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【スポーツ留学】#3 卒業後の振り返り(学校編)①

この度無事コロンビア大学大学院(スポーツ経営学)を卒業することができましたので、自身の留学を「学校」「キャリア」「ネクストステージ」の三軸から書き留めておこうと思います。

会社を辞めて留学した経験を通じて、本当に様々な気付きや経験を得ることができましたので、少しでも熱いうちに言語化しておきたいと思い、ようやく重い腰を上げブログを書くことになりました。

振り返りがメインとなりますが、意外と私のブログを読んで頂いた方に出くわす機会があり、有り難くも参考になったと仰って頂いたこともあった為、「少数でも良いので、自分の経験が誰かの決断を後押し」することになれば良いなと思いブログにしましたので、少しでも参考になると幸いです。


さて、今回は学校編ということで、私が通ったコロンビア大学大学院(スポーツ経営学)について振り返りたいと思います。

留学に至った経緯、プログラム内容、在学中の評価などについては、以下の過去ブログをご参照ください。

学校編は以下構成となります。主に前回ブログからのアップデートとなりますが、実際に全て終えた中で、変わった部分と変わらない部分がありますので、その辺りを中心に説明したいと思います。

1.プログラム評価
2.印象に残った授業ベスト3
3.卒業後の進路
4.最後に


1.プログラム評価

前回ブログでは、以下の通り項目ごとにレビューをしていました。

(A) より深い産業理解が得られる
(B) 一線級のインサイトにアクセスできる
(C) スポーツビジネスに特化した高度な知識・スキルが身につく
(D) スポーツビジネスにおける実践的な経験が得られる
(E) 産業内のネットワークが構築できる
(F) スポーツビジネス人材として市場価値を高められる

今回も同じ項目ごとにレビューし、詳細も併せて説明していますが、面倒な方は読み飛ばして頂いても結構です。

結論のみを述べると、私が通ったコロンビア大学大学院(スポーツ経営学)のプログラム自体は、スポーツ産業の中に入っていく方においては非常に意義のある学びであった、と考えています。

後段で説明しますが、インターンや卒業後の仕事などを通じて、実際にスポーツ産業で働いてみるとよく分かったのですが、

スポーツ産業の特殊性、複雑性、裾野の広さなどに鑑みると、スポーツ産業の一般的な理解やネットワークは当初の予想を超えてアドバンテージと感じることが多かったことには驚きました。

スポーツ経営学を学んでいないと働けないという訳ではないですが、エンタメでありビジネスであり競技でもあるスポーツは、私のようにある程度一般的なビジネス経験のある人間からすると、少々特殊な産業だなと感じる部分があり、

またアメリカも日本もスポーツの世界は良くも悪くも結構狭く独特なコミュニティで、働く場所・職種によりけりですが、過去のキャリアの経験やネットワークをそのままフルで活用させることができる訳ではなく、スポーツ産業なりのアジャストが必要になると思いました。

従い、仮に私がスポーツ経営学の学びを経ずにスポーツ産業に丸腰で入っていたら、少なくとも自分が働く場所から見える比較的限定された世界での視野しか得られていなかった恐れがあり、また産業構造を学んだとしても相当な時間と労力が掛かっていただろうと思います。

つまり、スポーツ経営学を学ぶことは、スポーツ産業に入る上で必要なファンダメンタルズが得られる、そういったものなのではないかと思います。


さて、プログラムの詳細レビューですが、以下の通りとなりました。ご覧の通り満足度が高い結果になりました。後段の各項目ごとの説明は、お時間あればご覧ください。

(A) より深い産業理解が得られる ◯
前回ブログ時には、結構舐めていた項目なのですが、働き始めるとこの部分の重要さが身に沁みることになりました。

どこで働くか次第ではありますが、産業における「勘所」のある無しでは、仕事のスピードや幅が大きく異なることになります。

例えば、球団でスポンサーシップセールスといっても、ただ営業すれば良い訳ではなく、産業全体におけるスポンサーシップの位置付け、他のスポーツや他国の事例、スポーツスポンサーシップのトレンド、ブランド側の視点など、考えなくてはならないことは様々あります。

そこで勘所が無いと、①イチから調べる必要があるので時間が掛かる、②調べた内容の妥当性が分からない、③勘所を得るために相応の経験が必要になる、ということになり結果的にコストが掛かることになります。

「イギリスのサッカーのメディアだと◯◯だな」や「アメリカのホッケーのチケッティングだったら✗✗だな」のように、スポーツ産業について勘所があるだけで、仕事の解像度が上がり、スピードが早くなったり、より広く深い選択肢を思いつくことができる為、そういったことを深く体系的に学べたことは、働いてみて非常に助かったと感じた次第です。

これは一般的なスポーツ産業の俯瞰図ですが、皆さんはどこまで説明できますでしょうか?


