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じゃない方ゲー人による、平成ゲーム業界回顧録 #17

プロジェクトの作業は放課後の時間を使っていたため、漫画のアシスタントのバイトがある週はその後に仕事場に向かう形で行っていた。

こうなるとさすがに時間が足りなくなってくるので、僕はそれまではあまり利用していなかった仮眠室を借りるようになり、仮眠から起床して直接学校に向かうという、自宅に帰らないスタイルで時間をねん出していた。

プロジェクトの時間は放課後ということでバイト扱いとなり、本社からバイト代が出されていたので、その意味では並行してアシスタントをする必要はなかったのだが、ようやく仕事にも慣れてきて任されるページも増えてきたようなタイミングだったのと、緊張感があり先輩の経験も吸収できる職場の雰囲気が心地よく、先生の言葉も含めてまだまだ勉強したい気持ちがあったので、やめることは考えていなかった。

ジャンプの年始の特売号では「まじかる☆タルるートくん」の本編とは別に4コマ漫画が掲載されることになり、アシスタントみんなでネタ出しをして、先生にプレゼンしたことがあった。

自分のアイデアは残念ながら採用されなかったのだが、後日その時のネタで描いた魔法のアイテムが本編に登場していて、とても嬉しかった記憶がある。多分先生は僕の4コマの事は忘れていたと思うが、アイテムのアイデアだけは頭の片隅に残っていて、何かのきっかけで引っ張り出してくれたんだと思う。

他にも歴代のアシスタントの話になり、「ああっ女神さま」などの藤島康介先生は絵柄も似ているので分かりやすかったが、意外なところでは当時ヤングサンデーで連載されていた「Bバージン」などを描いていた山田玲司先生もここでアシスタントをしていたと聞き、ちょっと驚いた。

というのは、僕はこのときリアルタイムで「Bバージン」を読んでいて、イケメン(に仕立て上げられた)内面オタクが愛する女性のために童貞を貫くという斬新な設定や、少女漫画っぽい心理面での描写が画期的で注目していたのだが、絵柄的にはまあちょっと雑というか、上手いというカテゴリではなかったので、E川先生とは結びつかなかったからだ。

僕の戸惑いを察してか、話をしてくれたチーフは「まあ、山田先生はここで絵以外の部分を吸収して去っていきましたからね・・」と苦笑いしながら、今のアシスタントに女性がいないのは過去にひと悶着あったからとか、突っ込んでいいのかよくわからないような話題も提供してくれた。

ちなみに、E川先生自身は大御所の本宮ひろ志先生のアシスタントを務めており、その時のアドバイスで作品にエロ描写を盛り込むことにしたという逸話があるが、実際、僕が最初に仕事場に挨拶に行った時も過激すぎて1話丸々ボツになった原稿が置いてあったくらいで、「東京大学物語」など、その後の作品の内容を見ても、創作のテーマの一つにしていたのは間違いないと思う。

アシスタントの仕事ではそんな創作の現場に身を置く楽しさはあったが、プロジェクトの現場では、慣れない大型タイトルの開発ということもあり、毎日のようにトラブルが発生し、その解決に追われることとなっていた。

#創作大賞2023

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