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013 話す① ミスコミュニケーション

今回から3回にわたって “話す” スキルについてご紹介していきます。

伝える≠伝わる

第7回でお伝えした通り、会話はキャッチボールの様なものです。他のスポーツのように相手と競い合うのではなく、共に協力しあって互いの目的を達成する作業、それがキャッチボールであり会話だ…という意味です。ですので、どれだけキャッチャの捕手技術が優れていようとピッチャが “甲斐性なし” であれば、キャッチャは実力の発揮のしようがありません(明後日の方角にボールを投げられたら受けようがありません)。

つまり、いくら聞き手が優れていようと、話し手が伝わるように伝えなければ伝わらないのです。ましてや、伝わらなければ伝えたことにはなりません(「言ったよ」「伝えたよ」という主張に意味はありません)。もっと言ってしまえば、伝わらない伝え方は効果が臨めないだけでなく、コミュニケーション効率を下げることにもなります。生産性を曲解した “効果なき効率” ですら虚しい努力ですのに、さらに効率まで下げてしまっては目も当てられません。 ── まずは効果あっての効率ですので、手間ひまを惜しまず、「伝わる」ように「伝える」ことを心掛けて下さい。

コミュニケーションの構造

さて、時間や手間をかけて伝わる努力をしても、それでもまだ伝わらないことはあります(世に言うミスコミュニケーションという状態です)。ここでは、ミスコミュニケーションが発生したとき、いったいそこで何が起こっているのかを詳しく見ていきます。

ミスコミュニケーションの会話例を挙げます。

顧客「明日の昼一までにメールしてよ」
営業「昼一ですね!では13時にお送りします!」
顧客「いやだから13時じゃ遅いんだって…」

たった3行の会話ですが、営業は顧客に苛立ちを感じさせてしまいました。お気付きの通り、「昼一」という言葉の定義は人によって様々です(「13時」と捉える人もいれば「12時/正午」と捉える人もいることでしょう)。にも関わらず、顧客は営業に「13時」と決めつけられ、自身の「12時までに…と伝えたかった」という思いが無視されたため、苛立ちを覚えたのです。

これを図にすると、次のようになります。

ふたりの違いは「おなかの中」にあった…という訳です(より正確にいうと「脳の中」なのですが、理解しやすさを優先して「おなかの中」としました)。つまり、伝わるように伝えても伝わらないことがあるのは、「伝えた内容」と「伝わった内容」とが一致しないことがあるから…です。

ではなぜ「伝えた内容」と「伝わった内容」が一致しなくなるのでしょうか?

ミスコミュニケーション3種

その原因は、話し手と聞き手、その双方が持つ “フィルタ” にあります。

前述の例で言うと、話し手は「12時」と伝えたいのに、自身のフィルタを通して口をついて出た言葉(選んだ言葉)がたまたま「昼一」だったという不幸がひとつ。聞き手も様々な理解が可能な知識を持っていたにも関わらず、フィルタを通して選んだ理解がたまたま「13時」という不幸がひとつ。このふたつの不幸を生み出したふたつのフィルタが、今回の原因です。

ところで、一般的にミスコミュニケーションには次の3つがあると言われています。

省略
体験という事実は言葉して語られる中で、
その大半情報が省略され、失われてしまう
歪曲
個人的な価値観や様々バイアスというフィルタ
によって、体験は歪められて記憶さる
一般化
自分の過去体験から平均化したイメージに
変換してまう
※参考:山崎啓支 『マンガでやさしくわかるNLPコミュニケーション

サーファーが「昨日、海行ってさぁ」と言うとき、多くの人がイメージするのは “サーフィンをする姿” です。しかしこの「海行ってさぁ」が釣りを意味していたとするなら、これはもう上記の「省略」という状態です(情報が省略されすぎて、意図が伝わりません)。さらに「そこでデカイのを釣り上げて…」と両手を一杯に拡げたなら、おそらくそれは「歪曲」に当たるでしょう。

この「省略」と「歪曲」が話し手に責任があるミスコミュニケーションだとするなら、聞き手にあるのが「一般化」です。「デカイのを…」と聞いただけで体長が何メートルにもなるカジキを想像するのは、さすがに誤解と言わざるを得ません。

伝わるように伝えなければ伝わらず、伝わるように伝えたところで伝わらないこともあるのが「伝える」という困難な作業の実態です。だからといって、伝わることを諦めたり、伝えることすら諦めて伝えないのでは、コミュニケーションになりません。そこで次回は、このミスコミュニケーションを予防する「確認」について詳しく解説しますので、ご期待ください。

[参考]これまで&これからの記事

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