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#77 緊張せず会話する方法!大物政治家を超激怒させて学んだこと

アナウンサーになったのが2001年です。アナウンサーという肩書きが付くと、喋りのプロ、司会や対談もうまいんだろうな、MCもすごいんだろうな、そういう印象を持たれると思いますが、アナウンサーといえども、入社1年目の場合は、つい昨日まで大学生だったわけです。そんな一夜にして、肩書きがついたところで、スキルが身についてるはずもありません。

元々のタレント、つまり性格や才能もあると思いますが、そうしたものがときを経て、研ぎ澄まされて、より使えるものになっていく。

どんな職業でも、どんなスキルでもそうだと思いますが、社内的には1年目だろうと、まだ経験が浅かろうと、番組ではアナウンサーを使います。インタビューや対談の仕事があると、では、アナウンサーにまかせよう、となるわけですそれは。当然、スキルが身に付いてなくても、肩書きがついてきてしまってますから1年目でも、そうした仕事は振られてきます。

若手アナ大失敗の舞台

22年、報道をやってきました。さすがにもう、対談やインタビューで、緊張することは、それほどありませんが、それは場数というものに加えて、いろいろ学んできたからでもあります。

夕方のニュース番組のリポーターを8年やって、最後の1年間はスタジオキャスターをやっていました。その駆け出しのころ。自民党と、そして民主党(当時)それぞれの幹事長にインタビューすることになりました。

どのようにしてそうしたインタビューが実現するかというと、大物の政治家やある程度役職についている人たちには、番記者、すなわち担当の記者がそれぞれについています。信頼関係を構築していき、番組側がアナウンサーをインタビュアーとして使いたいんだけど大丈夫かな、とそうした記者にお願いし、取り次いでもらうわけです。

信頼関係があるから、では、どこの馬の骨ともわからない新人アナウンサーだけども、君の紹介なら大丈夫だろう、いいよ、となります。

なのに僕は自民党と民主党それぞれの感情を激怒させてしまい、そのインタビュー自体、お蔵入りになりました。

なぜ、こうした事態が発生したかというと、当然、僕は緊張していました。
でも、その緊張が悪かったわけではないんです。番組として「こういう答えを聞き出してほしい」「この質問は絶対にしてくれ」という依頼がありました。でも、その質問自体は、それぞれの政治家にとって非常に不快な質問だったんですね。

僕はでも、これは絶対聞かなくてはいけない、相手から何としても答えを引き出さなくてはいけない、そう思っていました。でも質問に対して、それぞれ両者、もちろん別々にインタビューしてるんですけれども、2人ともはぐらかすわけです。面と向かって答えないわけですね。でもそれが答えなんです。今となってはわかるのですが、それは何をどういうふうに質問したってもうそれ以上の答えは出てこないんですよ。もうそれ自体が答え。

彼の表情であったり、はぐらかしてる感じだったり、それ自体が答えなんだけれども、イエスかノーはっきりとしてほしい。なのでその質問を繰り返していたら自民党のその議員に「君は失敬だ」と怒鳴られました。

そして、番記者が間に入って「すみません、新人なもので」と謝罪し、インタビューはこれまで、ということで即終了し、お蔵入りになりました。20年近く前ですけれども、今でもはっきりとその様子は覚えています。

そして民主党。もう1人の方にも同じ手法を繰り返した結果「君は勉強不足も甚だしい」と言われて、もちろんこのインタビューも使えなくなりました。

会話の前にきちんと勉強を

そこから導き出されるものとしては、緊張感はあってもいいのですが、ただ、勉強してなかったんですね。当時は、毎日月曜から金曜日まで、いろいろな事件、事故、そうした政治ネタも含めて取材に行っていました。僕は当時、いろいろなニュース現場に出て、取材して、中継して、リポートして、ということを毎日繰り返していました。何を取材するのか、当時はその日の朝になって初めて言われるわけです。永田町にいって、自民党、民主党の幹事長にインタビューしてくれ、と突然言われるわけです。なので、本当に勉強不足だったわけです。もうそれは御指摘の通り。

