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旅好きに薦めたいロードノベルの秀作

「僕が死んだら、その灰をサハラにまいてほしい」
青年の遺言を果たすため集まった男女4人の行先は、サハラ砂漠の街メルズーガ。
パリから陸路で向かう。スペイン・アンダルシアのアルヘシラスからジブラルタル海峡を渡ってモロッコに入り、チャーターしたドライバー付きの自動車でアフリカ大陸を南下する。

亡くなった青年と4人、5人の群像劇。北アフリカの経由地タンジェ、フェズ、マラケシュなどのメディナ(旧市街)での匂い、光景を想像させながら物語は進む。そして感極まり深く染み入る終章。
男女の恋愛物語ではない、大切な人と繋がりたいという人間恋愛物語と言えばいいのか。

実はロードノベルという言葉を知らなかった。
ロードムービーの原作本を読むことがあってもそう呼んだことはなかった。
たしかに紀行小説というとしっくりこない。
帰ってくるのが旅。日常に戻れば旅での出来事が儚い夢のようだから、ロードムービーやロードノベルは独特の感慨をもたらす。

読後の満足感に浸りながら、読み終えた本を捲り返して手を止めたくだりは、たとえばこんな砂漠の描写。

 静かすぎて、ほんとうに静かすぎて、自分の心臓の鼓動しか聞こえない。キィーンというかすかな金属音が真空状態の頭の奥でずっと響いている気がするのは、これはたぶん耳鳴りだ。あまりの静けさに、逆に聴覚が焼き切れそうで怖くなる。
 いくつかの砂丘を越えるうちに、やがて左側に月が昇ってきた。ほぼ真円に近い巨大な月が姿を見せるなり、砂漠があっというまにその全貌をあらわした。ー中略ーそのあまりにもストイックな美しさに夢と現実の区別がつかなくなる。

同じ道を辿ってモロッコを旅したい。

#読書     #旅行 #ワイン #世界史 #エッセイ #サッカー #遥かなる水の音 #村山由佳

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