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【読書感想】きりこについて

西加奈子さんの小説は久しぶり!
漁港のトッコちゃんが良かったので、久しぶりに手に取ってみました。本作も西さんらしい世界観満載の一冊です。



あらすじ

小学校の体育館裏で、きりこが見つけた黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ人の言葉を覚えていった。両親の愛情を浴びて育ったきりこだったけれど、5年生の時、好きな男の子に「ぶす」と言われ、強いショックを受ける。悩んで引きこもる日々。やがて、きりこはラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。きりこが見つけた世の中でいちばん大切なこととは?読者からの熱烈な支持を受け、ついに文庫化。


心に残った文章5選

自分の胸の痛みは、自分にしか分からない。自分以外に、自分を上手に慰めてあげられる人はおらんのや

きりこについて

相手の苦しみは、相手になってみないと分からない。つまり、相手と同じ境遇になってみないと分からないんです。
苦しさのベクトルは人それぞれ。自分にとっては、苦しい出来事でも、相手にとっては、全然苦しくないことなんてこともありますよね。
「苦しい」のベクトルも人それぞれだから、「幸せ」のベクトルも人それぞれ。
「これがあれば幸せ」という、自分にとっての「幸せ」を普段から分かっておくことで、
自分の機嫌はよくなるし、相手に八つ当たりもしなくなりますよね。
ハッピーオーラをまといたいなら、「自分」のことを一番分かってなきゃいならないのは「自分」です。
 

自分のしたいことを、叶えてあげるんは、自分しかおらんと思うから。」  きりこは、すう、と息を吸った。

きりこについて

自分が「これをやりたい」と思ったら、許してあげるのも、実行してあげるのも、自分です。
限られた人生だからこそ、自分のしたいように、行動してあげることも、弱い自分を認めてあげることも、必要だと思います。
それを、わがままと言われても、自分の願いを叶えてくれるのは、自分だけ。いつまも、受け身のまま待っていても、事態は変わりません。
一歩踏み出そうと思えた文章でした。


誰かの基準に寄り添うことなく、誰かの真似をするでもない。ただ自分がみんなにとってはぶすであるという事実、そしてそれによって、自分のきらきらした少女時代は失われたという現実を受け止めたきりこは、自分を見ないでいよう、と決意した。自分が自分である限り、現実に苦しめられるのであれば、その原因である自分を、見なければいい。

きりこについて

「ぶす」「美人」の基準は人それぞれです。
他人にとって「ぶす」でも、自分が幸せなら、それで十分だと思います。
そもそも、赤の他人が決めた訳の分からないルールやテンプレート通りに生きるということは、
誰かの人生を生きているということ。「誰かに決められた人生」が好きなら、それで良いけど、私は、そうではないからこそ「自分の人生を生きたい」と考えています。
だから、自分のいいところも、ダメなところも全部全部受け止めて、こんな自分でもいいんだって思えるようになりたいです。
今はまだ全然出来ていないけど、少しずつ少しずつ、プライドばっか高いし不器用な自分を愛してあげられるようになりたいと、改めて感じた文章でした。



まとめ

読んでいて思ったのは、「キリコってどんだけブスなんだろう」と。笑
あんなに周りからブスブス言われる人は滅多にいないと思います笑
ですが、本作を読んで思ったこと。というか、西さんが読者に一番伝えたいのではないかと思うこと。
「自分が幸せなら、他人は関係ない」ということ。
キリコを見ていて(話を読んでいて)、周りは自分のことをブスだと思っている人が多いという事実を知ってしまった時、きりこは、その事実を受け入れることが難しかったです。当たり前ですよね。人間は、自分のマイナスなところが分かっていても、直視はしたくないもの。自分の顔面を受け入れるのは難しい。
ですが、自分の大切な価値観を日頃からハッキリさせることで、「他人から○○と思われたとしても、自分には▲▲があるから大丈夫」と思えれば、それで十分なんだなと思います。キリコも、その事実に気付くことが出来て、とても幸せそうでした。
世間が作ったと思われる「標準化された幸せ」に沿って生きなくても、自分だけの幸せを見つけたもん勝ちということです。
思わずクスっと笑ってしまう場面もあり、感動する場面もあり、読みやすい作品でした。

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