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JAMがNECと資本提携をした理由「新時代金融の、真ん中へ」

2023年9月1日、各社から報道があった通り、当社Japan Asset ManagementはNECとの資本業務提携を行いました。

引用:2023年9月7日 日経新聞

提携後、多くの方からお祝いの言葉やご質問をいただきましたが、私自身の言葉で今回の提携について詳細に説明できていませんでした。今回は、提携の背景や提携後の事業活動についてお話ししようと思います。

金融業界そのものに感じていた課題感

「資産運用という良識を、日本の常識にする。」
これは、私がJAMを立ち上げた時から掲げ続けているビジョンです。ただ、正直に申し上げると、今の金融業界の仕組みのままではこのビジョンの実現は困難だと感じています。

多くの金融機関にとって、サービスの中心は金融資産の大きい「富裕層」であるのが一般的です。20、30代のこれから金融資産を作っていく「資産形成層」に対して、資産運用のコンサルティングで採算を合わせるのは容易ではなく、手数料ビジネスで成り立つ金融業界の課題でもあります。

富裕層に特化してサービスを展開することは、ビジネス的に見ると合理的な判断だと言えますが、それだけでは本当に資産運用のアドバイスを必要としている人が置き去りになってしまいます。

質の高いファイナンシャルアドバイスを、金融資産の大きさに関わらず全ての人に届けたい。特にこれから資産を作っていく若い層に対して、どのようにサービスを届けるか。それを実現するにはテクノロジーの実装が不可欠であると創業当時から考えていました。

そんな中、2021年の秋に縁あってお付き合いが始まったのがNECです。

NECとのコンタクトのきっかけ

NECとのコンタクトのきっかけは、野村證券時代の先輩で400Fの中村仁社長からのご紹介でした。

大先輩中村仁さんが展開している「オカネコ」
「お金の問題を出会いで解決する」をミッションに掲げ、テクノロジーによる金融業界変革にチャレンジされています。

「NECが、自社の金融機関向けプロダクト(Avaloq)の活用について議論できるIFAを探している」ということで、ご担当の方をご紹介いただきました。打ち合わせを重ねていくうちに、NECは金融事業進出を目指して、資産形成層をターゲットにした金融サービス開発を構想していることがわかりました。

NECとタッグを組むことができれば、創業当初から描いていた「テクノロジーによるビジョンの実現」に向けて大きく前進することを確信し、NECの金融事業進出についての情報交換が始まりました。やがてNECの金融サービス開発に向けた第一歩となるプロジェクト「福利厚生としてのファイナンシャルアドバイスサービス」を共同で提供していくことになりました。これはNECの社員様向けにサービスを提供し、NECの金融事業進出の実現可能性を議論するものでした。プロジェクトを推進するなかで、より良いサービス提供を実現するための手段として、NECと当社の資本提携のアイデアが浮上し、本格的な議論が始まりました。

提携を後押しした、生成AIブームの到来

資本提携の具体化に向けた議論を進めているさなか、私の意思決定を後押しした出来事がありました。2022年11月末にOpenAIが発表したChatGPTの登場です。

このニュースを知った瞬間、私はファイナンシャルアドバイスの大部分が生成AIによって劇的に変化すること、そしてそんな時代が想像よりも早く到来することを確信しました。顧客の話を聞き、現状を分析し、最適なアドバイスを提供するといった一連のコンサルティング業務が、ChatGPTであれば簡単に実現できるようになる。もしこのまま手を打たなければ、JAMは変革の波に飲み込まれてしまうと感じました。

逆にテクノロジーの力を味方につければ、この変革をリードしていける。そう考えた私はNECとの提携を決断しました。AIを追い風にし、ビジョンへの歩みを加速させる覚悟を決めました。

FinChatは株式調査に特化したchatGPTを搭載した、財務分析を手助けするためのAI。
基本的なファイナンスに関する内容を対話形式で把握できるようになりました。

NECと共につくる、「新時代金融」

2023年9月1日Japan Asset ManagementはNECと資本提携を行い、NECグループの一員になりました。
提携をきっかけに新たにブランドステートメントを策定しました。

NECとJAMが描く未来は、従来の金融のイメージを根底から覆すものです。先端テクノロジーを駆使し、これまでにない利便性と専門性を兼ね備えた「真に顧客本位の金融サービス」を生み出していく。それが、私たちの目指す「新時代金融」です。
このステートメントは、JAMこそが「新時代金融」を体現する会社になる、新時代金融のど真ん中を突き進む、という宣言の意味も込めて定めました。

NECとの提携からおよそ9ヶ月の間で、大きく3つの取り組みを進めてきました。

①テクノロジーを活用した事業のデジタル化

テックカンパニーであるNECの知見を活かし、事業全体のデジタル化を進めています。
お客様向けには、資産シミュレーションツールを開発しました。現在はNEC社員に限定でリリースしており、直感的な操作で、資産寿命や期待リターンの確認ができます。
アドバイザー向けには、生成AIを活用した面談履歴の自動作成ツールや、SFAの最適化によるマーケティングと営業プロセスのアップデート活動を行っています。

②行動経済学的とAIを掛け合わせたファイナンシャルサービスの開発

イギリスのスタートアップが開発した、行動経済学を応用したAIによるリスクの適格性把握とアドバイスを行うサービスです。これによりお客様の心理的な側面にフォーカスしたファイナンシャルアドバイスを実現します。

