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空模様

重い木のドアを押し開けると、薄暗いフラットの玄関に光が流れ込む。
数週間前の青空が広がる暖かい日々が嘘だったように、この日はロンドンらしい薄いGreyの空。また冷たい風が流れる日々に戻った。

2020年3月にイギリスが最初のLockdownに入った日から始まった、そして今では日課となった、近所の公園への散歩へ出かける。

ひんやりとした空気の満ちた、いつもの木のトンネルを歩く。脈のような裸の木の枝が張り巡らされていた空間に、だんだんと新禄が滲み出てきていることにふと気がつく。こんな空の日は緑がしっとりと、より鮮やかに見える。

曇り空、そして
新しい葉が茂り始めた樹々
著者撮影

緑の向こうに広がるGreyの空を見ながら、オーストラリアから引っ越してきた頃のことを思い出した。当時は空を見上げるたびに、オーストラリアの広い青空を思い出して、Greyの広がる空と頼りなさげな日の光を少し疎ましく感じていた。

ロンドンでの生活が長くなるにつれて、Greyの空や、一日のうちに目まぐるしく変わる空模様にも次第に慣れていった。そしてわたしの毎日もロンドンの空模様に左右されるようになった。

雲の間から時折降り注ぐ光
ロンドンでよく見かける空模様
著者撮影

青空と太陽の光に満ちた日は、そんな日が多くはないロンドンだからだろうか、心のなかにまで陽の光が入ってきて、浮き浮きとした気分になって、”外へ出かけなくては”、とOutdoorで過ごす時間をその日のスケジュールの中から捻り出す。そんな日はやはり皆同じ気分になるのだろう。街中の公園や少しでも芝生のあるSpaceは人で溢れていて、誰もが普段よりFrendlyになり、そんな皆の気持ちのVibrationが街の空気を賑やかなものにする。

一方、Greyな空の日は、取り立てて”Outdoorで時間を過ごさなくては”という気持ちにもならず、いつもの空のもと、いつもの仕事や作業を、いつものように落ち着いてこなしていく。道を行き交う人々もいつものようにお互い”我関せず”といった様子で、街は忙しい中にも淡々とした落ち着きのある雰囲気に包まれる。

そしてここ数年は、晴れの日が続くとちょっとParty疲れのような気分になり、オーストラリアの連日の青空に慣れていたわたしだけれども、Greyの空のもとに広がる落ち着きのある時が戻るのを密かに心待ちにしている。

Greyの広がる空の間から降り注ぐGentleな光とそこに広がる緑を目にして、ロンドンの空模様とわたしの気持ちが今日もSyncしていることに気がついた。

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