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「アイルランド人は故郷を去っていく。そして、世界中にパブをたくさん作ったのよ」

もし映画監督ができるならこういう映画を創りたいな、と思った。
「ベルファスト」というタイトルから、勝手に北アイルランドの人たちが抱えてきたものを投げかけてくる重々しさを想像していたけど、それは良い意味で裏切られた。

ベルファストで生まれ、少年時代を送った俳優ケネス・ブラナーの脚本・監督。
物語は、9歳の少年バディの視点で描かれていて、まるで日本の江戸長屋の人情物語のように、言い争いもあるが仲の良い家族や、まるで家族のような隣人たち。

楽しかった頃=美しいモノクロ画面

モノクロ画面の美しいこと、ケネスが好きだったんだろう映画の場面がいくつも使われている。「真昼の決闘」のゲーリー・クーパーとグレイス・ケリーはもしかしたら美男美女に描いた両親と被らせたのかな。
「チキ・チキ・バンバン」や「スタートレック」があの頃が楽しかったと伝えてくれる。

アイルランド人は故郷を去っていく。そして、世界中にパブをたくさん作ったのよ
アイルランド人が生きるために必要なものは、電話とギネスビールと「ダニー・ボーイ」の楽譜だわ
(バディの母親のセリフから)

カソリック、プロテスタント。ほんとうのところは僕には理解できないけど、宗教を背景にした「分断」に、かの地の人たちは、去る人と留まる人に分かれるのだそう。
ダブリンには行ったことがある。
今度は北を旅してみたいな。

音楽も素晴らしい。

かけがえのない少年時代。家族や近所の人たちのことを美しいスクリーンと楽しい音楽で感じさせてくれた90分。
長さを感じさせないとはいえ3時間の上映、文学的印象の「ドライブマイカー」と正反対の映画だった。
ただし色々な仕掛けを楽しめたのはどちらの映画にも共通していたけど。

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