見出し画像

読みました録 :『カフェが街をつくる』


昨日の「夏のおもいで」アルバムより先にこちらを書いていたのですが、
またいつもの癖で自論がぶわーっと溢れ始めて なんか収集がつかなくなって。
むすめとの夏のおもいでの写真に癒されたので、「よし!仕上げよう!」という気持ちになれました。

『カフェが街をつくる』入川ひでと 2012年 株式会社クロスメディア・パブリッシング



個人的には、
以前カフェ開業に関する本をまとめて購入した際、
一番読むのを楽しみにしていた本です。

カフェは一人ひとりにとって心地いい「サード・プレイス」にならなくてはいけません。
残念ながら都市化が進み、大家族から核家族に変化したことによって近所付き合いも減り、井戸端会議や誰かの家の縁側でおしゃべりなんていう機会と場所が随分なくなってしまいました。
自宅でもない、職場でもない、自分が自分でいられる場所。そこはいつ誰とでも訪れることができて、多様な使い方ができる場所でなければならない。それこそがサード・プレイスなのです。
カフェはコミュニティをつくり、街をつくります。

同書 はじめに より引用


導入部分を読んで、もうワクワクしました。
著者の入川ひでと氏は、
ダイエーグループで培った新規出店業務の経験をベースに、信頼できるパートナーとともに いくつものカフェのプロデュースや既存店舗の業態開発などを手掛ける会社を設立、自らも会社を経営し、街づくりや企業・街のブランディングまで、「カフェ」という手法を用いて人々や街へ様々な働きかけを行ってきた方。 

あまりに事業と入川氏そのものの規模が大きすぎて参考にできる部分と とてもじゃないけど私なんかには手が届かない部分とがあったけど、
料理もお菓子の腕も大したことないのに、「カフェという居場所をつくることで、地域づくりをしたい」という自分の方向性に ずっと「大丈夫かな、これでいいのかな」という不安を抱いていた私にとっては、
これからの活動の"根拠"となるものを教えていただいたような、そんな気持ちになった。



私が「カフェをつくりたい」のは、
「自分が作った料理やお菓子でたくさんの人を喜ばせたい、笑顔にしたい」
からではありません。

少子化でこども会が無くなり、
高齢化で町内の活動もままならなくなって、次世代は仕事が忙しく町内に目を向ける暇もない。

核家族化で、おじいちゃんおばあちゃんと同居する家庭が減ったことにより
子ども達はお年寄りとどう接していいかわからなくなった。
昔のように、地域の大人に見守ってもらうようなことが無いので、自分の子は自分で守らないといけなくなった。
こうなると、地域のお年寄りは、親の目を気にして 近所の子どもにどれだけ関わっていいかわからなくなった。

そんなことが続いてるうちに、だんだんと地域住民同士の繋がりが薄れてしまった。
繋がりが薄れると、お互いに関心が向かなくなる。あの人誰か知らない。挨拶していいかわからない。
近所づきあいってめんどくさそうだから関わらない。

そうして気にかける人が誰もいなくなると、
それぞれの家庭の中で、初めは小さかった問題(貧困や体力の衰え、心の病気、育児や介護疲れなど、人が生活する中で生まれる問題は数え切れません。)が、だんだんと大きくなり、
しまいには 手をつけられない状態になる。
やっとこさ支援が介入できる(問題が世間に明らかになる)ときっていうのは、
この "手をつけられなくなってから" の場合が多い。


ポツンと一軒家に住んでるわけじゃないのに、
それって、 辛すぎる。

もっと、お互いを知ってたら。
気軽に話をする場があったら。
悩みをぼそっと打ち明ける場があったら。
地域という身近な場所に、普段から話せる人がいたら。
孤独で辛いとき、逃げ込める場所があったら。

早く、支援者と繋がれたかも。
そもそも、問題が少し軽くなったかも。
もっと言えば、孤立っていう問題だと、未然に防ぐことができたかも。

私が「カフェをつくりたい」のは、
地域のなかに、住民が集う居場所をつくりたいからです。

前も一度書いたんですけど、
福祉の内部からこれをしようと思うと、

「福祉でしょ。難しいことでしょ。支援でしょ。楽しくないでしょ。」
の目が、先入観が、向けられる。
経験不足と力不足もあり、前職では私はこれを払拭することができずに終わった。

仕事を辞め、身軽になった今、
私自身にできることを、やってみたい。

もしかしたら失敗するかもしれない。私には、荷が大きいかもしれない。

けど、やってみなきゃわかんない。


そんな私に本書は、
"カフェの始め方"だけではなく、
"街づくりのためのカフェの作り方"を教えてくれた。

たとえば、
入川氏は、
予め依頼があった地域に相応しいカフェを手掛けることが主な仕事であったが、
その立地調査もとても参考になった。

どんな人が住んでいて、どんな人が働いているのか。
平日と週末、朝、昼、午後、夕方など、時間帯と曜日を区切って、
性別、年齢、職業、ファッション、持ち物…と、
頭のてっぺんから爪の先まで観察することで、徐々にターゲットを絞っていくのです。次に、
地図を見ながら立地を確認していきます。
駅から近いのか遠いのか、
周辺の飲食店、コンビニ、レンタルショップなどの配置、
どんな店があり、どんな商圏なのかをリサーチするのです。

