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【特別寄稿】そのとき報道センターでは・安倍元総理が銃撃され死亡

安倍元首相が銃撃された8日(金)はフジテレビでは昼から夜中まで12時間以上ぶち抜きの長時間の特別ニュース番組を放送しました。なぜ今回、これほどまでの長時間の生放送になったのか。その要因は2つあると考えています。

容体は…リアルタイムで変わる状況

安倍氏が病院に搬送された時点での容体は「心肺停止」。通常ならば、医師が確認すれば「死亡」と判断される状態です。彼の容体に関しての情報がいつ入るかわからない状態でした。「死亡」となった場合、現行犯逮捕された容疑者は殺人未遂から殺人に切り替わるでしょうし、なにより首相の座から降りたとはいえ、政財界へ一定の影響力を持つ存在なので、大きなニュースになります。

加えて、その場で逮捕された容疑者の素性も時間を置かずして明らかになり、その後、元海上自衛隊員であることも判明、聴取に素直に応じているようすから供述内容が出てくることも考えられました。

また自民党本部などに党幹部議員が続々と到着し、彼らもコメントをする可能性がある。そうしているうちに野党各党党首の発言も入り出します。

事態があまりに大きなものだったが故に、次々と各方面から動きがでてきます。それらをすべて余すことなく伝えるという意味でも、長時間の特番である必要がありました。

首相官邸

影響力の大きさ

安倍元首相は言わずもがな、自民党最大派閥の長です。政権与党の最大派閥ともなればその影響力は大きく、これまでにさまざまな形で報道されていますが、現・岸田政権への「提案」なども本人自身はしていました。
賛否はおいておいて、戦後最長ともなる7年8ヶ月にわたる政権運営の結果、首相の座を退いてもなお、その影響力は一定程度ありました。

加えて、第二次安倍政権が誕生する前は、短期のうちに首相がコロコロかわり、世界的にも日本の首相に対する信頼は薄く、存在感も「先進国」として無惨なものでした。長期政権に成功した結果、安倍元首相は世界各国から「日本のリーダー」として認められ、国際会議などの場でも信頼される存在となりました。ここ10年で初めて、外交の場において日本の首相が「認められた」といっても過言ではないでしょう。

その彼が亡くなったという意味で、国内のみならず海外にとっても大きな関心事でした。それは、事件の一報が世界中で流され、その後、あのプーチン大統領も含め、各国首脳からお見舞いのことばが寄せられたことに現れています。

ホワイトハウス

中継箇所が次々と構築される

次から次へと入る情報に対応するため、各地で中継体制が構築されます。奈良の現場、搬送された病院、容疑者の身柄がうつされた警察署、山口の地元事務所、自宅、都内の自宅、自民党本部、国会記者会館…さらに岸田首相が官邸にヘリで遊説先から戻ることになったためその屋上を映すカメラ、安倍昭恵夫人が到着する京都駅…刻一刻とかわる状況にあわせて、どんどん中継場所が増えていきます。

ひと昔前は、中継車をだし、複数の技術者がその対応にあたっていたのですが、いまではリュックサックほどの大きさの機材で少人数の中継が可能になったため、極めてフレキシブルに対応することが可能になりました。

さらに海外支局からの中継も交え、最新情報とともに特番が構築されていきました。

いつから手製の銃を…

日本国内での銃撃による死者数は、年間数人程度です。この数字には暴力団関係者の死亡も含まれます。これだけ稀な事件に、元首相という要人が含まれることになったという衝撃。世界中ではそうした意味でも驚きを持って受け止められました。

逮捕された容疑者は手製の銃で犯行に及びましたが、元海上自衛隊員で小銃の構造や扱いを学んでいたとはいえ、作るとなるとそれは別の話です。数週間でできるものではなく、現時点では「春ごろから作り出した」という情報がでてきていますが、そうなるといつから計画していたのか、という点が捜査のひとつのポイントとなります。

また、銃の部品はどこから手に入れたのか。正規に国内で手に入るものなのか。仮にそうしたもので作ることができたのならば、そうした品々への購入規制の強化やルール・法の見直しにまで及ぶ可能性がでてきます。

当時の警備・警護態勢が検証されるのはいうまでもありません。映像を見る限り、そもそも背後から不審者の接近を許している時点で、失態と断じざるを得ません。

政界への影響も当然ありますが、そうした話がでてくるのは参院選後しばらく経ったのちでしょう。当然、すでに各方面で水面化で動いていると思われますが、なにせ亡くなってしまっているので、表立ってなにかする、というのはあまりに不謹慎です。


長時間の放送に関して

すべてのテレビ局で長時間に渡り報じられた今回の事件。この国にとってはあまりに不名誉な”歴史的”な事件となってしまいました。しばらくこのニュースが続くことになるとは思いますが、我々自身が死ぬまでの間に、もう2度と接することのないであろう類の事件であると思われます。起こしてはならないという意味でも。

いわばその歴史をきちんと見つめる、という意味でも、どういう報道がなされているのか。

背景はなんだったのか。その手口はなど、日々流れる事件とは異質の次元のものであるという認識のもと、ニュースをみていただけたら幸いです。

(voicy 2022年7月9日公開収録後に配信)



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