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隈研吾さんが僕の会社のデザイン監修を引き受けてくれた時の話。

こんにちは。

私は東京都東村山市で建築板金業を営んでいるウチノ板金内野友和です。

今回、東京都東村山市の商店街の築52年の中古物件のリノベーションをするに隈研吾建築都市設計事務所さんにデザイン監修をお願いすることになりました。

「建築」という大きな枠組みではあるのですが、僕は隈事務所さんのお仕事は一度もしたことがなく、もちろん世界的な建築家である隈研吾さんとはお会いしたことがありませんでしたが、幾つものご縁とご縁が重なり、こうやって一緒にお仕事をさせていただくことになりました。

今回は僕がなぜ隈研吾さんと一緒にお仕事をする事になったのか、を綴っていきたいと思います。


2人のキーマンの話

(中央左) タニタハウジングウェア 谷田さん (中央右)植田板金店 植田さん 

今回のデザイン監修を引き受けていただいた事件を語るには、まず、僕の板金屋さん仲間、岡山県の植田板金店植田社長と板金建材メーカーのタニタハウジングウェア谷田社長のお二人の紹介が必要になります。

植田さんは「小屋やさん」という小屋ブランドを作っているいつもアグレッシブで変わった板金屋さんで、ドローンで屋根点検をする社会貢献プロジェクトで一緒に活動をしています。板金屋さんという渋い商売の概念をことごとくぶっ壊し、新しい道を切り開く腕力と、誰に対しても忖度ない対応とトーク力を持ち合わせる不思議な板金屋さんです。

谷田さんは東京の板金建材メーカーの社長でプライベートでも仲良くさせてもらっています。谷田さんはチャリンコに乗って日本全国どこでも行っちゃうアクティブ社長(夏になるとチャリで旅する中学生いるよねw)で、僕が行動力の化身と拝んでいる方です。笑顔が素敵でいつもヘラヘラ、、、い、いやニコニコしています!(笑)

2人に共通することが「とりあえず行動する」。
なにをするにしても、これが重要なことだと、2人の行動力はいつも勉強になってます。

隈さんに板金折鶴が渡るまで

ある朝、谷田さんから一本のLINEがあったんです。「内野君、今日は植田さんの誕生日なんだよね。実は今夜、植田さんとご飯食べるんだけど、プレゼントで内野君の作った板金折鶴を渡したいんだよね。今日夕方に会社に取りに行くから、それまでに作っておいてくれない?」って。

まあまあな無茶振りですけどw
でも僕の大好きな谷田さんと植田さんの為なら!と思い、気持ちを込めて板金折鶴を作りました。
僕の会社では屋根工事以外にも板金を使った工芸品の製作販売もしてるんです。

板金折鶴(真鍮製)


そして夕方、谷田さんが僕の会社の最寄り駅まで板金折鶴を取りに来てくれて、直接お渡ししました。

谷「急な対応をしてくれて、本当にありがとうね!」
僕「全然大丈夫です!板金折鶴を選んでいただき、ありがとうございます!」
谷「そう、今夜は隈研吾さんも一緒に食事するんだよ!」
僕「え!!すごい!!!羨ましい!!僕も連れて行ってください!w」
谷「今日は無理なんだ。ごめんね!!」

あの隈研吾さんと一緒に食事ができる人がこんなに近くにいたなんて~と、指を咥えて、その場を後にしました。

・・・その夜、植田さんからLINEが。
「内野君、折鶴ありがとう!せっかくもらった折鶴なんだけど、隈さんが折鶴板金の技術に感動していたから、あげちゃった!すんごく喜んでいたよ〜(笑)」って。

「え・・・?」どんな流れかよくわからないんですが、
隈さんが「お!かっこいい!すごい!!」ってリアクションをしてくれたようで、植田さんが「じゃ、隈さんにあげるよ。僕はまた内野君に貰うから(笑)」
という流れだったようです。
僕は分かるんです。植田さんはいい感じで気持ちよく酔っていたんだと思う。w

そんな文章と一緒に、LINEで届いた写真がこちら。

緑青銅板折鶴を手にする隈研吾さん

僕らが試行錯誤して作り上げた商品が画面の中でしか見たことがない業界の巨匠の手の上にある。ついにここまで羽ばたいたかと感動。。。
植田さんのいる岡山方面に向かって最敬礼した。あざす!!

隈事務所へのお誘い

ある朝、その植田さんから一本のLINEがあったん。
植「内野君、僕、今日、隈事務所に行くんだけど、一緒に行く?ただ、隈さんと会うことはできないけど、隈事務所内を見学できるから興味があったらおいでよ〜。」と。

僕「是非行きたいです!」って即答した。
ただ、なんで植田さんが人の会社の事務所なのに「YOU来ちゃいなよ」って行っているのが理解できなかった。まあいっか。植田さんだからw

隈さんとお会いできなくても、日本を代表し、海外にチャレンジをしている設計事務所さん、それに有名なあの外苑前の事務所に入らせていただけるのであれば、何かの勉強になるし、刺激にもなるに決まっていると思い、ワクワクしながら妻と行きました。

植田さんが経営するの植田板金店さんは、隈さんがデザインした小屋や家具を制作・販売しています。隈事務所さんとは随分前からご縁があって、お仕事で隈事務所さんに行く予定だとか。

隈事務所のスタッフさんとのお話し

事務所に到着後、植田さんの案内(笑)で隈事務所さんのワークスペースを見せてもらったり、スタッフの方とお話をさせていただいたり、事務所から外苑の景色を眺めたり。世界と戦う会社を肌で感じることができて、自らを奮い立たせる為にも、やっぱり来てよかった〜と刺激を受けていました。