同書 より 引用


私の場合は、
主人の実家のあたり という ざっくりとした立地しか決めていないので、
もちろん カフェができる物件があるかどうかなど制限はありますが、
町内会長さん達や地域を知る自治体の職員さんなどにもお話を聞いたりして、
地域づくりを必要としている場所にお店を設ける必要があります。

自分のイメージするお店が受け入れて貰えるかどうか、それを知るためにも
この調査方法は参考になると思いました。



また、
提供するメニューの決め方も、なるほどーと思いました。
ターゲットとなる層に合わせて、
お手軽なランチか、野菜も豊富に取り入れた定食か、
はたまた材料の細部までこだわり抜いたコースランチか。
夜食になるようなメニューを設けたり、
会議などで利用できるよう工夫したり。
テイクアウトを設けたり。

大切なのは、こちら側の食べて欲しいものを押し付けないこと。

お客さまが求めるメニューを考え提供することで、
何年も修行を積んだシェフなどでなくても、
お客さまに喜んでいただけます。


メニューもさることながら、
什器や家具などの空間づくりも、
その土地土地で住んだり働いたりしている人達の生活や価値観に合わせて作ることで、
居心地の良い空間となり、
家庭や職場とはまた異なる、自分のための"サード・プレイス"
と なりうるのです。


また、入川氏が手掛けるカフェの役割として欠かせないのが、
コミュニティ・ハブ(拠点) という側面です。

カフェが、人々のサードプレイスとなり
地域の人々が集まってくると、カフェが人々の活動拠点としても機能し始めるようになります。
(地域福祉に落とし込むと、お年寄りが体操する場にしてもいいし、ベビーマッサージなどのママ向け講座をしてもいいと思います。コーヒーのワークショップや、夏休みの工作教室!)

このように、カフェがどんどんコミュニティのハブとして機能し始めると、
"ローカル・サポート" つまり、ご近所同士の助け合い が生まれます。

本書では、例として
少しだけお子さんや荷物を預かる、自転車を置いてあげる、掲示板を設置して住民同士で募集できるようにする、スポーツサークルのメンバーを集めたりする
などが挙げられていました。

これはまさに、
顔見知りになり繋がりが生まれ、助け合いにつながる、
地域福祉の考え方とも重なる部分があります。

実際に、入川氏が手掛けたカフェにおいても、
地域のお祭りで住民と一緒にお神輿を担いだり、
地域清掃を行ったりと、
地域のちょっとしたお悩みのお手伝いをしている店舗もあるようです。

私はこれを読んで、嬉しくなりました。ワクワクしました。


カフェ という手法を用いて、
人を繋げ、さらには助け合いにまで発展させているような事例があった。
しかも、いくつも。

もちろん、地域福祉の枠の中でも、
こういった事例はたくさん勉強させていただいた。

でも、それらはどれも、
やる側の ギブ が多すぎるものばかり。

ボランティア。サービス。差し入れ。持ち出し。

見返りを求めず、
また 相手が喜んでくれるということを糧に、
活動することは、素晴らしいこと。
誰にでもできることじゃない。

前職は社会福祉士協議会で働いてたから、
そういう人を何人も見てきたし、
実際社協の仕事っていうのは、そういう人無しには始まらない。
本当に尊敬しながら、一緒に仕事をさせていただいてた。

けど、私がこれからやろうとしてることは、
私の大切な家族をしょって(背負って)やることだから、
ちょっとそれじゃあ続かない。

家庭ももちろんそうだし、
地域の皆さんに安心して来てもらえるように、
カフェとして ある程度やりくりしながら 続けなきゃいけない。


そういう意味合いで、
ビジネスとしても成功しつつ、地域のコミュニティづくりにも一役買っている入川氏のカフェ(しかも、この本だけでも7店舗紹介されていた)について知れたことは、
私にとって

きっと、できる!

って思える勇気をくれた。

もちろん、入川氏は今の私の年で既に自分の会社を立ち上げ代表取締役に就任しているところから見て、
根っからのプロフェッショナルであり
たぶん絶対ものすごい努力家だから、
私が同じようにできるなんて更々思ってないし、

星の数ほど(そんなにも無いか)ある地域にそれぞれの特徴があり、様々な人が暮らしているので、
カフェの作り方もそれらに合わせたやり方で
これがいい!っていう方法は無いけど、

とにかく勇気をもらったのである!




はー、どうなることかと思ったけど
ひとまず収集がついて良かった!(笑)

書いててもほんとにドキドキした読書感想文でした!
最後の方ビックリマークばっかりで、
興奮してたのがわかりますね。


おわり

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?