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読売新聞に「あだ名呼び捨ては禁止、小学校でさんづけが広がる」という記事がありました。クラスメイトをあだ名で呼んだり呼び捨てにしたりせずに「さん付け」するように指導する小学校が増えている、ということです。

身体的特徴を揶揄するようなあだ名は、いじめに繋がるケースがあるからだとしています。ただ一方で、このようにも注記されています。「さん付けは円滑なコミュニケーションを阻む恐れもあり、有識者はさん付けを求める場合はきちんと理由を説明してあげてほしいと指導する」と。

このニュースを見たときに、そういうことだったのかと納得しました。今、僕の娘は7歳。小学校2年生なんですけれども、男女問わず全員さん付けなんですよね。もう、どんなに仲良くなっても、絶対にさん付け。例えば、家の近所で会うときも「〇〇さ〜ん!!」徹底されています。

自分の小学校時代と照らし合わせると、違和感があるのですが、もうそういう時代なのかなと思っていたのですが、恥ずかしながらこの読売新聞のニュースを見て、そういうことだったのかと納得した次第です。

想像力も失われる

しかしこれは、ここでも指摘されている通り、コミュニケーションというテーマを考えたときに結構大きな弊害となっているのではないか、と僕は考えています。

小学生の頃を振り返ると、いろんなあだ名がありました。

例えば難波くん、なぜかナンフィンと呼ばれていました。何故「なんば」の「ば」がフィンになったのか、今となっては謎でしかないんですが、これってとても重要なことで、例えば、呼び捨てにすると、あまりいいイメージないですよね。僕、森下といいますけれども「森下!」って言われるよりも、やっぱりあだ名がついてるほうが柔らかい感じがする。僕はみんなから下の名前で「ともや」と呼ばれていました。やっぱり下の名前で呼ばれると、それはそれで親近感がありますよね、先生に怒られるときも「ともや!!」と大声で呼ばれていましたが、下の名前で大声で怒鳴られたほうが、上の名前でどなられるよりも、愛情みたいなものすら感じていたように思います。

先生にあだ名がつくこともあります。

中学生のとき「ちゃびん」と呼ばれていた先生がいました。さあ、なぜ「ちゃびん」なのか。懸命なる皆さんならば、なんとなくお察しがついてる方もいるかもしれませんが、その方は高齢の男性。数学の先生でした。
頭が見事に禿げ上がっていたんですね。波平どころではなくて、両サイドしかない。つまり「ハゲチャビン」。そこから「ちゃびん」と言われていたんですけれども、少なくとも教室などで見ている限りにおいて、嫌がってるようには見えず、むしろ何だろう、嬉しそうですらあったのですが。

先生たちは、子供たちからあだ名で呼ばれるってなんか嬉しくないですかね。確かに身体的超特徴を捉えたものではあるけれども、そこまで何か過剰に大人が反応するべきものでもないのかなと思っています。ちなみに僕は娘のお友達たちからは「ともやん」と呼ばれています。

「ともや」じゃなくて「ともやん」だとやっぱり、一応、友達の父親だからそれを下の名前で呼び捨ては、と思うんのだろうけれど、なぜか「ん」がついて「ともやん」になりました。それはそれで僕もすごく嬉しい。

おっさんにかわいいあだ名がついているとたまに困る

会社での例も考えてみます。

会社の先輩達にはいろんなあだ名がもう既に入社したときから付いていたのでが、10個ぐらい年上の先輩、下の名前が「よしのり」さんなのですが「よしぽん」と呼ばれています。

これがまた厄介でして。

その人と同い年、もしくはその上の人たちはいいんですよ。「よしぽん!」て気軽にぽんぽん呼べて。でも、年下の僕はさすがにそのまま呼ぶのはどうかなと思い、「よしぽんさん!」ってよくわかんない呼び方になってるんです。でもね、あだ名がつくとやはり親しみやすさ、そして何かこう、コミュニケーションの取りやすさが生まれると僕は思っています。

あだ名がいじめに繋がった事例

一方で、新聞の指摘の通り、いじめに繋がる場合も、当然あります。

25本目の記事でお伝えしましたけれども、タイトルは「#25 あだ名は「うんこいじめられていた僕が考える自殺報道」中学生の一時期、うんことあだ名をつけられていじめられていました。

わかりやすいんです。授業中お腹痛くなってトイレに行ったその1回がきっかけで「うんこ」と呼ばれるようになりました。

そしてクラスメートには「カレー」と呼ばれていじめらていた子も。これもまたかわいそうなんです。本当に。学校は弁当持参だったのですが、彼の母親は温かいカレーを食べさせたい、とわざわざ保温機能が付いた立派なお弁当箱にカレーを作って入れてあげたんですね。これが駄目だったんです。カレーって臭いが充満するじゃないですか。

その日から彼は「カレー」と呼ばれていじめられるようになり、来る日も来る日も「カレー」とからかわれ、ついに不登校になってしまいました

一律禁止ではない解決方法を

どうすればいいのか。まず「あだ名」これは当然あってもいい。冒頭でもお伝えした通り、学校でも会社でも円滑なコミュニケーションが図られるようになる可能性が高い。すごく柔らかくなるじゃないですか。呼びやすくもなるし、冗談も言い合えるような感じになる。コミュニケーション能力向上に繋がります。

さらに加えて言うならば、いろいろ考えますよね、この人の名前どうしたらもっと親しみやすく読めるかなとか、そういう想像力もどんどん育っていくと思うんですよ。この子やっぱりこういうところかわいいから、こう呼ぼう、とか。こそれを一律で禁止して「さん付け」にした瞬間に、コミュニケーション力はおろか、想像力すら奪われるんじゃないかと懸念しています。

でも、いじめに繋がったケースもある。

やはり相談できる環境があることが極めて重要なのでは、と思っています。
さすがに会社でいい年になってあだ名でいじめるというのは、少なくともうちの会社の場合は聞いたことはありません。
やはり子供ですよね。子供のいじめって、いじめている本人は相手がどれだけ傷ついているのか、ということに気づいてないパターンがとても多いんですね。でもやられた方は、こうして20年30年経っても覚えている。それぐらい心理的な差の開きがあります。

いじめられてる側はやはり誰かに相談したい。話を聞いてもらいたい。それしか解決方法がないんですよね。だって、当事者同士は絶対解決できないんだから。だから、まずは一律禁止の前にとにかく相談できる環境を作ってあげること。全体からして1割にも満たない被害を未然に防ぐ、というだけの理由で一律にさん付けにする、あだ名を禁止する、というのはちょっと極端かなと思っています。

(voicy 2022年5月31日配信)

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