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「ちゃわん最中」のこと

かつて有田には「茶わん最中」という銘菓がありました。
蓋付きちゃわんの形をした、甘いあんこが詰まった最中でした。

春陽堂というお菓子屋さんが作る「茶わん最中」は、有田焼のまちならではのお菓子として、まちの人たちにたいへん愛されており、有田焼の商社や窯元が出張に行く際の手土産としても重宝されていました。

ところが、今から二十数年前にお店が閉店し、「茶わん最中」もその姿を消してしまいました。

このエピソードを知った私たち灯す屋は、空き家になっていた元お菓子屋の「春陽堂」を拠点に活動していたご縁もあって、この最中を新しい形で蘇らせることにしました。

現在取り組んでいる「ちゃわん最中プロジェクト」
この事業に関わって3年、商品化してもうすぐ2年になります。

私が有田に残ろうと思ったのは、「灯す屋」「ちゃわん最中」があったから。この二つがなかったら、有田には残っていませんでした。

ちゃわん最中を復活させた時、まちの皆さんがたいへん喜んでくれたこと、そして「春陽堂」の亡くなったご主人の奥様の言葉がずっと心に残っています。

「もなかの形や中身が変わっても、『ちゃわんもなか』という名前が続いていってくれたら私は嬉しいのです」

ちゃわん最中のことは、これから少しずつお話していこうと思います。

私が有田に来たのも、ちゃわん最中に出会ったのもすべては巡り合わせ。
お菓子屋ではない私たち灯す屋が、「ちゃわん最中」を復活させ、それを世に出すことの意味とは。
今も正直悩みながら事業に取り組んでいますが、ちゃわん最中を手にしたまちの人の笑顔が何よりうれしく、それが私がここで暮らすモチベーションのひとつになっているのは間違いありません。



ちゃわん最中について
https://tomosuya.com/chawanmonaka/