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#47 200人の心を掴むプレゼン術!絶対キーワードは〝目線〟

人気政治家を間近で見てきました。

2年間、政治部記者として与党自民党と公明党を担当してきました。政治家の皆さんはどうやって人々の心を掴んでいくのか。どうやって一気に聴衆を虜にするのか。それを見てきましたので、ぜひとも私達の生活、例えばプレゼンなどでも活かせると思いますので参考になると嬉しいです。

今井絵理子氏が北海道に行った時の凄まじさ

自分が政治部の記者のときに当選した人気政治家は、まずは今井絵理子さん。彼女が初当選した2016年、ちょうどそのとき僕は政治部の記者をやっていまして、遊説などについていくんですね。北海道へ行ったとき、これがまたすごいんですよ。

僕としては失礼ながら「過去の人」というような認識だったのですが、北海道の田舎町に彼女がいくと、ものすごい数の主婦の皆さんなどが来るわけです。話聞きました。「なぜ来たんですか」と。すると「今井絵理子さんが私達の村にまで来てくれるなんてことは今後一生ない。だから、ぜひとも見たかった」と。

まさに自民党が狙っていた世代がくるわけです。

僕らの世代ですよね。スピードを高校生とか大学生とか、もしくは中学生のときとかに聞いていた人たちが、今まさに有権者のど真ん中なので、その票の掘り起こしなどを狙って投入しているわけです。やはり知名度がものを言うんだな、というのをまざまざと見せつけられました。

小泉進次郎流こころ鷲掴み術

東京で暮らしテレビ局で働いていると、やっぱりそのあたりの感覚がずれてしまいます。あんな有名人が地方に、こんなところにまで来てくれた、もうそれだけで一気に心を鷲掴みにするんですよね。これは一つのパターンなんですが、この後お話する小泉進次郎さんと共通するところがあります。小泉進次郎さんは僕、しばらく担当していたことがありました。

彼の遊説にもついてきます。ものすごい熱狂の渦に巻き込まれます。当時、大人気。絶好調でした。大臣になってからポエムだなんて揶揄されて、人気に陰りが若干出たのかな、なんて気もしていますが、僕が担当していたときはもうまさに人気絶好調の頃。今井絵理子さんと共通しているのですが、こんな田舎に彼がやってきてくれた。もうそれだけで大盛り上がりなんです。

でも、今井さんは元歌手・スピードという肩書きがありますけれども、小泉さんは確かに総理の息子ではありますが、それだけで果たしてそんなに人気が出るのか。確かにイケメンというのもありますが、彼なりの努力がきちんとあるんです。

例えば、その遊説先。僕は初めて降り立った田舎の町。人生でもう二度と行かないだろうと思うような、特に観光地でもない田舎町。その大型スーパーの駐車場にものすごい人が来るわけです。数千人はいたと思います。彼らの心をどうやって心を掴んでいくのか、まず地元ネタを必ず織り込んでいくんですね。
例えばそのスーパーが大型チェーンじゃなくて地元の何らかの名前に由来しているものだったりする。すると、そういったものを事前にちゃんと調べておくんです。

「皆さんこんにちは」ってきますよね。「ご存知でしたか?こちらのスーパー実は創業したときの名前がこうこうで、こうやって変わっていって、いまこうなっているんです」などと、私はこれだけこの地元のことをきちんとわかっているんです、みたいな感じでくるわけです。小ネタのオンパレード
地元の人たちはドカーンってなるわけですよ。そんなにおらが村、俺たちのことを調べてきてくれたのか、もうそれだけで地元の人たちの心をわしづかみです。

あとは古典的ですけれども、おじいちゃんおばあちゃんがいっぱい並んでますよね。特におばあちゃんがたくさん来てるんです。そのおばあちゃんたちに対して「お姉さま方、本当に今日もね、こんなに暑い中ありがとうね」と声をかけるわけです。どう見たっておばあちゃんなのに「お姉さま方」。もうこれだけでもおばあちゃんたちは大喜びだし、周りの人たちも「進次郎〜!!」ですよ。なので、言われて喜ぶことは、過剰なまでに言う。でも嫌らしさに底がないんですよね。

聴衆の目線にまで降りてくれる

今井さんにしても小泉さんにしても共通しているのは、私達の目線まで降りてきてくれる、ということなんです。

雲の上の存在。絶対会うことはないだろうな、直接目にすることなんてないだろうな、と思っていた人たちが私達の目線にまできちんと降りてきて話をしてくれている。

これはすごく重要なことで、例えばプレゼンでも偉そうに言っても意味がないんです。彼らはきちんと同じ目線に立っている。もうそれだけで、ちゃんと私達と同じ考え、同じ思いを持ってやってくれているんだな、そう思うんです。

