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2か月半ぶりにミュートなしで吹いた結果

11歳でトランペットを始めてから2か月半もの間プラクティスミュートをつけて吹き続けたのは初めてだった。3月26日の椿姫の初演を最後にずっと家に篭り、マンションで楽器は吹けないから(隣の歌手は夜中でも歌っているが)ずっとミュートをするしかなかった。

バカンス中に一切吹かない人

せっかくだから何週間か完全に楽器を吹くのを休んでみるのもいいかと考えたものの、逆にすることがなさすぎてリフレッシュにならないからやめた。

ヨーロッパ人のトランペット奏者は「バカンスの間1か月全く楽器を吹かない」という人が多い。

彼らが言うには完全に楽器から離れることで唇だけでなく頭もリセットできるとのこと。そして自然に楽器が吹きたくなるまで待つ。吹き始めたら2週間ほどかけてゆっくり戻していく。そうすることでプレイヤーとしての寿命も長くできるということのようだ。

これは留学時代に試してみたが当時の自分にはとても無理だった。まず長く休んだことがないから戻し方を知らなかったし、なによりその戻す作業が苦痛でならなかった。

そして学んだことは、休むのも経験が必要だということと自分の場合は長すぎる休みをとるのは良くないということ。

ということで今回のコロナ休暇では1日休んだり2日休んだりと徐々に増やした。2日ほど吹くのをやめると唇自体のコンディションはとても良くなる。良い状態で練習すると余計な力がはいらないから上達する。

ただ3日以上全く吹かないと少し違和感がでてきて、あまり休んだ恩恵を得られる感じがしない。長く休みたい場合でも一日10分ほど吹いておくだけでコンディションを維持することができる。

完全に何日も休み切るよりはこうやって毎日少しだけ吹いているほうが楽だ。精神的にも休まるし唇への負荷もほとんどない。

トランペット奏者にとっていかに上手に休むかというのはとても重要だ。上手な人はみんな上手く休む。休み方ももっと研究しなければと思う。

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今日はビザのためのエイズの非感染証明を受け取りにシベリア鉄道の歩道橋を渡ったが空がとても立体的だった。

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今日は大量のポプラの木の綿が舞っていた。ドイツもすごかったなあ。

ついにミュートなしで練習

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そしてついに劇場で練習できた。リハーサル室で1人2時間まで。2か月半ぶりにミュートなしで吹く。吹いた瞬間

自分の音ってこんな感じだったか…!

とかなりうれしくなった。今まで吹いている感覚のみで音はミュートから聞こえる音と吹奏感で想像していたわけだが、自分が吹いた音がそのまま聞こえるというのがあまりにもうれしすぎた。

いままでプラクティスミュートの「みょーー」のような音から広い部屋に響き渡る音。とんでもなく上達したような気分になる。

そして一番心配していた「音にノイズが入ったり悪くなったりしていないか」ということは全くなかった。

「この2か月間の練習でできるようになったことはミュートをつけている時しかできないのではないか」

というのも杞憂だった。むしろミュートをしていて難しいと感じていたことがオープンにしたらもっと簡単にできた。ずっと練習したり意識していたことは全く無駄ではなく、むしろミュートで練習していたことで良くなったところも感じられた。

自分の場合ではミュートで練習することでプラスに作用することも多く見つかったからそれもよかったと思う。

こんなに2時間が早く過ぎたのは久しぶりだった。やはりトランペットはめちゃくちゃ楽しい。始めて16年経つのに未だにできなかったことができるようになったという喜びを与えていくれるし、もっと上手になりたいと永遠に思わせてくれる。

2か月間仕事があったら気が付けなかったことにもたくさん気が付くことができたから、コロナも悪くなかったと思うことにしよう。

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