植田さんと妻と僕 この後に起こる出来事はまだ知らない

それから植田さんと隈事務所のスタッフさんと雑談。
僕らの今やっている仕事や展開している和國商店のことをお話しさせてもらった。

話の流れで商店街の築50年超えの中古物件を買ったという話をしました。ちょうどその日の1週間前に不動産契約を終えたばかりだったんです。

僕「この物件は衝動的に買ったんですよね〜何するかも決まってない。けど、僕が育った街で、今はシャッターが降りているのが目立つ商店街。いつかこの物件をアレンジして地域のベンチマークにしたいと思っているんです。そして板金職人の技術をアピールできるような場所にしていきたいんですよね〜」

と話していたら、食い気味に植田さんが、
「あ、じゃ隈さんにデザインをお願いしてみれば?」と真顔で。

僕は「いや、そんな超絶世界的な建築家に、僕らの物件なんて、お願いできないっすよ(汗)」と返しました。

すると、隈事務所のスタッフさんも、
「隈はそういうの興味あると思うので、聞いてみましょうか?」と真顔で。

マスクをしているので、この二人の表情がちゃんと分からない。ハメられてるかもしれない。。おい、どっちだ。。。

「あ、じゃ、お願いしちゃいますか?(にやにや笑)」と、僕が言ったところ、

隈事務所のスタッフさんが、
「では隈に今から時間取れるか確認をしてみます」と話が急展開。昇龍拳。

隈さんのスケジュールは隈事務所のスタッフさんが把握できるようになっているようで、スタッフさんは隈さんのスケジュールを確認して、どこかに電話し始めて、色々と調整をしていただいた。

「内野さん、5分でよければ時間を確保することができそうです。いかがでしょうか?」と。

会えるらしい。
今まで出たことがない、変な臭い汗が全身の毛穴から出たのを感じた。w

隈さんと対面

隈事務所さんは外苑前の駅近くにいくつか事務所がある。今までお話をしていたのは、16階建てのビルの中。そこから徒歩1分のところに、隈事務所の本丸がある。よく隈さんがインタビューを受けていたり、テレビで取材を受けたりするところ。

急いでその事務所に移動し、エレベーターに乗り、背の高い本棚と隈さんの著書が飾ってある屋上の部屋に通してもらった。まさに天守閣だ。
「もう少しで隈が来ますので、お待ちください」とスタッフさん。

ドキドキしながら待っていると、隈さんが登場。
「で、でかい・・」よく言われるようだが、本当に大きかった。
それが第一印象。
でも、その大きさはオーラと言った方が適切なのかもしれない。

隈さんが席に座ると植田さんが僕らを紹介してくれた。同じ板金屋ということ、先日渡した板金折鶴は彼らが作ったということ、それと板金の技術で世界に挑戦をしているということ。

隈さんから「素晴らしい折鶴をありがとう。細かいところまで見させてもらったけど、感動しました。」と言ってもらえた。

僕は「隈さん、知っていますか?植田さんがいつもの酔っ払った関西ノリで渡しただけですw」と心の中でツッコミを入れた。

続いて、植田さんが「で、隈さん、ちょっと内野君からお話が・・・」と切り出してくれた。植田さんはこっち見て気持ちの悪いウィンクみたいなのをした。

僕から商店街の物件を購入した経緯や想いを伝えた。

僕は普段から話が長いと言われる。
特にテンションが上がると、さらに長ったらしくなる。悪い癖だ。

やはり、今日も長いようだ。
同席していた妻が話の途中に耳元で
「もっと簡潔に・・・」とぼやいた。

いや、ささやいた。
船場吉兆のささやき女将の会見を思い出してもらいたい。
リアルにあんな感じだったw

「あぁ、で、で、もし可能であれば、隈さんにこの建物の設計していただきたいんです!」と懇願した。

隈さんが30秒ほど、僕の目をじっと見て、「うん。面白そうだね。ぜひ一緒にやりたいね。」と言ってくださった。
いや、嘘です。即答だった。

それから、「東村山ってどの辺?外苑前から電車でどのくらい?」と質問された。
あと、名刺交換、写真を一緒に撮ったりもした。
そのくらいしか記憶がない。いや、そのくらいしか時間がなかった。w

その時の写真がこちら。

隈さんと僕と妻

隈さんと植田さんは次の予定があったようで、話はこれで終わった。
残された僕の手の中にあったのは、手汗でびちゃびちゃになった隈さんの名刺。ポケットに入れっぱなしで洗濯機で洗ってしまった次の日の名刺みたいになっていた。

帰りの電車。
興奮を抑えられない僕と妻。
「けど、これって社交辞令かもしれないよ。植田さんの手前、目の前で断ることができないって。。」と夢から現実に戻る話もした。

一晩寝た次の日の朝、隈事務所のスタッフさんから早速メールが届いた。
「昨日は弊社までお越しいただきありがとうございました。また、青葉町商店街の物件ですが、内野様の想いをお聞きし、隈からもお力になれれば是非、ご協力させて下さいとのことでした。」

あぁ・・やろう。
やるんだ。と思った。

そして、植田さんのいる岡山に向かって二礼二拍手一礼をした。w

ご縁ってホントありがたい。

OPENは2023年の秋の予定。
この物件をキッカケに商店街が活性化。
そして建築職人の価値を伝えていきたいと思う。

さあ、頑張ろう。

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