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008 聴く② 何を聴くか?

前回に続いて “聴くスキル” の2回目です。今回から具体的なテクニックとしての “聴き方” をご紹介します。

長く聴く

ふたりの人が会話をする際、ひとりが話し手になり、もうひとりが聞き手になります。算数で考えれば会話の総量を二分する訳ですから、双方「50%ずつ話す」、つまり双方「50%ずつ聞く」となる筈ですが、当然のことながら実際にはそうはなりません。というのも、ひとりが話し好きだったり相談があったりすると、結果的にもうひとりはずっと 聞き役 になってしまうからです。

人には誰でも「認めてもらいたい」という欲求があり( 承認欲求 といいます)、それが会話で発揮されると「とにかく私の話を聞いてほしい」という感情になります。ですので、負けん気が強いふたりなら “欲求のぶつけ合い” となってしまい、結果どちらも相手の話を聞かない…という事態に陥りがちです。そこでお薦めするのが、次の三つの心構えです。

・相手に気持ちよく話してもらう
・7〜8割は相手に話してもらう
・同じ方向、同じ景色を見る

何はともあれ、まずは「相手に気持ちよく話してもらう」ことから始めます。そうやって相手の「聞いてほしい」という欲求に応えると同時に、大量の情報を取得し、より相手の理解を深めます。そして次にできるだけ相手の話を長く聴き続けるために「7〜8割は相手に話してもらう」と心に決めます(自分が話したくなる度に思い出すようにします)。

そして論点に関わる不明点は質問によって明らかにして、可能な限り相手と「同じ方向、同じ景色を見る」※ようにします。そうすれば相手はより話しやすくなり、より気持ちよく話してもらえるようになります。
※同じところから、同じ部分を、同じ範囲・
 同じ細かさで見るようにします
  (視座/視点/視野/視力を合わせます)

広く聴く

これらを踏まえ、次の三つを意識して今度は “広く聴く” ことを意識します。

・相手の解釈を聴く
・話の文脈を聴く
・話の意図を聴く

言葉には、単語ひとつをとっても複数の意味があるだけでなく、その人なりの解釈があります。ですので、相手がその言葉を「どのように捉えているのか」を把握しないと、噛み合わない会話になってしまいます。その為にはボキャブラリを増やすだけでなく、言葉の理解を深め、最適な意味(ニュアンス)で捉えるよう努力します。そして「何の話をしているのか?」という相手の文脈を聴き、「何を意図して話しているのか?」を理解するよう心掛けるのが理想となるでしょう。──「言うは易く、行うは難し」ですが…。

深く聴く

さらに、相手の話を “深く聴く” ことも意識します。この深さには、最も簡単なものから、かなり難しいものまで三段階があります。

・言っていること … を聴く
・言わんとしていること 
… を聴く
・言わないこと、言えないこと … を聴く

最も簡単なのは、相手が「言っていること」だけを聴くことです。これは言葉の上っ面※しか捉えていない、いわゆる “真に受ける” という状態です。それよりも難しいのは、相手が「言わんとしていること」を聴くことです。相手が「何を言いたいのか?」を意識していないのと聴けないため、意識して聴くことが必要となります(いわゆる「空気を読む」という技術です)。
※単語の原義に囚われ、それを口にしている人
 の解釈や文脈、意図を無視した状態

そしてさらに難しいのは、たとえこちらが尋ねても相手が「言わないこと、言えないこと」を聴くことです。例を挙げてみましょう。

・言っていること ……………「書類はこれで大丈夫でしょうか?」
・言わんとしていること ……「きっちり揃えたので怒られませんよね?」
・言わない/言えないこと …「こんなに沢山つくらせやがって!」

言葉それ自体ではなく、その言葉で伝えようとした “世界” を聴くよう心掛けてみてください。

“話し上手” “話が上手い人” でもあり、どちらかと言うと、嫌われがちです。ですので、 どうせなら “話が上手い人” より “話しやすい人” を目指した方が得策でしょう。ましてや “口下手” の人が “話し上手” を目指そうとするのは、私のような運動音痴がオリンピックで金メダルを狙うようなものです。

願わくば、“話し上手” ではなく “聞き上手” と言われたいものです。


[参考]これまで&これからの記事

法人/個人を問わず、論理思考やコミュニケーションスキル、メンタルスキルなど各種ビジネススキルを、基礎の基礎から分かりやすくお伝えいたします。   (株)トンパニ https://tongpanyi.co.jp/