(B) 一線級のインサイトにアクセスできる ◎

この点は前回から変更なく非常に有利であると考えています。

コロンビア大学がNYにある大学であるということ、この大学のプログラムが実践的な授業が多かったということ、私が外部講師の授業を意図的に取っていたということもありますが、紛れもなくアメリカのスポーツ産業において一線級で働いている方々の考えに触れられたことは、視座が高まり、今後の糧になったと思います。

前回のブログにて以下のようなチャートを作りましたが、やはり視座が高くなることは(y軸)、仕事において要求水準が高まることになり、今回の学びを通じてスポーツビジネスにおける自分の物差しが世界トップレベルにセットされたのは、これからスポーツ産業に踏み込んでいく中で良かったなと思います。

これは私の好きな「本を読むか読まないかで見える世界が異なる」風刺画なのですが、読書については一旦置いておいて、私が注目しているのは視野の高さの持ちようで、個人的な解釈ですが「視座は高ければ多面的な考えを持つことができ、低ければ一面的な考えしか持てない」と考えています。

要するに、視座を高くする(=本を積み上げる)ことは簡単ではない一方で、高い視座さえ持てば上下合わせて色んな世界を見ることができる、つまり視座が調整可能になるということです。

これは前職で学んだことなのですが、人が働く上で視座は非常に大切な要素であると思っていて、物理的にも心理的にも視座を高く持ち、物事を多面的・俯瞰的に見て、鳥の目・虫の目・魚の目で捉えることの重要性を痛感した経験をしました。

まさに信のような経験でした

スポーツ産業というユニークな産業に身を置く中で、どこから物事を見るか?は非常に大切な要素になると考えており、その点でアメリカのように産業として他の市場と比べて何歩も先を行く市場で活躍する方々と同じ目線感を持つということは、

まさにキングダムで信が王騎将軍の馬に乗せてもらったが如く、自分が将来的に見てみたい風景・価値観に先んじて触れておくということは、これからこの産業の中で戦い抜いていく上で非常に良いマインドセットを持つことができたと思います。

(C) スポーツビジネスに特化した高度な知識・スキルが身につく △→
これは(A)と同様に、実際に働き始めたことで重要性を再認識した項目です。

「スポーツビジネスに特化した」という点が重要で、先述の通りスポーツビジネスの文脈になった途端に特殊性を帯びてくるのが、この産業の面白い部分ですが、それに関わる知識・スキルを深堀りできたのは、改めて重要だったなと感じています。

例えば、スポーツ法律は、余り興味がなかった分野で、必修のため仕方なく受講していた程度なのですが、実際働き始めると、スポーツ法律で触れる過去のメジャーな判例、制度、法律などが頻出し、理解しておいてよかったと感じる部分が結構ありました。

野球であれば、アメリカ野球の独禁法適用除外や選手組合設立までに至る背景など、事例を通じて歴史的背景、構造理解、現在の問題点といった感じです。

普通に法律を勉強していても、スポーツのケースに触れることは多くないでしょうから、やはりスポーツの文脈で物事を徹底的に学ぶ意義を改めて認識しました。

ただ、大学院で学ぶ内容は差別化できる程か?と問われると、私はそこまでではないと思っており、全然書籍やChat GPTなどで調べたら済む話でもあるので、大学院はこういった内容を集中的に、多数、多岐に、体系的に学べる点が魅力的だと思います。


(D) スポーツビジネスにおける実践的な経験が得られる ◯/△→◯
私の場合は現地のスポーツコンサルティング会社やコロンビア大学スポーツ局でインターンすることができました。

ここでの実践的な経験についてはブログ一本分書けるくらいですが、プログラムで学んだ内容を働き始める前に実戦でトライ&エラーを繰り返せたことは非常に良かったです。

特にスポーツコンサルティング会社では、実に多くのクライアントとお仕事させて頂き、日々の業務から各団体のリアルや抱える問題点などに触れることができ、

また、自身の知識・スキルをぶつけることができたのは、今後スポーツ産業と働く身として何が通用して何が不足しているかなど、今後のキャリアの解像度を上げてくれた経験でした。

参考までに、私は半年のコンサルインターンで担当したクライアントは以下の通りです。プロジェクトによって付き合いの濃淡はありますが、浅くとも広く産業のリアルに触れたことで得られた経験は、働き始めると非常に有用であると感じる部分が多いです。

