好きなのは、曲の一番最初のフレーズ。

「一人むなしく ビスケットの しけってる 日々を経て」

この自虐。いい!これこそ、スピッツ。
自信満々な瞬間が全然ないんですよ。いつも、おどおどしてたり、自信なさげだったり。

この経験があるからこそのハチミツなんだよね。
「素敵な恋人」が際立つんだよね。

とても好きな曲です。
この曲が自分に響かなかった1995年。忙しすぎて、自分もおかしかったんだろうな。

2022年7月31日 トラジロウ

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