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【寓話】

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記事一覧

【寓話】偏見について

昔あるところに一人の浮世絵師がいた。彼は噂に聞いた象を実物を見たことがないまま想像で描いた。
そしてそれを自信を持って外国人に見せると鼻で笑われた。
「象はこんな生き物じゃないよ。」

彼は悔しかったが象を見ることができなかったので、代わりに身近にいる犬や猫、馬を観察して象の絵を描き直した。
そしてそれを再び外国人に見せると、その外国人は彼の描写のリアルさには感心したが、再び同じことを言った。

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【寓話】水汲みの話

あるところに村があった。

その村には水道がなく、子どもたちが遠くの川まで毎日水を汲みに行っていた。

その村には、Aくん、Bくん、Cくんという3人の子どもがいた。

Aくんの家には大きなバケツがあり、Bくんの家には中ぐらいのバケツがあり、Cくんの家には小さなバケツしかなかった。

あるとき、その村の長老が子どもたちに尋ねた。

「君たちの中で一番たくさん水を汲んでいるのは誰か

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【寓話】名選手、名監督ならず。

あるところにとても背の高い少年がいた。

彼は運動神経もわりと良かった。

彼は学生時代バスケットボール部に加入し、全国的な選手として活躍した。

その後、プロの世界に入り、大変な成績を残して引退した。

さらにその後、彼は最後に所属していたプロのバスケットボールチームに監督としてスカウトされたが、監督としてはろくな成績が残せなかった。

そのことに腹を立てたチームのオーナーは

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【寓話】アリとキリギリス

あるところにアリとキリギリスがいた。

アリたちは畑を耕し、林檎の種を蒔き、水をやって林檎の木を育てていた。

それに対して、キリギリスは働こうともしないで、歌って遊んで暮らしていた。

その後、何年かして、ようやく林檎がまともに実を結ぶようになってきた。

さて、その年の収穫時期になり、アリたちがたくさん実った林檎を収穫するための準備をしていると、突然、キリギリスがやって来て、こ

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【寓話】幸福と不幸と普通

ある小学校に、Aくん、Bくんという二人の男の子がいた。

その小学校では毎日お昼に給食が出ていた。

Aくんは給食が大嫌いで、「毎日、こんなまずいものを食べなければならないなんて、僕はなんて不幸なんだろう」と言っていた。

Bくんは給食が大好きで、「毎日、こんなうまいものを食べられるなんて、僕はなんて幸福なんだろう」と言っていた。

ある日、BくんがAくんの家に遊びに行った。

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【寓話】僕の方が我慢強いよ。

あるところに、Aさん、Bさんという二人の人がいた。

あるとき、二人は同じように虫歯になった。

Aさんは虫歯の痛みに耐えられず、急いで歯医者に行き、治療を受けた。

それに対し、Bさんは歯医者に行きたくないので、虫歯の痛みにこらえていた。

その後のある日、AさんとBさんがたまたま出会った。

それから虫歯の話になり、BさんがAさんに言った。

「Aさんは虫歯になったとき

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【寓話】僕はハンバーグとプリンしか食べません。

あるところに一人の男の子がいた。

その男の子は大の食わず嫌いで小さい頃からハンバーグやプリンのようなものしか食べなかった。

それで両親や先生などいろんな人が彼にそれ以外のものも食べるように勧めた。

「どうしてあなたはハンバーグとプリンしか食べないの。ほかのものも食べたほうがよいわよ。」

しかし、彼は頑として聞きいれなかった。

それどころか、そういった大人たちの助言をう

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【寓話】私はいつも一所懸命頑張っています。

ある会社にAさんという人がいた。

ある日、Aさんがこう言った。

「私はいつも一所懸命頑張っています。」

するとそれを聞いた同僚の人たちはみな頷いて感心した。

何故なら、Aさんが仕事を一所懸命に頑張っていることを全員がよく知っていたからである。

しかし、その同僚の中でBさんという人がいて、ひとり浮かない顔をしていた。

そのことに気がついたCさんがBさんに尋ねた。

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【寓話】自粛します。

あるところにひとりの勉強嫌いの男の子がいた。

ある日、彼がお母さんに言った。

「お母さん。僕、勉強するのが嫌だから、もう勉強しないことにしたよ。」

すると、お母さんが言った。

「あら、そんなことでいいと思っているの?」

すると、男の子は言った。

「うん。僕もよくないと思っているよ。だから、その代わり、当分の間、テレビゲームをするのと漫画を読むのを自粛することにし

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【寓話】リアリティとは何か

あるとき、密室殺人事件が発生した。警察が取り調べたが皆目見当がつかなかった。そのとき、私立探偵のA氏が現場にやってきて、自分の推理を述べ立てた。すると、その推理があまりに詳細かつ具体的なので、警察関係者たちは大いに感心し、さっそくその方向で犯人を捜そうということになった。
しかし、数日後、ひょんなことから犯人が捕まり、取り調べてみると、事件の実態はA氏が推理した内容とは何の関係もなかった。
結局、

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【寓話】理論と実践の違いについて

あるところに学校がありました。

ある日、先生が学生たちに尋ねました。

「テストで100点を取るのと、0点を取るのはどちらが簡単だろうか。」

すると、学生たちは答えた。

「先生、0点を取る方が簡単です。」

「どうしてかね。」

「だって、試験を白紙で出したら0点ですからね。」

すると先生は答えた。

「じゃあ、明日の進級テストで0点を取ってみてください。」

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【寓話】誰が天国に行くのか

昔、あるところにA国、B国という二つの国があった。

A国ではα教が国教とされ、B国ではβ教が国教とされていた。

ある日、A国がB国に攻め込んできて、その軍隊を滅ぼしてしまった。

そして、A国の軍隊がB国に駐留すると、B国の住民たちにα教への改宗を強要して回った。

各隊長が一軒一軒の家庭を回り、「α教に改宗しなければ、刀で皆殺しにする」と脅して歩いた。

さて、そのうちB

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【寓話】六つの国々

あるところに6つの国がありました。

それぞれの国では、それぞれ一種類の異なる花しか咲きませんでした。

ある日、それらの国々の人たちが集まって会議が開かれました。

で、会議の途中で花の話題になりました。

すると、それぞれの国の代表の人たちは花の定義について話し始め、やがてもめました。

ある人は、花とは白いものだと言い、

別の人は、花とは赤くひらひらとした花びらがつ

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【寓話】蓼食う虫も食わぬもの

昔々、中近東のある地方に旧家があった。

その家には、太古の昔から、世の神秘を記した宗教書が伝わっていた。

その家の主である男はしばしばその神聖なる書を取り出しては熱心に研究していた。

その男は、その本の文章を読むことが出来たが、その内容は極端に難しく、何が書いてあるのかさっぱり分からなかった。

しかし、その男はいずれその真意を理解しようと、日夜解読の研究を続けていた。

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