そして空気も読めていない、間が抜けた質問をしてしまっていたのだと思うのです。

いろいろな政治の状況、いわゆる永田町の常識、そういったものが頭に入っていれば、おそらく彼らを激怒させるような質問にまで発展しなかったと思うのですが、なんせもう一直線ですから。「これ聞いてこい、答えを引き出してこい」「わかりました」勉強不足がゆえに、言われたままに一直線。

その後、僕はいろんな方と出会っていくことになります。本当に多種多様な方に取材をし、インタビューもさせていただきました。

二度と、このような事態は引き起こしていません。なぜか。必ずその人に関すること、少なくとも、何年にもわたるその対象者の過去の出来事を調べて頭に入れてメモも取って、それからインタビューをするようになりました。
当然、調べていく過程において、いろんな疑問が出てきます。そういえばこの人はなんでこの時点でこういう決断をしたんだろうか、いろいろ調べても出てこない、これはぜひ聞きたいな、など。

そして家族を大切にしている様子がうかがえると、休日はどうしているのかな、とか。趣味も気になったりします。そして、もし共通の趣味があれば、
話はもっと膨らむ。そのようにして調べることによって会話、そして質問する内容、そういったものがどんどんイメージとして湧いてきます。

調べて、調べて、それでもわからないことは聞いてしまえばいいんです。それは別に恥ずかしいことでも何でもないし、むしろその人に対して興味を持っている、という印象が相手に残ります。

加えて、そこまで調べると、もう自分自身としては不安がなくなるので、緊張感というのは和らいできます。何も知らない状態で行くと、誰だってどんなシチュエーションだって緊張しますよね。これは車の運転ででもそうですし、どんなものでも何も知らない状況でやって、と言われたら、それは緊張しますけれども、ある程度調べてそれから物事に臨めば、緊張感はだいぶ和らぐんです。

ただ、それでももちろん緊張は残ります。あとはもう、何回も同じことをすることによって自信がついてきます。成功体験ですね。子供にも必要な成功体験、これは大人でも一緒です。調べて、調べて、インタビューしてみて、そしてうまくいった。なるほど、この方法でできるんだ、そうした回数を重ねていくことによって、緊張はしなくなって、そして自然な感じのリラックスした対談やインタビューができるようになっていく。

肩書きがついてすぐできるわけがない

なので、アナウンサーという肩書きがついてるからといってもちろん1年目2年目3年目で、そんな完璧なことができるわけがないんです、僕もその自民党、民主党の超大物に国会議事堂の中で激怒されて怒鳴り散らされた。あの経験があったからこそ、これじゃ駄目なんだと。日々、ペラペラっと新聞読んだり、テレビでニュースを見ているだけでは駄目だ、本もたくさん読み込んで、勉強して、いつ来るかわからないそうした日に備えなくてはいけない。そう思って、いろいろなビジネス書もそうですし、歴史書もそうですし、政治に関する本とかも毎日読むようになりました。

これは結局、先ほどの話にも繋がるのですが、心のゆとりに繋がっていくんですね。

今は僕がアナウンサーになった22年前よりも遥かに情報をゲットしやすい時代です。インターネットで調べたら、有名な方だったらすぐ出てきますよね。

でも、だからこその落とし穴もあって、情報が拡散してしまっているから本当に細かく細かくリサーチしていかないと、漏れが出てきてしまう可能性があり、相手によっては「あれ、俺のことネットに載ってるんだけどな…この人調べてないんだな」なんて思われかねない時代でもあります。一方で、時間さえかければ、そういった情報にもたどり着ける時代です。

Facebookをやっているかもしれないし、Instagram、Twitter、も個人でたくさんの人たちが発信しています。できる限りそういった情報を集めてから、相手との会話に進む。それを繰り返していくうちに緊張感は和らいでいく。
このようにして僕は22年間、アナウンサー、記者生活を送ってきました。

(voicy 2022年9月17日配信)

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