Uber Eats配達員に「パンツ見せて」とお願いするイラストをSNS上で宣伝すること

前回の記事は大勢の方にお読みいただき、驚いている。

ありがとうございます。拙い記事ながら、書いたことの役割を静かに噛み締めている。

さて、件の『土下座で頼んでみた』であるが、AT-Xというスカパー!系列の、視聴制限付きのチャンネルで放送されているそうなので、それは素直に良かったと思う。

”ワンランク上”の作品として、類似作品も多い専門チャンネルで放送されているのは、とりあえずほっとしている。

性暴力の要素が見受けられる作品を放送及び制作することが、スカパージャストホールディングスの”未知を価値に”つながるのだとしたら、それでいいのである。

性暴力を目的としない作品でも、どうしても性暴力描写が物語上必要になる場合、描くことを規制すべきでない、という意味で私が表現規制に反対したのとは、AT-Xのアニメのラインナップは、全く意図が違う作品が何作も散見するようにも感じるが……。

それにしても。

原作者のTwitter上での、新刊宣伝ツイートはどうにかならないものか、と思っている。

『土下座で頼んでみた』を、SNS上で誰でもアクセスすればみれる形で発表しないでいただけると大変うれしい。

なぜなら、性暴力を行う範囲を、ウーバーイーツ(Uber Eats)や図書館司書にまで広げているからだ。(Uber Eatsの場合、一文字○を置いたりなどの著作権に交わらないように、描いてはいるものの、誰にでもウーバーイーツだとわかるようになっている。上場企業に向けた名誉毀損にもなりかねない描き方なので、度胸があるとは思う。)

ウーバーイーツや、図書館司書などに、身体(パンツや胸など)を見せて、と要求するのは、あまりに失礼なのではないか?

前回も書いたが、「パンツ見せて」という発言行為そのものが、性暴力である。作者は、ウーバーイーツ(Uber Eats)配達員に「パンツ見せて」と言うことが、人権を侵害することを知らないのであろうか? たとえ、レーサーパンツを履いていようが、依頼人に「パンツ見せて」と発言を受けることがどれだけ怖いことか。大人なら容易に想像できるはずなのだが……。

しかも、彼らはコロナ禍で、健康被害に怯えながらも対面業務を支えてきた職種の人々である。

エッセンシャルワーカーを、性暴力の対象として描くことを、今この状況で楽しんでできる、という感覚がわからない。

さらにこれが空手を扱った作品『瞬きより疾く』と同じアイコンの、同じアカウント、つまり空手ファンの読者も読める状態で。(これについてツイッター上で作者は嫌な人は読まないで、という旨を書いているが、なぜユーザー側が見ないように努力しなくてはならないのだろう? そういったゾーニングは作者側が行うことでは?)

私は、柔道や空手が好きで(といっても見る専門だが)、柔道や空手が漫画化される、というのは喜びだ。

だが性暴力を肯定する作家が描くと、昨今の空手や柔道のセクハラ問題などが、一気に思い出してしまう。漫画を読めないだけでなく、空手や柔道を好む人は、性暴力も好むのかと勘ぐってしまう。そして、最も被害を受けるのは、空手そのものではないか?

別に、たった一人の私がそう思っているだけで、他の人は『土下座で頼んでみた』と『瞬きより疾く』を、一緒に読めるのかもしれないが……。

しかも、『瞬きより疾く』で水着で少女たちが遊ぶシーンを”サービス”として挿入する(作者のツイートにての発言)作者である。
明らかに、成人向けのエロコンテンツを好む読者と、空手が好きな読者の両方を取り込もうと意図しているのがわかる。果たして、少女たちの肉体が、空手を通して成人男性に消費される意図を持つ漫画を、子どもたちが読んでいいものなのだろうか?

作者は「エロを封印した」と発言しているようだが、封印などしていない。巧妙に”わかる人にはエロとして少女の肉体を視姦できる意図”を紛れ込ませた作品だ。
作者はエロ漫画を中心に活動していることで、性暴力とそれ以外の世界の線引きが出来なくなっているのではないか? 編集者がきちんと「こういう描写は入れてはいけない」と言う必要があるのだが、おそらく集英社側にも作者の漫画は成人向けとしか売れないだろうから、それ以外の販路に向けた指摘ができないのだろう。意図して行っていない可能性も高い。これについて、作者は「編集者からも指摘がなかったから大丈夫」などと発言しているが、「指摘がなかった」という発言は、意図して書いたという認識があったことの裏付けだ。
アマゾンレビューでは、作者を擁護するコメントが多々あるが、多くは男性のように見える。まるで作者を取り囲む信者のように、作品の性描写については、隠されてゆく。少女たちを「安全な作品」の中で性的な視線で消費する目的をもった作品とは、こうして世に出ていくものなのかもしれない。

