見出し画像

徒然草 (私の読書履歴)

これまでに読んできた本を、随時紹介していきたいと思います。強く印象に残っているもの、心に染み渡ったものなどを中心に、自分の思いも書き記していければと考えています。

徒然草 / 兼好法師

栄えある1冊目を飾るのは、日本古典文学の王道、『徒然草』です。『枕草子』『方丈記』と並び、日本三大随筆の一つとしても有名で、全244段から構成されています。

作者は卜部兼好(うらべ かねよし)。卜部氏の嫡流が後に吉田家と称されることもあって世間一般では吉田兼好、もしくは出家後の法名 兼好法師と表記されることも多いです。


なぜ最初に紹介するのが、この本なのか?

それは兼好法師が生きていたとされる鎌倉時代の人々の様子を風刺した描写が、現代の人々にも多くの点で共通しているように感じ、深く考えさせられた作品だったからです。

ただ、何某の家の庭が素晴らしいとか、月の下で飲む酒はおいしいなど、twitter古典版のような下りも多数有り。いかにも随筆(エッセイ)らしい書物であることはご愛嬌です(苦笑)

特に印象に残った下りを抜粋しました。

第150段  能を付かんとする人
原文
能を付かんとする人、「よくせざらんほどは、なまじひに人知られじ。うちうちよく習ひ得てさし出でたらんこそ、いと心にくからめと常に言ふめれど、かく言ふ人、一芸も習ひ得ることなし。(中略)

天下の物の上手といへども、始めは不堪の聞こえもあり、むげの瑕瑾もありき。されども、その人、道の掟正しく、これを重くして放埓せざれば、世の博士にて、万人の師になる事、諸堂かはるべからず。
現代語訳
一芸を身につけようとする人は、「まだ下手な間は、うかつに人に知られないようにしよう。ひそか習得してから人前に出れば、それこそ大変りっぱに見えるだろう」と言いがちであるが、こんなことをいう人は、一芸も物にできないのである

天下の名人といえども、初めは、下手だとうわさされ、事実欠点が多かったのである。しかし、そのような人も道のおきてには忠実で、それを重んじて勝手なことをしないかぎり、いずれは世の権威として万人の師となるのであって、そのことはどの道でも同じはずだ。

引用  徒然草 全訳注 三木紀人  講談社学術文庫 より


画像1

昔と比べて現代社会の文明や技術は飛躍的に進歩しました。しかし、700年近く前の人たちと、同じような悩みを今の人が抱えているというのは、人の思考や行動パターンはいまだ不変なのだと感じざるを得ません。

この不変さを素直に喜んで良いことなのか、悲しむべきことなのか、さらに違う思いを抱くのか、これこそ読んだ人が持つ、それぞれの哲学なのだと思います。



ここまで、ご愛読ありがとうございました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?