【寓話】アリとキリギリス

あるところにアリとキリギリスがいた。

アリたちは畑を耕し、林檎の種を蒔き、水をやって林檎の木を育てていた。

それに対して、キリギリスは働こうともしないで、歌って遊んで暮らしていた。

その後、何年かして、ようやく林檎がまともに実を結ぶようになってきた。

さて、その年の収穫時期になり、アリたちがたくさん実った林檎を収穫するための準備をしていると、突然、キリギリスがやって来て、こう言った。

「ねえ、アリさんたち。僕も君たちの畑で働いてみたいから、収穫作業を手伝わせてくれないか。」

それを聞いたアリたちは当然のように断った。

「これまで何もしてこなかった君が収穫のときだけやってきて『手伝うから収穫物をよこせ』と言うのはあまりにもずうずうしいんじゃないかな。」

すると、キリギリスは説明を付け加えていった。

「いや、林檎はいらないんだ。収穫作業を手伝えるだけでいいんだよ。僕も少しぐらいはまじめに働いてみたいのさ。」

そこで、アリたちはキリギリスにも収穫作業を手伝ってもらうことにした。

ところが、翌朝、アリたちが林檎畑に行ってみると、畑の木にはひとつの林檎も残っていなかった。

驚いて、畑の脇を見てみると、林檎が山のように積まれており、その横ではキリギリスが一休みしていた。

「やあ、アリさんたち、おはよう。林檎の収穫作業は僕が全部やっておいたから、こいつらを全部持っていってくれないか。もちろん、約束どおり報酬はいらないよ。いやあ、それにしても働くって気持ちがいいもんだね。」

すると、アリたちはキリギリスに言った。

「収穫物は相応に分けてやるから、君が味わった『達成感』を返してくれないか。それは僕たちが味わうはずだったんだから。」

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