作者はビーチバレーや新体操の女子選手たちが、「性的画像として写真をとらないで」と、発信をしていることを知らないのではないか? 勇気を出して、リスクを背負いながらも、スポーツの未来に向けて発言をしている選手たちを。
空手は関係ない、と思っているのかもしれないが、性的イラストとしての意図として、現実世界で存在はしないが少女たちを登場させるのは、正しいことなのだろうか? それが空手に励む少女たちに受け入れられると思っているのだろうか? 少女を性的に消費する要素も、少女を応援するためのストーリーにすれば両立する、と考えているのだろうか?
漫画だから何を書いても許される、現実との接続は全くないという認識は正しくはない。読むのは現実の世界にいる成人男性なのだ。
漫画はキャラクターを魅力的に描く必要のあるコンテンツだと思う。だとしたら、キャラクターの肉体を描くことは必然だ。しかし、もしセクシャルハラスメントを楽しむコンテンツ、つまり成人男性オンリーの作品でなければ、もし多少なりとも空手を楽しむ女性を読者に選ぶ目的があるのなら、キャラクターの肉体を、最低限の礼儀として、読者として届けたい層の心が傷つかないように描くべきではないか?

ビーチバレーや新体操に続き、空手までもが性的な視線で楽しむことを正しいこととして表出されることが、女性選手にとってプレーしやすい環境とは思えない。

学校の教師や、身近な親、知り合いのお兄さん……性暴力と言うのは、身近な人物が行い、その人物は隠すのがうまいので、被害者は心をえぐられるような痛みに耐えながらも、「あれは性暴力とは呼ばなかったのかもしれない、指導だったのかもしれない」という思いで蓋をする。
その蓋が空いた時の、苦しみは想像を絶するものであるのだが。
まさに、『瞬きより疾く』は、そういった要素を孕むものだ。少女たちの肉体を性的な視点で消費することを、スポーツ青春作品漫画として、肯定する作品なのだから。

なのでもし性暴力要素のない、小児愛性のない、空手についての漫画を純粋に求める人は、『瞬きより疾く』はあまりおすすめできない。特に初版の第1巻は目を覆いたくなった。

作者にどんな漫画を書け、書くな、とお願いする気は全くない。それは作者の問題だから。そういう作者である、というだけである。

話を元に戻そう。

ツイートにいいねする人に考えていただきたい。

コロナ禍で、感染の恐怖と戦いながらも食事を配達してくれたウーバーイーツの配達員をモデルに、性暴力に該当する行為をお願いするイラストが誰にでも目につくツイート上にあることは正しいのだろうか?

飲食店に行けない中、感染への危険を感じながらも家に食事を宅配をしてくれた、ウーバーイーツ(Uber Eats)の方。

コロナで一時閉館を余儀なくされたものの、開館をして、不特定多数の利用者を迎えてくれ、中々高額な本が買えない学生の資料閲覧の場、親子で絵本を読む場、として場を整えてくれた図書館の司書。

そういった方を、鍵アカウントにもせずに、空手が好き、格闘技が好き、な人が目につく可能性のあるアカウントで、性暴力を受ける対象として宣伝のために掲載していいのか?

同人誌として、鍵アカウントで(または宣伝用にアカウントを変えて)、宣伝をする分であれば、表現の自由であるのだから、問題無い、と思うのだが。

空手が好きなので、どんな漫画家であっても空手を漫画として題材に使っていただき、新しい漫画作品が読めるのは、楽しい。

ただ、性暴力を肯定する作家が描く以上、今後読むことはないだろう。私の場合は。

また、作者はトップの固定ツイートとして

”今回エロがないからとめちゃくちゃ部数減らされました”

と、書いているが、エロが無いからという理由だけで減らされたのだろうか?

柔道や空手を題材にしてもヒットする作品はあると思うが。

集英社編集部はエロが無い作品は部数減らすのであろうか?

『少年ジャンプ』で連載終了した『鬼滅の刃』はエロが無くても売れたわけであり、過去『スラムダンク』など、スポーツものでエロがなく、女性の登場回数が少ない漫画で、それなりに売れた作品はあると思うのだが……。

『YAWARA!』も柔道漫画としてヒットしたはずだ。

『からん』も少女たちの複雑な内面と、その成長、さらに圧倒的な才能の可能性について描かれた、真摯なファンに支えられた素晴らしい作品であった。

豊かな物語、セクシャルな外見だけに頼らず、複雑な思春期の心のありようが描かれた魅力的なキャラクター、現実に裏打ちされた綿密な世界観……。そういった内容が描かれていれば、エロがなくてもヒットはするはずだ。

たとえ大きなヒットにはならなくても、強いメッセージがあれば、読者の心には深く残る。

『ヤングジャンプ』と『少年ジャンプ』は雑誌が違うのであるが、単行本にまで雑誌ブランドの効果が及ぶのであろうか? 