そしてもう一つ。

小泉さんがすごいのは、名前を覚える力が半端ないんです。あらかじめお伝えしますが、別に小泉さんを推しているわけではありません。間近で見てきた彼のすごさ、これはもう本当に揺るぎないものなんです。

自民党では「部会」というものがあります。例えば、安全保障なり、経済なり、もっとマクロなテーマでもいいんですけれども、テーマを決めて、それを勉強したい、議論をしたい、政策提言をしたい、そういった人たちが集まるわけです。

僕がある部会の取材をしたとき、3、40人いる議員が所属している部会だったのですが、小泉さんが司会をされていました。質問する人がいますよね。もしくは提案する人。その人たちを指すんですけれども、一人一人きちんと名前を言っていくんです。

自民党本部

それ当たり前じゃないかと思うかもしれませんけれども、国会議員なんて何百人もいるんですよ。しかも、失礼ですけれども見たことがないような顔とか、聞いたことがない名前の人なんてたくさんいるわけです。与党担当の責任者をやっていても、わかんない人いっぱいいるんですよ。勉強不足とかじゃなくて、本当に覚えきれない。なのに、小泉さんは一人一人全部、必ず「それでは〇〇さん」と名前を呼んでさしていく。誰1人として名前を言い間違えることなく、確実に全ての人に対してきちんと名前を言うんですね。

小泉さんに聞きました。「よく名前全員言えますね。なかなかできませんよあんなこと」そしたら彼が言っていました。
「確かに覚えるのは大変です。でも、もし覚えている人と、覚えてない人。
それが同じ部屋の中にいて、もし自分の名前を忘れられてたらどう思いますか。絶対嫌な思いになりますよね。僕はまだ若いんです。なので、こうした一人一人の名前を覚える、それだけでも重要なことなんです」と。

細かすぎる気配りがすごい

当時僕は、毎週のように彼に会っていましたし遊説先にもついて行ったりたしていましたが、しばらく経つとやっぱり会わない期間が出てくるんですよね。

3,4ヶ月後に国会内であったときに、忘れてるだろうなと思って、でも「小泉さんお疲れ様です」と挨拶したら「フジテレビの森下さんじゃないですか」と、覚えてるんですよ。時間が経っても。これもやはり同じ目線に立ってくれているということです。偉そうではない。もうそれで一気に心を鷲掴みですよね。

あともう一つ、気さくにちゃんと声をかける。僕がカザフスタンとかトルクメニスタンとかあの辺りへの安倍首相の外遊について行って帰ってきたときに取材先に配るお土産をたくさん買ってきたんです。

国会議事堂

文字も読めないし、なんだかよくわかんないお菓子だったのですが、それをいろんな人たちに配ったものの、誰からもありがとう、と返事がなかったからおかしいな、と思って食べてみたんです。そしたら、もう食べられるようなものではなくて不味かったんです。帰国するギリギリの時間でホテルの近くのスーパーで、なんとなくおいしそうだから、めっちゃたくさんかごに詰めて買ってたものが、まずかったわけです。

こんなに残ってしまってどうしようかなと、それをもって自民党内を歩いていたときちょうど小泉さんとお会いして「お、森下さん、それなんですか」なんて聞かれるわけです。確かに気にはなりますよね。
「トルクメニスタンとかで買ってきたお土産なんですけど、まずいんですよ。いります?」なんて言ったら「森下さんはまずいものを人にあげるんですか」なんて笑いながら突っ込まれて、そんな会話をしながら「でもせっかくだから、ではいただきます」と受け取ってくれました。

すると1時間後に電話かかってくるわけですよ。初めて彼から電話かかってきたんです。「森下さん。そこまでまずくなかったですよ」って。絶対まずいんですよ!そういう気配りができるんですよね。

では、どうやって生活に生かしていくか。まず名前を覚える。単純なようですごく難しいんですが、これをすると確実に喜びます。僕のこと、私のことを覚えてくれてるんだ、と思います。

そして、目線を必ず下げること。必要以上に下げてもいいぐらい。そうすることによって、私達、僕たちのこともちゃんと見てくれてるんだな、そう思います。

(voicy 2022年6月28日配信)

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