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新たな興味を掻き立ててくれた「新・ローマ帝国衰亡史」

ローマ帝国の物語は面白い。
あまりに広く、深く、「詳しくなくても、どんな風に美味しいか」で語れるワインのようにはいかない。
それでも、「初心者」なりに関連書物や映画などに触れるたびに発見があって興味は尽きない。

南川高志著「新・ローマ帝国衰亡史」が面白かった。

帝国衰退に焦点を当てた内容は、古代ローマを通史で書かれたものとは異なる興味を刺激された。

たとえば。”通史”では、ローマ衰退の起点を一神教キリスト教の国教化にもあると理解していたし、それは成功史としての「寛容」に対する判りやすい整理なんだけど、そんなシンプルではないと思った。

「ローマ人である」ことは抽象的な概念ではなく、その内実は、軍隊や生活様式など具体的な要素であった。しかし実際には、「ローマ人である」というアイデンティティは国家を統合するイデオロギーとして作用した。
しかも暮らしに密着した具体性を備えていたから、ローマ帝国に参加することによってより良い状況になれるという期待を保証するものだった。
それゆえ、周囲の人々を帝国に招き寄せたし、とりわけ有力者たちの利害に合致していた。その結果ローマ帝国は魅力と威厳を持つ、「尊敬される国家」たり得たのである。
(終章:P.203より引用)

ローマ帝国をローマ帝国であらしめたアイデンティティは、4世紀後半に変質し、排他の思想が生まれてしまった。

紀元前753年に現在のイタリア・ローマの地で建国されたローマ帝国は、王政、共和政、帝政と政体を替えてもなお継続し、東西に分かれた後の5世紀の西ローマ帝国滅亡でひとつの幕を閉じた。

世界最大級の1200年の大河ドラマのエンディングは、カエサルを筆頭にした古代ローマの超有名ヒーローの物語とは違う面白味がある。

もう一つ思ったこと。改めて、”ローマ帝国”から教訓を得ようなんて陳腐な考えをもっちゃいかんと。
現在の価値観、善悪の物差を捨てて楽しみたいと思った。

#読書 #旅行 #ワイン #世界史 #エッセイ #サッカー #ローマ帝国

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