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022 描く① 準備する

皆さんは、お仕事で企画書や提案書をよく書く方でしょうか?
中には毎日のように書く人もいるでしょうし、中には見たことすらない…という人もいるかもしれません。今回からの3回は、そのどちらでもない “つくり慣れてない人” に向けた「企画書・提案書の描き方」についての連載です。

ニーズを把握する

企画や提案の多くは、相手のニーズを聴くところから始まります。相手が自身のニーズを伝えるための時間を用意してくれることも多く、その時間を「オリエンテーション」(通称:オリエン)と呼びます。

このオリエンは基本的に相手のニーズを “聴く場” ですので、第789回「聴く」スキル と、第101112回「問う」スキル を使って相手のニーズを正確に把握すればよいだけなのですが、そこには第13回でご紹介した「ミスコミュニケーション」という罠もあるため、注意が必要です。そしてその罠を回避すべく、大抵は口頭で確認しながら話を聴くことになるのですが、とくに重要なポイントは文字や図でも確認してもらうことをお薦めします。

この画像のように、少なくともオリエン時のメモは大きく、相手が確認できるように取るのがコツです(私の場合、ハンディタイプのA4ホワイトボード「nu board」を使っています)。描きながら相手に「こんな感じですか?」と図を確認してもらい、場合によっては相手のイメージをその場で書いてもらうことさえします。

こうして互いの頭の中を可視化すると同時に、認識のズレを最小化するわけです。

伝える内容を決める

オリエンが終わったら、それを受けて「何を伝えるか?」を決めます。文章の書き方(第19回 参照)と同じで 論点を明確化させるわけですが、次の3つのステップにわけて頭を整理するとよいかもしれません。

1. 頭の中の考えをすべて紙に書き出す
2. 伝えたい内容だけに絞る
3. 重要度に応じて整理する

まず最初に「自分の頭の中に何が入っているか?」を可視化します。やり方は、箇条書きでも単語でも、図でもイラストでも大丈夫です。とにかくこの時は、頭の中にある考えを取り出すことだけに集中します(同時に整理したり、まとめたりしないのがコツです)。

そうやって可視化された考えには多くのノイズ(伝える必要のない内容)が含まれていますので、次のステップで整理をします(似通った要素はグルーピングし、同じ要素は間引き、足りない要素があれば追加します)。そして最後に重要度に応じて並べ替えをし(番号を振るだけでも可)、「何を伝えるか?」を具体化します。

伝え方を決める

こうして「何を伝えるか?」を決めたら、次は「どうやって伝えるか?」を考えます。

場合によっては企画書や提案書にまとめずとも、口頭だけでよい(その方がよい)場合もあるでしょう。場合によっては、印刷して配布するのがよい場合もあるでしょう。はたまたプロジェクタを使って、スライド投影するのが最適な場合もあるでしょう。── いずれにせよ、目的整合性の観点から「どんな手段が最適か?」を判断します。

そうして伝達手段を決めたら、次に「どれくらいの情報量を伝えるか?」「どんな順序で伝えるか?」を細かく決めていきます。

上の画像は「台割(だいわり)」と呼ばれるもので、何をどの順序で伝えるかを示したメモです。紙の上でページを入れ替えたり(画像中のP3-4、P13-14)、後から追加したり(P11)していることがお分かりいただけるかと思います。

このように紙の上で「何を、どの程度、どの順序で伝えるか?」をシミュレーションしておくと、パソコンで実際に作り始めてから悩むことも無くなりますし、何より無駄なページを作成しなくて済みます。言い換えると、ここまでの準備にパソコンは一切不要だということでもあります。


さて、「企画書を書くのが苦手」という声をよく耳にしますが、その多くの方が今回ご紹介したアナログ作業をすべて割愛し、いきなりパワーポイントで作業を始めているようです。ですが「急がば回れ」の喩えにもあるように、それは近道に見えて結果的に遠回りをしているようなものです。

丁寧なアナログ作業(手書き作業)の手間を惜しまないことが、効果的であると同時に効率的でもあります(だからこそ、プロのデザイナが手書き作業を省くことは、まずありません)。ぜひ皆さまも今回ご紹介したアナログ作業の手間を惜しまず、丁寧な準備を行った上、効果的・効率的に作業を進めていただけると嬉しいです。

[参考]これまで&これからの記事

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