− NBAフェニックス・サンズ
− NBAミルウォーキー・バックス
− NFLフィラデルフィア・イーグルス
− MLSバンクーバー・ホワイトキャップス
− ボストンカレッジ
− インテル(IT)
− Tモバイル(携帯)
− ヴァイスター(地銀)

ただ、これは自身が能動的に動いた結果で得られたもので、プログラムに入れば得られるものではない点は補足しておく必要があります。

このインターンを得るだけでも、複数の教授から選考のかなり前段階から推薦してもらい、何度もインタビューを受けて…と、そこそこ大変なプロセスがありましたので、得られる経験は人の頑張り次第となります。


(E) 産業内のネットワークが構築できる 
◎→◎
これも前回ブログ時から変更はなく、動いた分だけネットワークは広がりますし、そのネットワークは非常に心強い武器となります。特にスポーツ産業は前述のように狭い世界なので、ある程度の規模のネットワークが築けると、結構広い範囲を網羅することが可能であると思います。

私もネットワークが爆発的に広いという訳ではないですが、学校・教授・インターン先・メンター・クラスメートなどを通じて、届く範囲は格段に広がったなと感じており、「現段階の私レベルで必要となる団体・個人」は、ある程度コネクトできる感覚を得ています。

やはり、こういったネットワークのお陰で、スポーツ産業におけるホットな一次情報に触れられることが大きいです。アメリカ・欧州の先進的な事例、興味深い取り組み、トレンドなどに対し「ちょっと聞きたいことあるから教えてくれない?」とメールやテキスト一本で済む速度たるや、これ程心強いツールはありません。

ちょうど入学当初にも同じようなことをツイートしていました。

ただ、気を付ける必要があるのは、ネットワークは使うものではありますが、一方通行にならないように注意しています。繋いでもらう、教えてもらうことは、先方にとってメリットがないと単なるタダ乗りになってしまい、信頼構築に影響を及ぼす可能性がある為、目に見えるメリットを提供する細心の注意を払うことを心掛けています。


(F) スポーツビジネス人材として市場価値を高められる ?→◯
前回ブログ時はまだ働いていなかったこともあり、大学院での学びがどう活きるかイメージできない状況だったので、曖昧な回答になっていましたが、

今働いてみて感じることは、スポーツ産業内においては人材の市場価値を高められるものであると思います。

理由は主に(A)〜(E)をご覧の通りなのですが、あらゆるエリアをスポーツに特化して集中的に勉強・経験する為、良い意味でキャリアを「スポーツビジネス色」に染めることができることに価値があると考えます。

私の場合、前職で船舶・自動車の分野を担当しましたが、いずれも産業のエキスパートだったかと言われると、正直微妙なところでした。一般的な日本企業にありがちな、働く産業は会社の配属によって決められ、働きながら学ぶものでしたので、通常では産業理解やネットワークを高めていくことは、それなりの時間・労力が掛かります。

その点、大学院において集中的に産業に入り込めたことは、働き始める前に良い準備となったので、やはりスポーツ産業に入っていく方にとっては価値のあるものになると思います。

ただ、スポーツ経営学のマスターを持っている=良い仕事に就ける、という訳ではなく、あくまで「スポーツへキャリアを進める上での説得性が増す」もしくは「スポーツ方面へキャリアを尖らすことができる」ということであることは強調したいと思います。

これはスポーツ経営学の良い面でも悪い面でもありますが、産業としての色は付きますが、職種としての色は付きません。スポーツビジネスといっても、マーケティング、ファイナンス、クリエイティブ、セールス、アナリストなど職種は様々ありますが、スポーツ経営学を学んでこれら専門性が付くかといえば私はノーだと考えます。

実際アメリカのスポーツリーグや球団を見ていても、スポーツ経営学の学位を持っている方以上に、MBA、弁護士、CPAなどといった専門性のあるキャリアの方をよく見かけます。

従い、スポーツ産業でキャリアを作っていく場合「 専門性(職種・専門分野) x ファンダメンタルズ(産業理解・ネットワーク)」は念頭に置いておく必要あると考えます。

ブルーロックからの引用ですが、Aが絶対的な武器=専門性、とすると、BはAが使えるシチュエーション=スポーツ産業で働く上でのファンダメンタルズだと思います。

つまり、スポーツビジネスを勉強するだけでなく、専門性を磨かないと単なるスポーツビジネスに精通した人材だけになってしまうので、自分にとって強みになる武器も意識したキャリア形成を考えていかないといけないということになります。


【スポーツ留学】#4 卒業後の振り返り(学校編)②へつづく


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