近年ではロボアドを始め、デジタル完結の金融商品が増えてきましたが、お客様の年齢や年収、金融資産額などの定量的な情報でしかリスク属性把握ができていません。お客様の納得感を醸成できず、「とりあえず少額からの積立から」とお試し感覚の利用に留まっているケースも見受けられます。

資産運用のコンサルティングにおいて、定量的な情報と同じように重要なのはお客様の「心理」に寄り添うことです。お客様の話に徹底的に耳を傾け、心理を深く理解してアドバイスを行うことこそ求められています。これは私自身が今でもアドバイザーとしてお客様と接しているからこそ痛感している部分です。

ただしビジネス的な観点で見ると、このようなきめ細やかなアドバイスが提供できるのは、ごく一部の富裕層に限られてしまうのが現実です。
一方、現在開発中のAIでは、行動経済学の観点から人間の心理や行動の情報を統計学を用いて分析することで、お客様の心理面を幅広い観点から把握できるようになります。

お客様の定量的な情報に加えて、心理を汲み取った「最適」なポートフォリオをAIが提案できるようになれば、これまである種「アドバイザーの腕の見せ所」でもあった部分がAIで代替できてしまうのです。

これにより金融資産をこれから作っていく若い層にも均質かつ質の高いコンサルティングが提供できるようになります。将来的にはデジタル上でファイナンシャルアドバイスが完結できるようなソリューションを目指しています。

詳細 については弊社取締役会長の岩田がNEWSPICKSでもお話ししているので、
ぜひご一読ください。
引用:NEWS PICKS様の記事のOGP画像

③福利厚生としてのファイナンシャルアドバイザリーサービス「Shines」の開発と運用

日経新聞でも大きく報じていただいた通り、企業の福利厚生としてのファイナンシャルアドバイザリーサービスをNEC社員様を対象に展開しています。
サービス名称は「Shines」。「社員」と「輝く(shine)」のダブルミーニングになっています(ほぼダジャレです)。

IFAならではの中立な立場でのアドバイスやセミナー、NECの福利厚生や退職金制度を熟知したアドバイザーの専門性などを高く評価いただき、サービスリリースから約半年を迎えた2024年4月の時点で、ご相談数は1000件以上、預かり金額は15億円を超える実績となっています。

サービスを開始してから、多くのお客様がShinesをきっかけに資産運用を始めてくださっていることに気づきました。これまでファイナンシャルアドバイスを受ける機会がなかった方々に「福利厚生」という切り口でその機会を提供できており、資産運用の裾野の広がりを実感しています。現在は、ShinesのNECグループ外への導入提案を進めており、今年中に1社以上のご導入を目標としています。

今回の提携で得られた各ステークホルダーのメリット

今回の資本提携によって、お客様やNEC、そして当社にメリットが生まれるか?懸念するべき点はないか?膝を突き合わせて議論を重ねてきました。最終的な意思決定の要因ともなった各ステークホルダーのメリットをご紹介します。

お客様

  • 資産形成層から富裕層まで金融資産の大きさの垣根を超えて受けられる質の高い金融サービス

  • NECの知見を活かして開発する各種デジタルサービスによる快適な顧客体験

NEC

  • JAMの知見を活用した金融事業進出

JAMの社員

  • NECのノウハウを活かした業務フロー構築と業務のデジタル化・AI化による効率向上

  • ストックオプション制度による資産形成の機会拡大

JAM

  • テクノロジー活用による金融業界への新しいインパクト創出と会社価値の大幅な向上

  • 株主の多様化による会社のガバナンス強化

  • NECから取締役を2名招きつつも、独立した経営体制をお約束いただいたことで実現した「当社の強み」を生かした経営体制

企業文化含めて当社を最大限に理解してくださったNECの岩田さん、渡辺さんを取締役としてお迎えすることで、株主構成と取締役会の構成こそ変化したものの、事業の意思決定のスピード感や大胆さ含めて、今まで通りのJAMと変わらず事業活動ができています。

そしてこれまで取締役として会社を支えてきた武石・笹村は、執行役員に就任しました。肩書きこそ変わったものの、今までと変わらない形で引き続き現場をリードしてくれています。

このように、今回の提携はJAMの強みを損なうことなく、むしろその可能性を最大限に引き出すものとなりました。 NECという最高のパートナーを得て、そして JAMのメンバーの結束も固く保ちながら、新時代金融への挑戦ができる環境を整えることができました。

最後に

NECとの提携のニュースが報じられた当時、
「JAMのスピード感が落ちてしまうのではないか?」
「親会社に左右される会社になってしまうのか?」
等、ネガティブなご意見やご質問も頂戴していました。
ですが、提携から半年以上経った今でも、上記のようなネガティブな事象は一切発生しておらず、この提携が正しい意思決定だったと日々感じています。
正しかった、と胸を張って言える理由の一つに、提携後から一人の社員も離職していないことが挙げられます。
「理解を得られない社員もいるかもしれない」と危惧していたので、これは私にとっても1番嬉しい結果でした。さらに提携以降、新卒・中途合わせ14人が新たにジョインしてくれました。
総勢52名の会社となり、いわゆる「50人の壁」を超えたJAMですが、改めて社内外の皆様から大きな期待を背負っていることを再認識しています。より一層襟元を正しつつ、ビジョンに共感してくれる仲間は引き続き募集していますので、ご興味ある方はいつでもご連絡ください。

昨年12月に社内で行なったクリスマスパーティーの様子
 NEC社員の方にも参加いただきました

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