私の頭の中には、集英社=エロ(性暴力)作品は特別に部数多く刷る出版社、という認識はないのであるが、どこかで可変されているとしたら、残念でしかない。

最近の漫画は、表現規制反対の賛同者が多かった、という煽りを受け、性暴力の表現がかなり過激化した作品をゾーニング無しで売っている。これは、表現の自由を飛び越えて、女性の人権を見下し、茶化し、侵害を行っているように感じるのは私だけなのだろうか?

売れるから性暴力表現の強い漫画を刷る、というのが『少年ジャンプ』編集部以外の集英社のスタンスなのだろうか?

性暴力表現が売れるから、部数多く販売するスタンスを、これから集英社の漫画表現として求めていくのであれば、危険だと思う。

性暴力にあたる性行為を描くな、と言いたいのではない。ただ、そういった作品を描く場合、より堅固な社会性、正しい認識と、ゾーニングの仕方を身に着けてから、描いてほしいと思う。漫画家だから社会性に欠けていても仕方がない、という認識で描いてほしくはない。なぜなら、自分自身だけで読むのであれば、何を書いても考えても自由だと思うが、マーケットに並ぶ以上、社会は関わってくるからだ。

また、物語が何を目的としているか、はっきりと読者にわかるように描くこと。『ベルセルク』には性暴力に該当する描写もあったが、あの作品が性暴力を肯定し、推進している作品でないことは、読めば明らかだ。

今この状況で、エッセンシャルワーカーに性暴力を与え、女性の人権を見下す対象にするのは、絶対に正しく無い。

端的に言って、タイミングではないし、やりすぎ。SNSを通してメディアに露出することへのバランスが欠けすぎている。

漫画だから何を描いても許される、というわけではないのだ。漫画表現に体裁を借りて、性暴力を正当化する、ということが許されるわけではないと思う。”たかが漫画”という言葉により、女性の人権が踏み躙ることがダブルスタンダートとして確立されるのは、悲惨ではないか。

表現の自由、というのが漫画というメディアの力を借りて、女性の人権を踏み躙ることの一翼を担うことになって欲しくはない。

もちろん、法的な規制があるわけではないし、早急かつ稚拙な理解で法規制をするのは、表現の自由を脅かすわけで、危険な部分もある。

しかしながら、漫画という表現を利用しながら、性暴力を肯定することが、社会にどんな影響を与えるか、今こそ考えていく必要があるのではないだろうか。

追記:2021年7月29日

作者のTwitterのトップは、『瞬きより疾く』に変更しており、『土下座で頼んでみた』は、タイトルだけが掲載されている状態である。
なお、私が作者に注目したきっかけは、作者に対してメンションを出したアカウントを、本人の了解も無しにリツイートし、そのアカウントがTwitterから消えたことだ。
もちろん、作者本人が自身の作品の見解を述べることに、なんら問題はない。

ただし、それを作者本人のプライベートまで影響を及ぼすような名誉を傷つけたものではない、あくまで作者と性描写についての疑問を呈したツイートを、リツイートすることが正しい原作者、および社会の中で生きる作家としての姿勢とは思えない。

海外では、リツイートの行為そのものが”いじめ”の一環として認定されている。それに作為があるなしに関わらず。
しかして、あのリツイート(それも二度に渡る)に関しては、明らかに作為を感じたし、それをみた作者のファンがなんらかのアクション(おそらくアカウントに対する直接的な攻撃)を行い、アカウントが消えたようにも見えた。あくまで私見であるが。
しかし、アカウントが消えたのは事実だ。
そして、その時のツイートを保存している人もいることだろう。

オリンピックでは、小山田圭吾氏のいじめなどが問題になっているが、漫画を描くとは全く関係ない行為である、単なる一般人のツイートを晒す、というのは漫画家として正しい姿勢なのであろうか?

私には、作者が性暴力を描くことに対して自分の望んだ見解以外を受け付けないがために、行った行為に見えた。
その後”怒ってないですよ~”などとの記載もあったが、謝罪は今だに無い。
いわば、リツイートだけして、”怒ってない”ということで責任を取らない、という姿勢にも見える。

『瞬きより疾く』を掲載しているウルトラジャンプ編集部、及び集英社、表現の自由を手に、作者は何をしても自由なのか?
『瞬きより疾く』の取材を受ける空手団体も、作者の過去の作品、及び言動を知った上で、空手が作者の作品を通し、どのような印象を受けるのか、一考する意味はあるのではないか? 性暴力について、作品であれば表現の自由があるから、何を描いてもTwitter上に晒しても良いのか?

尚、作者がツイッター上で公開していたイラストを、期間を限定して一部掲載する。はっきりとウーバーイーツと分かる形で書いてあるのがわかる。

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