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【読書感想】食堂のおばちゃん


今回は、食堂の日常をテーマにした物語です。
山口さんは、実際に食堂で働いていた経験があるそうで、ご自身の体験に基づいたお話なのかなと思いました。
「はじめ食堂」という昔ながらの食堂での店員と常連客の日常の出来事が描かれているお話です。それぞれ短編に分かれているのですが、どのお話も後味がよく、ほっこりするものでした。

あらすじ

ここは佃の大通りに面した「はじめ食堂」。
昼は定食屋、夜は居酒屋を兼ねており、姑の一子と嫁の二三が仲良く店を切り盛りをしている。
夫婦のすれ違い、跡とり問題、仕事の悩み……いろいろ大変なこともあるけれど、
財布に優しい「はじめ食堂」で、美味しい料理を頂けば明日の元気がわいてくる!
元・食堂のおばちゃんが描く、涙あり、笑いありの心温まる物語。



心に残った5選


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物事の成果は、すぐに表れない。努力した分だけ返ってくる。なんて、努力に関する言葉って、沢山ありますよね。
でもやっぱり、自分が頑張った分は帰ってきてほしい。少しでもいいから、目に見えた結果が欲しい。そう考えてしまうのが人間だと思うんです。
はたから見ると、とても恵まれてるように見える人でも、実はものすごく努力をしているものですよね。簡単に、結果を手に入れてしまうと、「本当の努力の仕方」や「努力することの大変さ」が分からなくなってしまうのかもしれないですね。


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大好きな人が、突然いなくなる。当たり前の日常が来ない。
そんな恐ろしいこと、絶対起きてほしくないって思いますよね。でも、なぜでしょう。人間は「失ってから、大切さに気付く」んです。
おせっかいだけど、自分のことを心配してくれる家族、友人、知人。今日こそは「ありがとう」って伝えよう、と思っていても、本人がいなくなってしまっては意味がないのです。伝える人がいないのだから。
だからこそ、感謝の言葉や思いやりを持って、身近な人にこそ接しようと思いました。


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人間は、「悪口」が好きですよね。「悪口」って言ってはいけないと分かっているけど、なぜ言ってしまうのでしょう。
なぜか、マイナスな話題の方が場が盛り上がるのですよね。悲しいですが、これが「他人の不幸は蜜の味」ということなのでしょうか。
「平穏」って、穏やかでプラスなイメージありますが、あまりにも平穏すぎると刺激が欲しくなるのかもしれませんね。だからこそ、そんな「平穏」な毎日でも自分なりに「刺激」を探していくことも大切なんだろうなと思います。


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何か災難に遭った時、あなたはどう感じますか。
「あー、ついてない。やだやだ。何で自分がこんな目に遭うんだ」と感じますか。
「何で〇〇できなかったんだろう。悔しいな。でも△△されなかっただけマシか」と感じますか。
物は考えようで、プラスにもマイナスにもなりますよね。個人的に、「不幸中の幸い」とは、良い言葉だと思っていて、マイナスな出来事からプラスを発掘することが出来るかって大切です。
嫌なことばかりの起きているというのは、真実かもしれない。でも、その「嫌なこと」の中にも、必ず「いいこと」は存在する。人から見たら、「いいこと」が5点でも、自分で「80点」と採点できれば、それで十分なのです。


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つい他人に口出ししたくなるとき、ありますよね。自分の大切な人であればあるほど、心配になって、間違った道に行かないようにしたくなるものです。
でも、「間違った道」というのは、「私」の考える「間違った道」であって、他人から見たら「正しい道」かもしれません。
自分の価値観や考えが、正しいなんてあり得ない。もちろん、他人の価値観や考えが、正しいということもあり得ない。本人が「悪い」と思ったら、必ず潮時が訪れる。
大切な人が「何か危ないことをしているなあ」と思ったら、「見守る」ことも愛情の一つなのではないかと思いました。


まとめ

「はじめ食堂」を経営しているのが、嫁姑という珍しいペアなのですが、関係は良好。
常連客も素敵な方ばかりでいいですね。個人的には、一子のキャラがとても好印象です。美人なのに、気取らず、常連客を大切にする。
接客業として、当たり前かもしれませんが、小説から一子の優しさが伝わってきました。


本作は5編に分かれているのですが、1章を読破するのに、1時間未満だと思うので、とても読みやすいです。
ただ、あまりにも穏やかな日常なので、少しスリルやサスペンス要素が欲しい方には物足りないかなと思います。
続編も数冊あるみたいなので、ぜひ読んでみたいですね!

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