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『ナボコフ全短篇』を読む日記2022.03.08(46/68篇)

「シガーエフを追悼して」(1934年)「動かぬ煙」(1935年)を読む。

「シガーエフを追悼して」は、語り手である「私」の友人であるシガーエフへの追悼文、かと思いきや「私」とシガーエフとの仲が語られるという内容である。「私」は恋仲のドイツ人に浮気され、絶望しているところにシガーエフに助けてもらった。シガーエフについての細部——たとえばユーモアのなさとか話がつまらないこととか自分の周囲をかりそめの約束事とする捉え方とか――は、きっと世界を立ち上げるために必要なことなのだろうけれど、今の自分にはそれを楽しむ余裕がなくて、それが残念だった。

「動かぬ煙」は、母が死に、姉と父が喧嘩している家で「彼」が姉に頼まれて父の煙草をもらいに行く話。発表当時にはもういなくなっていた亡命口シア人を描いたものだそうである。でも、この「彼」の部屋に閉じこもる感じとか、妄想とか想像とか幻想に囚われている様子、鬱屈した感じ、小説が並べられている様子なんてのは近代以降いつどこでも見られるものだったんじゃないかと思う。

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