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青函連絡船を降りて、青森発上野行の夜行列車に乗った。

はじめての北海道は20歳だった。
夜行列車と、3年後に幕を閉じる青函連絡船を乗り継いでひとりで出かけた。
きっかけは、山形の月山で知り合った人がニセコモイワスキー場で合宿を行う某スキー部を紹介してくれ、思いかけずひとりでその合宿に参加させてもらうことになった。
モイワ。当時は全国版のガイドには載っていないローカルなスキー場だった。

合宿に数日顔を出させてもらったあと、道東まで足を延ばし旅を続けた。
しんしんと雪が舞う夜に列車を待ったホーム。学生の分際で、寂れた繁華街の長屋造りのスナックに飛び込んだ釧路の夜。急行で隣合わせた女性は、2時間ぐらいずっと失恋話を話してくれた。

帰りの青森駅。
青函連絡船の降り口から続く上野行きの列車が待つホームは、その場所その時間帯の特別な雰囲気に包まれていた。
いくつもの見送りの輪。吐く息の白。駅のアナウンスのイントネーション。

僕は車両に乗り込み上段のベッドに荷物を置いて横になった。

ホームに制服の女子高生と彼女を囲む家族たち見送りの輪があった。受け取った果物やお菓子を手に頷く女子高生。
発車時刻が近づいて、女子高生が車両に乗り込んだと思ったら僕の下の寝台だった。
僕の下の窓。見送りの人たちが車両に近づいて、ガラス越しに彼女に手を振っていた。
ホームの人たちの口の動きを見ていた。

発車ベル。
ドアが閉まりガタンという音とともに走り出した。
しばらくして寝台の下から鼻を啜る音。他の客にも聞こえていると思った。

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