見出し画像

ノルウェーからの手紙

「日本に、あなたに愛を送ります
 あなたは完璧です
 自然から創られたものに
    自己嫌悪に陥る必要が
 あるものなんてないでしょう?」

これは、かつて、
ノルウェーの友人から届いた、
おとぎ話のような、本当の話

ノルウェーからの手紙

時々、世界のすべてを感じ 
一つになれる瞬間を感じる
この物語をあなたに伝えたい

日曜日に私は大好きな場所へと車を走らせていった
一人の時間を自然の中で楽しむために
風と海を感じ、あてもなく散歩をする
柔らかく明るい日差しの中で自然の香りを楽しみながら

画像1

太陽はまるでフィヨルドにキスをしているかのよう
丘と小さな谷を彩る日の光は
ここが魔法の場所だということを約束する
ここに存在できる喜びに心は躍る

考えをめぐらせなくても足は自然に行き先を見つける
目の前に広がる美しい世界への憧憬 
鳥達に微笑みかける
時計を気にしなくていい世界 
時間はこの場所には存在しない
限りない広がりと潮の香り 舞い踊る風
すべてがただそれだけでいい世界

ふと、カモメ達が不安げに私を見ていることに気付いた
アザラシは私を見るなり海に潜ってしまった
私は彼が戻ってくることをじっと待っていたけど、岩と波の中に彼は隠れたままだった

画像2

私は動物達が警戒心を抱いていることが嬉しかった
悲しみも感じるけれど、
彼らの恐れは理解できるものだから

私は引き返し、
丘にある古い牧羊場の道を歩いた
突然、丘の頂上で羽を休めているカモメの群れを見つけた
カモメの群れとの思いがけない遭遇 
あまりの美しさに私は息をのんだ
彼らの憩いの時間を邪魔したくなかった

私はただそこに立ち、
私が彼らを愛していること、
そして怖がらないでほしいことを伝えた

一羽のカモメが私のすぐ側を飛んでいた
丘を歩く私についてきながら
とても親しげに私の近くをカモメは飛んでいた
彼は鳴き声をあげ、群れに飛び立つように伝えた

画像3

飛び立つカモメの群れはたとえようもないぐらい美しく
私は己の小ささを悟った

鳥の群れはたやすく人を殺せる、
でも鳥達はそうするだろうか?
人は恐れを抱くけど、
鳥達は愛することしかしない 
彼らは私を愛している

鳥達の愛を感じる 
それは理解できて分かち合えるものなのだと

カモメ達は私の周りを飛びながら何かを議論しているようだった
まるで政治家達が休憩時間中に密談するように
「彼女を信頼できるだろうか? 
   人間達はここでとても冷酷なことをしている
   誰も彼らを見ていないと思っている時は特に。」

その感情は痛い程よく分かる

彼らは私に子供達がネズミを踏みつけて殺す様や、
大人達がカモメの群れに石を投げる様子、
心を冷たく閉ざしてこの世界にある愛や美しさに目をむけていないことを見せた

理解できることだった 
だからこそ心の痛みを感じた

私はカモメ達のことや、目の前の自然、道、
夏に見る羊の群れを愛している
そのすべてを心にとめ愛している
無知なために利己的になり、
混乱の霧の中で躓く人間達のことも
そのすべてを上空の鳥達と分かち合いたかった
彼らの議論はまだ続いている

心の痛みに私は平和を願った
私はまだ希望があることを思い出した
この世界のいたる所にいる善と愛のために
必死で生きている人達を思った
その存在を鳥達と分かち合えるように

私はカモメ達に心を開いた 彼らに私の心
私の心に生きる人達の想いが見えるように

突然、私は大きな愛に包まれた
匂いも視界も音も消え去った
ほんの数瞬だけ鳥達と私はすばらしい平和の中にいた

動物達は恨むために恨んだりはしない

平和の瞬間は終わり、
鳥達は北へと飛び去っていった
話し合いはすんだ
もうわだかまりは存在しない 
ルールに縛られることなくこの瞬間を生きる 
次に待つものはなんだろうか?

画像4

私は自分が泣いていることに気付いた 
心に激しい痛みを感じる

私は愛する
私の目は大きく開かれた

心にもはや恐れはない 信念を抱いて

静けさを聞くことはできる 
鳥達から与えられた信頼に心は震える
膝から地面に崩れ落ち 
私は泣いていた 足の感覚が薄れている
世界が見える とてもはっきりと
私がその一部だということが
すべてが私の中にあることを感じる

五感が戻ってきている
頭を軽くふり 立ち上がり歩き出す
体がとても軽い
心は平和で満たされて
子供のように無邪気に駆け出していく

未来への準備をしよう
心を開き 信念をもって

画像5

都市もまた自然の一部
それは手付かずの自然と何も変わらない
人もまた自然な存在
だから人間が創るものも自然でなくては

街もまた愛されなければいけない
車は自分の意思で造られたわけじゃない
それは自然から創り出されたものだから
車もまた自然なのだから

日本に、あなたに愛を送ります
あなたは完璧です
自然から創られたものに自己嫌悪に陥る必要があるものなんてないでしょう?
愛は世界を変えるもの 
そして愛は癒してくれるもの

私は自分の車や自分の家の前の電灯を愛しています
何故ならそれは母なる自然から来たものだから

何事も愛すれば良い方向に向かい、
憎しみを与えれば切り裂かれてしまう
ただ愛すること 何も心配はいらない

愛をこめて いつも

私にとってこの手紙は時のかけら
人の歴史の中の一握りの時の砂
永遠の愛の源はいつもそこに在り
私達はいつでもそれとつながることができる
それは私達のまわりに常に存在する
私達に必要なことはそれを見つけることだけ

この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

49,931件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?